ロンドンオリンピックの直前。
地球に大きな危機が迫っていた事をご存じでしたか?実は太陽で超巨大な爆発が発生したのです。
それが太陽フレア。
フレアによって膨大なエネルギーが放出されます。
幸い地球とは反対の方向に発生したため事なきを得ましたがもし直撃していたら大惨事になっていました。
いつ起こるか分からないフレア。
そこで被害を食い止めるためその発生を事前に予測する技術の研究が始まっています。
一方でこの太陽フレアは私たちに被害を与えるだけではない事が分かってきました。
なんと地球の生命誕生に大きな影響を与えていたかもしれないというのです。
太古の昔から現在まで地球にさまざまな影響を与え続ける太陽フレア。
その驚きの姿に迫ります。
今日のテーマは太陽のフレアですけど先ほどロンドンオリンピックの直前にあんな事が起きていたなんて。
しかもこっち地球に来てたら大変だったんじゃないですかね。
全然気が付きませんでしたね。
はい。
この太陽フレアってものすごいエネルギーなんですよ。
どれぐらいのエネルギーなんですか?過去最大級といわれている太陽フレアを見てみましょうか。
これはですね2003年10月に発生したフレアを観測した画像なんですね。
ぱっと光ったのがこれがフレア。
そして今出たのが大量のガスなんですね。
うわっすごい出てますね。
え〜。
これ地球大丈夫だったんですか?大きな影響があったんですね。
はい。
これほどの爆発はまれなんですが太陽フレアは意外と頻繁に起きてるんですよ。
ちょっとこちらをご覧下さい。
これはですね過去10年間のデータを基に太陽フレアの等級と頻度を表にしたものなんですね。
フレアは爆発の大きさからABCMXという具合に等級になってるんですね。
で例えばそのXの隣の10というのはXの10倍という意味なんですよ。
先ほどの過去最大級のフレアっていうのはどのクラスだったんですか?これ結構ね上の方のX17なんですよ。
結構おっきいですね。
はい。
これそれぞれの等級でどんな影響が出るんですか?例えばですがMクラス以上ですと通信障害が出るんですね。
通信障害。
カーナビも駄目だしスマホのアプリも駄目になっちゃいますっていう話なんですよ。
かなり大変ですね。
でもそれがMクラス以上って事は年に10回以上は起きる可能性があるっていう事ですよね。
そうなんですね。
うわ〜。
この停電はここの何クラス以上で起きるでしょうか?え〜。
でもそんなCクラスとかって年に100回ですもん。
実は答えはねいいんですよ。
Cクラスで合ってるんですよ。
えっCクラスですか。
Cクラスでもまれに起きるらしいんですね停電が。
あ〜そうなんだ。
実際僕は現場にいた事があるんですよ。
え〜そうなんですか。
大規模な停電が起きて…9時間。
それは大きなニュースになったでしょうね。
それぐらいの大きな影響があるって事なんですね。
脅威ですよね。
脅威ですね。
私たちの生活に被害を及ぼす太陽フレアとは一体どんな現象なのか?アメリカにある太陽の観測施設でその様子を見せてもらいました。
これは紫外線で撮影した太陽です。
表面が一瞬光りました。
これが太陽の爆発フレアです。
フレアは一体どのようにして起こるのでしょうか?そのヒントは…太陽は地球と同様天体自体が磁石のようになっています。
しかしその磁力の流れを示す磁力線は地球のように規則正しく並んでいません。
その理由は太陽独自の自転にあります。
ガスでできている太陽は自転速度が緯度によって異なります。
赤道付近で25日なのに対し極付近では30日。
このため内部を南北に走る磁力線は引きのばされ次第に糸巻きのように巻きついていきます。
磁力線は磁力の強い部分が浮かび上がる性質があります。
この磁力線と太陽表面の接点にできるのが黒点です。
黒点からは複数の磁力線が出ています。
この磁力線が磁場の変化によって動き接触すると…。
爆発が起きるのです。
この時太陽で何が起きるのかフレアが起きたこの部分に注目。
何か気体のようなものが飛び出しました。
プラズマは電気を帯びた粒子の塊です。
このプラズマが地球に到達すると…。
高度80キロから1,000キロにある電離圏の磁場が乱され大きな電流が流れます。
これにより地表の磁場も乱されます。
送電線に大量の電流が流れ変電所が破壊されるのです。
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これは1989年アメリカ・ニュージャージー州にある変電所が破壊された時の写真です。
へえ〜。
この時X4.5クラスのフレアが発生。
変圧器に過剰な電流が流れショートしてしまったのです。
政府や企業に太陽フレアの対策をアドバイスしている…例えばニュージャージー州の10倍規模のフレアが起きた時にどの程度の被害が出るか独自に試算を行いました。
すると全米で20%の変電所が破損。
特に人口が密集する東部で大きな被害が出ます。
そして…フレアって本当に大きな大変な影響があるんですね。
ですよね。
しかもさっきの変電所の丸焦げのちょっと衝撃的でしたね。
何か全然こう規模が違うというか1か月電気が使えないってこれ大変な事ですよね。
想像つかないですよね。
ここからは専門家に伺いましょう。
長年太陽フレアを研究してきた柴田一成さんです。
フレアが起こるとプラズマが飛んできて停電が起きてしまうって事でしたけどもほかにも影響が出てしまうんですか?はい。
例えば石油のパイプラインがね腐食したりする事があるんですね。
腐食しちゃうんですか。
ええええ。
とにかく地上の電気を流すものに全部電気がね大電流が流れますんでねパイプラインに電流が流れるんですよ。
そうするとパイプラインを作ってるものがだんだん腐食したりするんですね。
え〜。
実はですね…いろんなものが飛んでくるんですよ。
ほかにもあるんですか?でそれによって被害も変わってくるって事なんですね。
代表的なものがこちら。
X線放射高エネルギー粒子線そしてコロナ質量放出。
この最後のコロナ質量放出というのがプラズマの事なんですね。
なるほど。
ほかの2つも気になるんですけどX線放射ってあのX線?皆さんご存じの健康診断でねレントゲン写真撮りますね。
その時のX線ですね。
8分。
速いですね。
でそうすると…実は飛行機というのは…飛行機で飛んでる最中だったら本当大変ですよね。
長い場合はね10時間とかそうするともう飛行機は…うわ〜大変ですね。
もう一つ高エネルギー粒子線っていうのはどんなものなんですか?速いものでは30分。
遅いものでは1日2日ぐらいかかる事もあります。
どんな影響が出るんですか?そういう怖いものなんですけども。
はやぶさがイトカワに行きましたね。
実はその大フレアの影響でですねその途中で太陽電池パネルがですね壊れかけた事があったんですね。
でこれ雷と似てますんで突然ね大量の電流が流れた時にそれを遮断するような雷対策と同じようなものが必要ですね。
それからやっぱり国レベルでね。
国レベル。
という訳でですね事前に察知するために太陽の監視が必要なんですね。
監視。
ちょっとこちらをご覧下さい。
これは国立の研究機関…人工衛星の画像をモニタリングして太陽の監視を行ってるんですね。
そのデータなどを基に専門家が会議を行って…これは太陽フレアの予測などですね。
で太陽が静穏な状態なのか活発な状態にあるのかなど…何かここまでできていたらもう何か安心なような気もするんですけども。
いやところがですね…ですから正確な予報とかねそういうのがまだできてなくてですね。
まだ課題があるんですね。
これまでと全く違った方法でフレアの発生を予測するシステムの開発が日本で進められています。
村主崇行さんは最新の観測衛星のデータを使った太陽フレアの予測システムを開発しました。
それがNASAの人工衛星SDO。
紫外線や可視光などさまざまな波長を観測できます。
このSDOの観測データの中で村主さんが注目したのが太陽の磁場の状態が分かる画像です。
実は黒点は磁力線の向きによってN極とS極に分かれます。
このSDOの画像は黒点のN極とS極の状態を色で見る事ができます。
白い部分はN極。
黒い部分はS極を示しています。
この黒点のN極とS極がどのように分布しているか。
実はこれがフレア発生予測の重要なポイントになるといいます。
黒点はN極とS極がはっきり分かれて発生するベータ型。
そして複雑に入り組んで発生するデルタ型があります。
この型の違いでフレアの発生頻度は大きく異なります。
波長の短い紫外線の画像で比べてみるとデルタ型はベータ型に比べ盛んに爆発を繰り返している事が分かります。
フレアは黒点がデルタ型の時数多く発生しているのです。
そこで活用したのがSDOの…25万枚の観測データをコンピューターに入力。
黒点がどんな状態の時にフレアが発生したかを学ばせます。
こうして現在の太陽の画像が送られてきた時どのような規模のフレアが発生するかコンピューターが予測できるシステムを作りました。
現在このシステムは24時間以内にフレアが発生するか予測をしていますが将来的にはいつ発生するかその正確な時間を予測したいと村主さんは考えています。
宇宙天気予報ですか。
でもこれでかなりいち早く知る事ができそうですよね。
ですよね。
宇宙天気予報コンピューターでやるんですね。
このシステムは結構期待できそうですね。
ええ。
まだ実験段階なので予報の精度がですね30%程度ぐらいなんですけどもまだまだ取り込んでないデータが大量にありますからね。
それをうまく活用すればすごいものができるんじゃないかと期待してます。
実は…活動時期。
これは太陽をX線で10年以上にわたって連続して撮影した映像なんですね。
今明るく光って見えるところが黒点です。
長年観測すると時間とともに黒点の数が変化するのが分かりますよね。
本当だ。
増えたり減ったり。
そしてこちらが黒点の数の変化を表したグラフ。
これ11年周期で黒点の数が変化してるんですね。
本当だ。
つまり活発な時期と停滞する時期を繰り返してるという事でちなみに今は停滞期なんですね。
ふ〜ん。
次はいつ活発になるんですか?はいそれは今の予想では…そっかもう10年後ぐらいには来てしまうんですね。
まあ何かそれまでにどうにか予測のシステムが上がる事を期待しつつ私たちも対策しなきゃいけないですね。
そうですね。
さてここまでは太陽フレアの脅威を見てきましたが…そんな事あるんですか?あるんですこちら。
太陽フレアが生命の誕生に影響したんではないかっていうんですね。
えっどういう事ですか。
NASAで太陽フレアの研究をしている…2016年5月に発表した一つの論文が大きな注目を集めました。
なんと地球生命誕生のカギになったのが若い太陽の活動にあったという全く新しい説でした。
およそ40億年前。
地球で初めての生命は海で誕生したと考えられています。
しかしそこには2つの大きな謎がありました。
40億年前の太陽は誕生初期だったので今と比べて70%ほどしかエネルギーを発していなかったと考えられています。
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このような条件では地球は0度以下。
いわば氷惑星のはずでした。
しかしこのころから水は氷ではなく液体で存在していました。
これは暗い太陽のパラドックスと呼ばれ大きな謎だったのです。
窒素は生物のDNAやたんぱく質を作るのに欠かせない元素です。
ところがこのころの地球には窒素は分子の状態でしか存在しなかった事が知られています。
実は窒素は分子の状態では結合力が強いためほかの元素と反応する事がありません。
このままだとたんぱく質などはできなかったはずです。
何によって窒素が原子まで分解され生命が誕生したのか。
大きな謎だったのです。
アイラペティアンさんはこの2つの謎の答えが誕生初期の太陽に見られたある活動だと考えました。
スーパーフレアとはX100クラス以上の超巨大なフレアの事です。
これは地球から60光年離れたりょうけん座の星で起きたスーパーフレアの画像です。
その規模はなんと…10万!これほど強力なエネルギーが何度も発生すれば窒素分子を原子に分解できるかもしれない。
アイラペティアンさんは地球でどんな事が起きるのかシミュレーションしました。
その結果です。
通常地球は磁場によって守られています。
しかしスーパーフレアが起きると巨大なプラズマの嵐が地球の磁場を圧縮。
赤い丸の部分に隙間を生み出しました。
フレアによる影響を受けやすくなったのです。
この時地球に新たなスーパーフレアが襲うと大気がどのように変化するかもシミュレーションしました。
その結果を表わした図です。
窒素分子が原子に分解する事が分かりました。
そして大気中の二酸化炭素やメタンなどと反応しさまざまな窒素化合物ができる事が分かりました。
これらの化合物からDNAやRNAそしてたんぱく質が作られ生命が生まれていったというのです。
更に出来上がった化合物の中でアイラペティアンさんが特に注目したものがあります。
亜酸化窒素とは温室効果ガスの一種です。
地球は太陽光によって温められると赤外線を出します。
亜酸化窒素はその赤外線を吸収し一部を地球に戻します。
この効果が亜酸化窒素は二酸化炭素に比べて300倍もあります。
こうして地球が温められる事で水が液体で存在したのだと考えています。
そっか太陽フレアが生命誕生の謎を解くカギかもしれないんですね。
アイラペティアンさんと私実は友達でしてねでメールでいつも「ついに論文受理されました」って来ましてね「コングラチュレーション!」って返してね。
まあそんな感じでねやり取りしてました。
で今年の秋ですねアメリカでスーパーフレア宇宙天気予報生命誕生とかそういう国際会議があるんですね。
世界中で注目されてるんですね。
ええええ。
でもどうしてあの初期の太陽がスーパーフレアを何度も起こしてるって分かったんでしょうかね。
それはこちらをご覧下さい。
12倍。
はあ〜。
えっでも黒点が大きくなるとどうしてスーパーフレアが起こるんですか?はい。
磁力線がたくさんありますからねそうするとエネルギーもたくさん蓄えられるんです。
このスーパーフレアって現在の太陽で起きる可能性もあるんですか?実はあるんですよ。
太陽は生まれてもう46億年もたってですね自転速度は今遅いんですね。
ですから若い太陽と違ってスーパーフレアは起きないというのが天文学の常識だったんですけど実は私たち太陽とそっくりの星を詳しく調べたんですね。
え〜。
しかし自転は太陽ぐらい遅い。
そういう事でこの分野というのは急に今発展しつつすごいワクワクした分野なんですね。
なるほど。
太陽フレアいかがでしたか。
いや〜最初太陽のフレアは本当に現代社会に大きな影響を与えるのでちょっと怖いかなって思ったんですけど生命の源でもあるっていうの感じるとやっぱり太陽の持つ力の巨大さだったり壮大さっていうのをすごい実感しましたね。
母なる太陽なんて言葉もありますがその母の顔は怖い時もあれば慈しみ深い時もあるという事で勉強になりましたね。
はい。
柴田さん今日はどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2017/02/26(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「太陽フレア 生命の脅威か?母なる恵みか?」[字]
太陽の爆発“フレア”。地球に直撃すると通信障害や停電など甚大な被害が発生する。一方、フレアこそが地球の生命誕生のカギという説も発表された。フレアの驚異に迫る!
詳細情報
番組内容
太陽の爆発現象“フレア”。もし巨大なフレアが発生し、爆風が地球を直撃すると、通信障害や大規模停電など、インフラに甚大な被害が発生。大混乱に陥ると予測されている。そんな中、フレアの発生を予測する技術が開発され、被害を回避する可能性が見えてきた。一方、NASAの研究者が、太陽フレアこそ地球に生命が誕生したカギだった、という新説を発表。脅威か、それとも恵みか。地球に影響を与える太陽フレアに迫る!
出演者
【ゲスト】京都大学教授…柴田一成,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】土田大