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書き起こし サイエンスZERO「ついに解明!“ブラックホール成長の謎”」 2016.12.04

強力な重力を持ち周りにあるものをのみ込む天体…その姿を直接見る事はできず多くの謎を秘めています。
中でも最大の謎それがブラックホールがどうやって成長するのかです。
実はブラックホールは誕生する時太陽の質量の十数倍にしかならない事が理論上分かっています。
しかし宇宙にはその何百万倍もの質量を持つものが存在しているのです。
この超巨大なブラックホールは一体どのようにして出来たのか。
謎を解く鍵はなんと今年世界中を驚かせたあの世紀の大発見重力波の観測にあったんです!この観測でブラックホールが合体して成長するプロセスがついに明らかになりました。
更にガスを吸い込むメカニズムにもブラックホールを成長させる秘密が隠されている事が分かってきました。
驚きの姿で成長を続けるブラックホールその最新研究に迫ります!今日のテーマはブラックホールという事で後ろにありますよ。
何かちょっとこう後ろに吸い込まれそうな…。
のみ込まれちゃうんじゃないかってドキドキしながら。
ブラックホールっていうとどういうイメージですか?「サイエンスZERO」でもやっぱり何度も取り上げてますけど取り上げる度にまだ謎が多いっていう事を聞くとやっぱりワクワクしますよね。
ですよね。
研究者たちの間でも長年謎の天体といわれてきていまだに謎が多いんですよ。
という事で今日はですねそのブラックホールがどんなものでどこまで分かってきたのかまずはこちらをご覧下さい。
ブラックホール研究の始まりはおよそ100年前天才物理学者アインシュタインにまで遡ります。
一般相対性理論の中で予言したのが質量を持つ物体があるとその重力によって空間がゆがむという事です。
その後ドイツの物理学者カール・シュヴァルツシルトは重力で空間がどこまでゆがむのかを計算しました。
すると例えばある天体を1点に限りなく収縮させると空間は無限にゆがみ光さえも脱出できない事が分かったのです。
これが理論が導き出した天体ブラックホールです。
では一体どんな時に天体は限りなく1点に収縮するのでしょうか。
研究で明らかになったのは太陽の30倍以上の質量を持つ重い恒星が一生を終える時の事です。
恒星の中では水素などの軽い元素が次々に反応して重い元素になり最後には鉄になります。
いわゆる…この核融合によって生じる膨張しようとする力と重力によって収縮しようとする力とが釣り合って恒星はその形を保っています。
ところが星がその一生の終わりを迎え核融合の材料がなくなると膨張する力がなくなるため星は急激な収縮を始めます。
するとその反動で星は超新星爆発を起こし表面が吹き飛ばされます。
そのあとに残るのが限りなく小さく収縮した天体ブラックホールなのです。
そうでした。
ブラックホールって小さいけど質量がすごい大きいっていう不思議な天体なんですよね。
ですよね。
これ実は最初のうちですねアインシュタインもその存在を否定していたんですよ。
そして科学者たちが大論争を繰り広げていたんですね。
そして今ではですね…え〜!すごいですねそれ。
って事は私たちの天の川銀河にもその超巨大ブラックホールがあるんですか?あるんですね。
それがこちらです。
こんな本当に中心にあるんですね。
でこれは…400万倍?そんなにですか?実は…えっどういう事ですか?問題はその重さなんですよ。
重さ。
ちょっとこちらをご覧下さい。
VTRでは太陽の質量の30倍以上の恒星が超新星爆発を起こすとブラックホールになるんでしたよね。
はい。
でもその出来たブラックホールはせいぜい重さが太陽の十数倍です。
一方ですね銀河の中心にある超巨大ブラックホールはその質量が太陽の100万倍以上。
確かに。
かなり大きいですよね。
比喩的に考えてみましょうか。
ちょっとこれご覧下さい。
数グラムの金魚が何トンもあるジンベエザメにまで成長したっていう事なんですよ。
ええ…。
いやこの成長はちょっと信じられないですね。
ただこれでもですねこれは天の川銀河の場合なんですね。
おお〜。
え〜!そんなですか?はい。
いやどうやって成長するのか気になりますね。
ですよね。
実は今年ですねどうやって超巨大なブラックホールが出来たのかその謎を解くための発表があったんですよ。
おっ。
今年2月アメリカの研究チームが世界を驚かせる観測結果を発表しました。
そう。
重力波です!質量の大きな天体が動くとその重力で空間はゆがみます。
そのゆがみが波のように伝わる現象これが重力波です。
存在が予言されて100年間観測で確かめる事ができずアインシュタイン最後の宿題と呼ばれていました。
去年9月この重力波を初めて観測したのがアメリカの重力波望遠鏡LIGOです。
ルイジアナ州とワシントン州にある2つの装置で重力波の波形が捉えられたのです。
この観測結果を喜んでいたのは重力波の研究者たちだけではありません。
ブラックホールの成長について研究している…ブラックホールは小さなものが衝突合体を繰り返し大きく成長していくという理論が考えられていましたが誰も確認した事がありませんでした。
そこで注目されたのが重力波です。
実は重力波を観測できる天文現象は超新星爆発中性子星の合体ブラックホールの合体の3つが考えられています。
そして今回観測された波形はブラックホール同士の合体を示すものだったのです。
太陽質量の36倍と29倍のブラックホール同士が合体し62倍のブラックホールが誕生。
重力波を放出した事が分かったのです。
更に去年12月には2度目の観測に成功します。
今度は太陽質量の14倍と8倍のブラックホールが衝突21倍のブラックホールに成長した時の重力波でした。
ブラックホール同士が合体する事で成長する。
そのシナリオが重力波の観測によって証明されたのです。
いやこの重力波の観測はかなりインパクトありましたけどブラックホールの謎を解くためにも重要な観測だったんですね。
ですよね。
これノーベル賞間違いなし世紀の大発見なんですよね。
さあそれではここからは専門家と一緒に見ていきましょう。
VTRに登場したブラックホールの研究者岡朋治さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
この重力波が観測されてどう思いましたか?最初は信じてませんでしたよね。
あっ本当ですか?アハハ。
まさか。
そう。
まさかというか自分の目の黒いうちに検出されるなんて思ってなかったんですけども2発目が出てから「ああ本当だったんだ」と思うようになりましたね。
でもやっぱりブラックホールの合体を説明するにはこの観測っていうのは欠かせないものだったんですね。
非常に重要でしたね。
ブラックホールの合体というのは必ず起こるものだとは思っていたんですけどもやっぱり直接見えるという事は非常に重要ですね。
でもこれ3か月の間に2回検出されたっていう事は結構宇宙ではブラックホールの合体っていうのは頻繁に起きているんですか?そうですね。
非常に意外だったんですけれども中性子星の合体が最初に検出されるものだとみんな思っていたんですよ。
ただし今回見つかったのはまず最初にブラックホール同士の合体。
2回目もそうであると。
これ統計的にまだ何とも言えないところがあるんですけれどもやっぱり…質量?はい。
今回ですね太陽の36倍と29倍のブラックホールが合体して62倍のブラックホールが出来たんですね。
はい。
どういう事ですか?超新星爆発で誕生したブラックホールというのは太陽の数倍から十数倍のものだと考えられています。
これは恒星質量ブラックホールといって今のところ数十個ほど銀河系内で見つかっています。
一方銀河の中心で発見されるブラックホールは100万太陽質量以上のものです。
この間が空いていた訳ですね。
そうですね。
空いてます。
この間にあるものは中質量ブラックホールと呼ばれて存在が確実には確認されていません。
今回見つかったのは62倍のブラックホールが出来たという事なんですね。
これは…本当に空白で謎だった部分がちょっと見えてっていう事はかなり大きな意味があったんですね。
ですよね。
実はですねこのブラックホールの成長の謎を解く鍵はこれだけじゃないんですよ。
岡さんが天の川銀河の中心の超巨大ブラックホールを観測しようとしていて驚きの発見があったんです。
天の川銀河の中心にあるブラックホールいて座Aを調べていた岡さん。
注目したのは宇宙空間を漂うガスです。
ガスの塊からは電波が出ています。
この電波を調べる事でガスがどのように動いているかが分かるのです。
岡さんは長野県にある野辺山電波望遠鏡を使って天の川銀河の中心付近のガスを調べました。
その結果がこちら。
白く見えているのはガスの動きが活発になり温度が高くなっている場所です。
ここが天の川銀河の中心にあるブラックホールいて座A。
岡さんが注目したのはそこから僅か200光年の距離にあるこのガスの塊です。
このガスを詳しく調べたところ不思議な動きをしている事が分かりました。
横軸は銀河中心からの距離。
縦軸はそこにあるガスがどんな速度で動いているかを示しています。
分析の結果このガスは強く振り回されている事が分かりました。
ガスの動きから強い重力源の存在が浮かび上がったのです。
岡さんはそこにブラックホールがあると考えてシミュレーションを行いました。
その結果です。

 

 

 

 


左下の点の位置にブラックホールがあると仮定します。
そこにガスの塊を近づけると重力によって振り回されました。
その様子が観測結果と一致したのです。
計算の結果ガスを振り回していたのはなんと太陽質量の10万倍というブラックホールでした。
天の川銀河の中心付近で中質量のブラックホールの存在が明らかになったのです。
あの天の川銀河の中心付近にああいうブラックホールがあったんですね。
あれ見つけた時どうでしたか?いや最初はこんな事を言っていいものだろうかと不安になりましたけどもその結果をですね国際会議で発表する機会がありましてもちろんいろんな反対もあったんですけどもやはりかなりの反響を頂きましてそれで論文を発表した次第なんですけどもね。
実は今…あと銀河系の円盤部にも1つ2つ候補天体見つけておりますのでそれも発表していきたいと思っています。
それはどれくらいの重さなんですか?やっぱり…1万倍以上。
1万倍以上ですね。
(2人)はあ〜。
このブラックホールっていうのはいずれ中心のブラックホールと合体するんですか?はい。
そう考えています。
へえ〜。
今回の観測でブラックホールの新たな事実が判明したんですね。
それは分布なんですよ。
分布?はい。
まずはですねこれまで明らかになっている天の川銀河内のブラックホールの地図をご覧下さい。
太陽系の部分が黄色で表されていますね。
ああ中心だけじゃなくて割と外側にもあるんですね。
ちょこちょこ。
そして今回の発見がこちらです。
あっすごい。
でこの研究を基に推測するとですね本当の天の川銀河内のブラックホールの分布はこうなります。
わあすごい増えた。
ブラックホールこんなにあるんですか。
え〜すごい。
満遍なくある感じですね。
しかも…へえ〜。
それにしても量がかなり多いですね。
そうですね。
現在…へえ〜。
そんなにたくさんあるんですか。
はい。
太陽の30倍以上の質量を持った星は必ずブラックホールを作る訳ですね。
そして銀河系というのは100億年程度の年齢があります。
その間に出来たブラックホールが全部残ってる訳です。
だけどそんなにたくさんあるのにどうして今まで見つかってなかったんですかね。
それはですねブラックホールを見つけるのがすごく大変なんですよ。
実はこれまで見つかっているブラックホールはほとんどがX線による観測で見つかったもんなんですね。
でブラックホール自体は光を発しないんですがすぐ近くに恒星があるとそこからガスを吸い込みます。
このガスは吸い込まれる直前摩擦によって数千万度まで加熱されるんですね。
そうするとエネルギーの高い光であるX線を放出します。
でこのX線を見る事でブラックホールを見つけていた訳なんですよ。
ああなるほど。
ところがこれはとっても特殊な例なんですね。
ほとんどのブラックホールは…周りには吸い込むガスがないんですね。
という事でX線を放出する事もなく見つける事もできないと。
え〜。
そっか。
これはかなり見つけるの大変ですね。
ですよね。
うん。
でもVTR見てたらガスがないから見つけるのが大変って言ってたけど岡さんもガスを使って今回見つけたという事ですけれどどうやって見つけたんですか?という事は…そうですね。
なので…それによって間接的にブラックホールの存在を確認したという事です。
今回この電波を使ってブラックホールが発見されたという事はブラックホールを見つける新たな方法が分かったという事ですよね。
そういう事なんですね。
この方法っていうのはずっと考えてらっしゃってたんですか。
私大学院生時代からずっと20年以上やっているんですけどもその中にある変なものというのを僕は20年間ずっと追い求めていたんですよ。
へえ〜。
観測を進める事でそこにブラックホールがあるのではないかという結論に至ったのがつい最近の事です。
うわ〜すごい。
でもどうしてここまで続けてこられたんですか?
(笑い声)絶対何か見つかる分かるという何か確信があったんですか?いや何か変なものがあると気になりますよね。
あっまあ気になる。
20年間ムズムズしてただけです。
ハハハハハ。
へえ〜。
さてここまではブラックホールが合体によって成長するという話を見てきたんですが実はですねブラックホールの成長にはもう一つのメカニズムが考えられているんですね。
それはガスを吸い込む事なんですよ。
えっガスを吸い込むって当たり前じゃないんですか?実はそこにも謎があったんですよ。
えっ?常にガスを吸い込んでいると思われがちなブラックホールですが実はそうではありません。
ブラックホールの周囲を回るガスには遠心力が働いています。
そのためガスはそう簡単には内側に落ちていきません。
ブラックホールがガスを吸い込むためにはガスを内側に向かわせる何らかの仕組みが必要になるのです。
銀河中心のブラックホールが成長するメカニズムを研究している…注目したのは…銀河中心のブラックホールの周りには星の材料となるガスが大量に集まっているためたくさんの星が一気に誕生し成長していきます。
この環境で誕生した星たちは高い温度で激しく燃えるのですぐに材料を燃やし尽くし超新星爆発を起こして最期を迎えます。
この爆発の衝撃がブラックホールにガスを送っているのではないかと考えたのです。
そこで泉さんは超新星爆発によってガスがどれだけブラックホールに吸い込まれていくか計算をしました。
更にチリにある電波望遠鏡アルマを使いブラックホールが実際にどれだけガスを吸い込んでいるのか調べました。
その結果計算の値と観測結果がピタリと一致する事が分かったのです。
研究で見えてきたブラックホール成長のもう一つのシナリオです。
銀河の中心では星が一気に誕生し超新星爆発が起こります。
その衝撃でガスがブラックホールに吸い込まれていく。
そんなダイナミックな現象がブラックホールを成長させているというのです。
いや〜ものすごい事が起きてたんですね。
ああやってガスを吸い込んだ事でああやって成長していってたんですね。
泉さんの研究によるとですね…あれ?思ったより少ないんですけど。
あっただそれもですね…そうか。
そうなりますよね。
でもこの今まで見てきた合体とこうやってガスを吸い込んでいくっていうのは両方同時に起きている事なんですか?そうですね。
観測結果は両方とも起きているという事を支持するものですね。
ただし…どちらが有力かっていうのは何となく予想されているんですか?そこはまだ決着が着かないところなんですよ。
銀河の種類によって合体とガスを吸い込むっていうのでこう差があったりしますか?輝いている?はい。
泉さんの研究対象はそういう対象なんですよね。
ただそういう銀河核というのは非常に少ない。
1割以下です。
なので輝いていない銀河の中心核ガスを吸収していない銀河の中心核の成長プロセスっていうのはやはり合体ではないかという気はしてるんですけどね。
銀河の種類によって合体かガスの吸い込みかという可能性もある訳ですね。
そうですね。
あと時期によって違うというのがあります。
吸収してる時期吸収してない時期それは当然あるべきで…へえ〜。
その明るい時期にはガスを吸い込んでいたかもしれないけど暗くなってからは合体が中心になった可能性もある訳ですね。
まあどちらも多分起きたり起きなかったりしてる訳ですよ。
それは条件にもよるだろうし時期にもよるだろうしそれを定量的に研究していく事がここからの課題だと思います。
ブラックホールの成長の謎が解けると一体どういう事が分かってくるんですか?そうですね。
銀河中心核の巨大なブラックホールというのは今やほとんどの銀河にあると考えられていますね。
なので銀河の主要な構成要素なんですよ。
へえ〜。
ブラックホールがあったから今のような宇宙が出来上がっているって事なんですか?まあそうとも言えますね。
へえ〜。
僕は個人的にですねブラックホール大好きなんですけどもその銀河の中心にある超巨大ブラックホールこれの出来方がね分かってきたって何かすごいですよね。
本当ですよね。
謎が多いブラックホールだけどちょっとずつもう確実に分かってきた事が増えてきてもうワクワクしますよね。
岡さん今日はどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございます。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2016/12/04(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「ついに解明!“ブラックホール成長の謎”」[字]

多くの謎に包まれている天体「ブラックホール」。最近、ブラックホールがどのように巨大に成長するのかが解明されつつある。カギは重力波の観測だった。最新研究に迫る!

詳細情報
番組内容
強力な重力で光さえ飲み込んでしまう天体「ブラックホール」。直接観測することができないため、今も多くの謎に包まれている。その1つが「ブラックホールの成長」だ。銀河の中心には、太陽質量の数千万倍の超巨大ブラックホールが存在するが、誕生したばかりのブラックホールは10数倍程度。どのようにして巨大に成長するのか、謎が明らかになりつつある。カギは「重力波」の観測。ブラックホールの最新研究に迫る!
出演者
【ゲスト】慶應義塾大学理工学部物理学科教授…岡朋治,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】稲垣秀人