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字幕書き起こし 浦沢直樹の漫勉「清水玲子」 2017.03.02

(ペン先の音)
(ペン先の音)
(ペン先の音)
(笑い声)
(テーマ音楽)「漫勉」。
小さなペン先から壮大なドラマを生む漫画家の仕事場に迫るこの番組。
ついに…仕掛け人はこの人…数多くのヒット作を手がけてきた漫画家です。
デビューから34年。
ジャンルにこだわらず漫画の地平を切り開く作品を生もうとしてきました。
シーズン4最初の漫画家さんは少女漫画の新たな可能性を追求してきた方です。
30年以上第一線を走り続けてきました。
最大の魅力は絵の美しさ。
最小限に抑制された線で美しい人物や情景を描きます。
一方で作品のテーマは深遠です。
「愛」や「命」をテーマにしたSFやサスペンスで少女漫画界に新風を吹き込んできました。
時に残酷でグロテスクな描写を美しく描き読む人の心に迫ります。
今回その執筆の現場に3日間密着する事ができました。
そこで発見したのは線そしてデッサンに対するしつこいまでのこだわり。
そして「うまくなりたい」という強烈な執念でした。
1か月後。
撮影された映像を見ながら対談します。
あどうもお久しぶりです。
お久しぶりです。
今日はよろしくお願いします。
はいどうぞ。
うわ〜!なんかあれですね。
うわ〜!あほんとに?絵だけでなく仕事場も几帳面できれいなんですね。
美しい線で革新的な少女漫画を生み出してきた清水玲子さん。
その創作の秘密が明らかになります。
まずは美しい男性を描くコマです。
ネームを下に置き参考にしながら下描きします。
シャーペンじゃないんですね。
(笑い声)Hの濃さの鉛筆で下描きしていきます。
作品は…舞台は近未来の日本。

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  死んだ人間の脳をスキャンし記憶を映像化する技術が実現。
その技術を用いて犯罪捜査を行う捜査員を描くSFサスペンスです。
今描いているのは美貌と天才的な頭脳を持つ捜査員のリーダー主人公の薪です。
美男子が描かれました。
(笑い声)じゃないかと思いましたよ。
僕それ聞こうと思ったんですよ。
髪の毛に細い描き込みを入れていきます。
深いテーマを描く一方少女漫画の王道も追求してきた清水さん。
美しい人物を描く事に強いこだわりがあります。
繊細な線が積み重ねられ髪の毛が完成しました。
続いて目にペンを入れていきます。
そうですかね?清水さん口元にホワイトで細かく修正を入れます。
ミクロンって…本当に微妙な違いなんですね。
鼻にも修正を入れます。
すごく細かい修正!でも確かに違いますね。
最後に目にも微妙な調整を加えます。
下描き開始から30分。
美男子・薪のペン入れがようやく終了です。
美しく描かれた髪。
ミクロのレベルまで修正を重ねた顔のパーツ。
清水さんの美男子へのこだわりが詰まったコマが完成です。
続いてのページに取りかかります。
この漫画の主人公は薪ともう一人若い青木です。
薪に憧れる無鉄砲な青木。
青木を厳しく指導しながら一方でひそかに大切に思う薪。
2人の絆が描かれます。
これから描くのは薪が無茶をしようとする青木の服をめくるコマ。
少女漫画としても盛り上がるシーンですね!
(笑い声)萌えて頂ければありがたい。
あれ?清水さん紙をひっくり返しました。
裏側に描き始めました!裏から見る事でデッサンの狂いを確認しながら修正を入れていきます。
表に戻して裏面に入れた修正を確認。
表側に更に修正を入れます。
また裏にひっくり返しました。
こうして徐々にデッサンを直していきます。
清水さんは下描きの時点で正確なデッサンにとことんこだわります。
今度は表側を全部消してしまいました。
裏面を参考に描き直します。
30分かけてようやく下描きが終了です。
美しい絵にこだわり続けてきた清水玲子さん。
小さい頃からお姫様の絵を描くのが大好き。
その後少女漫画に夢中になります。
高校ではマンガ研究会を設立し肉筆の回覧誌を制作。
漫画家に憧れます。
高校卒業後就職しますが夢を諦められず雑誌のコンペに入選したのを機に退職。
勝負をかけます。
しかし簡単には漫画の仕事は増えません。
依頼がなかった時期も清水さんはひたすら画力を磨きます。
ビデオに録画した歌舞伎を一時停止してそれが解除されるまでの1〜2分を使って模写をしていました。
(笑い声)地道に身につけた画力はやがて花開き作品を次々と執筆。
その美しい絵に多くの読者が魅了されました。
漫画家となった清水さんがこだわったのは美しい線。
しかも描き込みすぎるのではなく培ったデッサン力を生かし選び抜いた限られた線で描く事でした。
時に残酷で重いテーマは美しく爽やかなタッチで描かれる事で少女漫画と融合します。
目に細かい描き込みを入れて下描き開始から50分ペン入れがようやく終了です。
徹底的に直す事で描かれた正確なデッサン。
シャツの質感や重み。
美しい男性2人の姿が研ぎ澄まされた最小限の線によって描かれました。
続いてはペンを使わず鉛筆だけで仕上げるコマ。
かかりますよ逆にね。
鉛筆だと全ての線が本番の線になるから時間がかかるんですね。
死んだ人間の脳をスキャンし脳内から犯罪を暴く映像を取り出すこの作品の世界。
脳の映像はこの鉛筆の技法を使います。
柔らかなタッチに仕上げる事で記憶の映像である事を表現します。
清水さんが描いてきた重厚なテーマ。
その根元には青年漫画の影響があります。
分かる。
青年誌の影響を受け「愛」や「命」をテーマに深い人間心理を描くSFやサスペンスを執筆。
独自の漫画世界を作り上げてきました。
鉛筆で塗った部分を指でこすっていますね。
執筆する事2時間。
鉛筆だけで仕上げたコマがようやく完成しました。
絵にはパソコンでドット処理を施しました。
サスペンスを彩る脳内の映像という表現。
それを鉛筆だけで描く技法で見事に描きました。

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  続いてはこの回のクライマックスの作画です。
捜査のさなか独断で突っ走ってしまった青木に薪が激しく怒り手を上げるシーンです。
青木を大切に思う故の薪の怒り。
感情が激しくぶつかります。
清水さんこのシーンも原稿を裏側にして丁寧に描き込みます。
表に戻してデッサンの修正です。
怒りで震える薪の手のコマ。
薪の怒りを手だけで表現しようと何度も描き直します。
握りこぶしだけで表裏合わせて4回下描きを重ねました。
握りこぶしにペンが入りました。
続いて平手打ちを決めるアクションのコマ。
更に平手打ちをした薪の怒りの顔。
怒りとその奥の愛情を表現する繊細な表情です。
ハッ!
(笑い声)漫画って本当に繊細な作業ですね。
細かい修正を続けます。
あれ?あれ?ってなっちゃった。
本当にミクロの世界で戦っているんですね。
納得のいく表情が生まれるまで修正を重ねます。
デビューから34年。
美しい絵を追求してきました。
依頼がなかった時期必死に描いて腕を磨いていた。
その頃の思いは今も変わらず清水さんを突き動かします。
ディテールをひたすら描き込みます。
そうなんですよね。
そうなんですよ。
本当に細かい表情の修正が終了です。
下描き開始から3時間。
クライマックスのページがようやく出来上がりました。
何度も下描きして生み出す正確なデッサン。
無駄のない美しい線。
そして人物の表情へのこだわり。
「うまくなりたい」という純粋な思いの詰まったページがまた生まれました。

(ペン先の音)2017/03/02(木) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
浦沢直樹の漫勉「清水玲子」[字]

白い紙に小さなペン先で壮大なドラマを生む漫画家たち。その創作の秘密に「浦沢直樹」が迫る。シーズン4の第1回は、映画化で話題のヒット作「秘密」の「清水玲子」が登場

詳細情報
番組内容
シーズン4の第1回は、昨年、映画化され大きな話題となったヒット作「秘密」の漫画家「清水玲子」が登場。1983年「三叉路物語」でデビュー。99年から連載がスタートした「秘密」で第15回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞するなど、いま熱い注目を集めている。少女漫画でありながら、最先端の科学技術を盛り込んだSF世界を、繊細なタッチで描き、熱狂的なファンを獲得している。その創作の現場に密着した。
出演者
【出演】浦沢直樹,清水玲子,【語り】木南晴夏