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書き起こし 日本の話芸 金原亭馬生 落語「茶金」 2017.01.22

落語

(テーマ音楽)
(出囃子)
(出囃子)
(拍手)ご来場御礼を申し上げます。
商売柄一年365日いろんな所でおしゃべりを申し上げております。
まあそれなりにどこでも一生懸命やらして頂きますがその中で一番力の入るのが東京落語会でございまして…。
命懸けでやろうとこういう事でございますが我々素人に分からないのが書画骨とう美術工芸品。
刀剣の類もそうですね。
奥が深うございますよ。
有名なのが正宗の名刀。
よく斬れるそうですな。
正宗をサッと抜いて相手に斬りつける!向こうの体にこの刃物がちょっと触っただけでスパッと斬れちゃう。
もう力も技もいらないんですね。

 

 

 

 


また焼き物。
これも難しゅうございますね。
随分前でございますが日本橋のさるデパートでもって益子焼の人間国宝の作品展そういうのがございましたですな。
個展でございますね。
勉強のために楽友と2人で行きました。
「がくゆう」ったって学校の友達じゃない。
楽屋の友達ですからね。
ひょいと見るってぇとこのぐらいの大きなつぼが200万で隣にちっちゃなつぼが500万という。
「おかしいねぇ。
ご覧なさいよこれ。
ええ?大きなの200万でね隣のちっぽけなのが500万ってのはどういうの?」。
「お前は目が利かねえなおい。
おんなじ人が作ったってねぇ出来不出来ってぇのがあるんだよ。
ええ。
その時の調子だよ。
窯の調子ってぇんだよ。
ほら。
これねぇ大きいだけでも200万だよ。
隣のねちっちゃいの。
ええ?肩の線が品があるじゃねえかよ。
なんとも言えないよこの光沢もさぁ。
この違いね分かんないってぇとおめえボンクラと言われるよ」てぇところにデパートの店員さんすっ飛んできて「あっすいません!値札を逆に置きました」。
ですからまあ素人にはなかなか難しい事でございましょう。
江戸といった時代に京都の木屋町に茶屋金兵衛さんってぇ人。
この人はもうその時分茶道具の鑑定では日本一でございますな。
これ詰めて茶金さん茶金さんといわれておりましてまあ方々の茶会に出ようあるいは目利きを頼まれようという訳で。
店は番頭任せで暇さえあれば神社仏閣をお参りしようという。
この人はもう何しろ暇に任せてフラフラ京都の町を歩くのが好きなんですね。
で古道具屋その前にピッと足が止まって店っ先出てる瀬戸物をひょいとこう見て…こう置いてピュッと行っちゃう。
そうするってぇとその店のおやじが奥から見てんですね。
「おや?あれは茶金やで。
茶金が手にしたもんや」ってぇとピュッと行っちゃうってぇと店っ先行って今まで茶金さんが手にしたものを隠しちゃうんですね。
でいい客が来るってぇと「これな茶金はんが触ったもんやで」。
「10両で買うたる!」ってんで…。
茶金が手にしただけで10両の値打ちが出ようという…。
でひとたびこうひっくり返して糸底を見たりこう天日に透かしたり…。
「おや?はてな?」。
…とこう首を横に曲げると百両の値打ちが出ようという。
大変な鑑定家があったもんで。
今日はおなじみ…もう観音様といえば清水でございましょう。
観音様をお参りして振り返るってぇとこれ舞台造りになっておりますな。
で京都の景色を見てこっちへず〜っと山沿いに下へ下りてくる道がございます。
その途中に音羽の滝ってぇのがある。
まあ滝ってぇから那智の滝だとか華厳の滝みたいな勇壮な滝を想像するお客様がいるかもしれませんが何の事はない。
壊れた水道の出しっ放しみたいなもんでね。
3本チョロチョロチョロチョロッと流れている。
これは山から出てまいります清水でございましょう。
それでまあ「清水」と書いて「きよみず」と読ませる訳でございましょうけれども。
その音羽の滝の脇に掛け茶屋がございまして昔のこってすからよしずっ張り。
緋毛氈の掛かっている縁台が表に2つ3つ出ていようという。
そこで茶金さん…向こうはお茶の事を「ぶぶ」ってぇんですな。
ぶぶをこう飲んでいる…。
「おや?はてな?」。
…とこう首を曲げた。
でお茶をこぼして懐紙を出しましてよ〜く拭いて糸底をこう透かして見たりいろんな事をしている。
それで土瓶からまた茶をこうついで手にする。
また…。
「はてな?」ってんで。
今度はまた茶をこぼしますな。
それでよ〜くよ〜くひっくり返して見たりなんかして。
「はてな?」ってんで。
茶代を置いてつ〜っと行っちゃう。
この様子をこっちから見ておりますのが毎度落語に出てくる八つぁんってぇ人でこの人は江戸を食い詰めちゃって今京都へ来て油屋になっている。
昔のこってすから天秤棒でございますね。
前に大きな油のつぼ後ろに大きな油のつぼという訳でまあ量り売りでございますね。
升でもってこう量っといてほいでじょうごってぇのにこう空けますな。
そうすると向こうの器にどんどん入っていこうという訳で。
その間粘着力が強うございますんですっかり落ちるまで無駄っ話をする訳ですね。
でこの無駄っ話をする油屋さんはいい油屋さん親切な油屋さんですな。
で「油を売る」ってぇのはこっから始まってるという。
中に疑ってる方がいるかもしれませんけどこれ本当の話なんでございますね。
その油屋になっている…。
「おや?何だよおい。
木屋町の茶金じゃねえかよ。
ヘヘ〜ッこんなとこで茶を飲むんだね〜。
え?しげしげ見てるね。
うん?おや!『はてな?』ってんで首を一つ横に曲げやがったよ。
へえ〜こういう所に掘り出し物があるんだね。
おっ…茶こぼしちゃってえ?ひっくり返してよく見てやんの。
あっまたやったよおい!じゃ2百だよあれ。
驚いたねおい。
あ?あれ?うん。
また?3百!へえ〜。
あ?何だい?茶代置いて行っちゃったねおい。
ヘヘッ。
ここのおやじ知らねえな。
うめえ事言ってねヘヘッ。
ふんだくっちゃおう。
おやじさ〜ん!今日はいい天気だね〜。
いや全くだよ。
こっちは出商売だからよ降られるってぇとどうする事もできねえんだよ。
フフッ。
はなね京都へ来た時にはなんてまあ抹香臭え陰気臭えねうん嫌なとこだと思ったけどもねえ住んでみるってぇといいなあ!ああいいね京都は」。
「そりゃそうやで王城の地やさかいなぁ」。
「近頃ね友達が出来たんだよ。
うちへ遊びに来るんだ。
茶一杯出せねえってぇのはねうちに茶碗がねえんだようん。
表出た時にね買おうと思うんだけどもよええ天秤棒をね肩から下ろして買い物をするってぇのはねもってぇねえような気になっちゃってつい買いそびれちゃってんだよ。
おやじさんとこよ商売物だ。
どっさりあるんだよええ。
2つ3つ分けてもらいてぇんだけどどうだい?」。
「構いまへん。
どれでも持っていき」。
「あっそう。
じゃあね『後の喧嘩は先』って言うからよさあここへ置くよ。
いや多かろうが取っとけよ。
いいんだよ構わねえんだよ。
茶代含めてな2つでいいやじゃあな。
今俺の使ったねこの茶碗とそれからね今帰ったこの客の使ったこの茶碗」。
「あ〜あんさんそれはあかん」。
「いやいやこれで…」。
「あ〜それはあかんちゅうのや。
今なまだ下ろしてないのがあるさかいそれ持ってくるさかい」。
「いいんだよわざわざ。
さらのを出す事ねえんだよ。
使い古しでいいんだよ。
染みが付いてる方が味があるんだよ。
これで」。
「それはあかんちゅうのや。
今ここでぶぶ飲んでた方あんさん知らんのんか?木屋町の茶金はんやで。
今見てたら『はてな』と三度横に曲げた。
そりゃ3百両の品やで」。
「何んだおやじさん知ってたのかよおい!人が悪いなおい。
じゃあこうしよう。
ねえ。
ありったけでね俺は買っていくからねえ。
いやそうしてくれよ。
頼むよ。
本当言うってぇとね江戸にねおふくろ一人残しちゃってんだよ。
これからね江戸へ帰ってよ親孝行しなきゃしゃあねえんだろうよねえ。
だからさ儲けさしてくれよ。
後生だからよねえたた…頼む。
だから親孝行に免じてよ。
じゃあこうしよう!ありったけだよ。
さあここに5両あるんだよ。
豪気なもんだろ。
5両なあ。
それからねこの油の荷だよ。
ええ仕入れたばっかりだよ。
ええっうん道具ひっくるめて5両だよ。
5両と5両で10両なら文句ねえだろ?」。
「3百両の品10両じゃごついで」。
「何でえ駄目かよ?おい。
どうしても?分かった。
儲けねえよ。
そのかわりなおめえにも儲けさせねえ!今なこの茶碗を向こうの岩んとこ持ってって嫌ってぇほどたたき割る!」。
「あかんちゅうのや。
やりかねんこの人。
そない事されたら元も子もない。
ああじゃあ10両で売りまひょ」。
「そうかい!そうしてくれるかい。
ありがとう。
おっじゃあね!」。
…ってんで5両懐から出したお金と油の荷5両で10両。
この茶碗を懐へ入れるってぇとプイッといなくなっちゃった。
明くる日どこで都合致しましたか縞の着物に小倉の帯を締めて前掛けごしらい。
腰に矢立て差してどっから見ても大きなご商店の手代というなりでございますな。
木屋町の茶金さんの店の前へ立った。
これ間口が四軒半でございますね。
で細かい格子がはまっておりましてで上に丈の短いのれんが掛かっている。
そこに白く「茶金」と染め抜いてございまして。
格子に手をかけるってぇとカラカラカラッと開く。
入るってぇと黒御影のたたきでございまして。
でこっち側につくばいがあってチョロチョロチョロチョロ水が流れている。
上がりがまちはってぇと松の一枚板でございますな。
昔は履物を脱いで畳上がって商談をしたんでございましょう。
正面の棚は漆で黒く塗り上げてございましてそこにさも高そうな茶道具がほんの少し置いてある。
これ高級店ってぇとみんなそうですね。
品物の数が少ない。
お蕎麦もそうですね。
名のある蕎麦屋へ行くってぇと高くってほんの少ししかない。
これ3回やると無くなっちゃう。
これ場末の蕎麦屋さんへ行くってぇと安くって食べても食べても減らない。
伸びる量が多いという訳でしょう。
ですからこの値段と品物の量は反比例しようという訳で。
「おいでやす」。
「おいでやす」。
「おいでやす」。
「おいでやす」。
「おう。
ちょいと上がらしてもらうぜ。
おういるかい?旦那。
茶金さんよ。
えっ?茶金さんちょいと店へ呼んでくれおい。
頼むぜおい。
おい!おい!茶金さん!」。
「はいはい。
目利きでっか?わてが見まひょ」。
「出てきやがったね。
何だよ?おめえは。
えっ?ここの番頭?一番番頭かい?ふ〜ん…おめえで分かるかな?えっ?必ず見る事になってんの?おめえが?店の決まりじゃしゃあねえね。
ヘヘヘ。
何しろねいい品物なんだよ。
びっくりするぞおい。
えっ?ヘヘッ!」。
「どうだ!?おい!」。
「はいはい。
ああこれでっか。
あ〜これは…清水焼でんな」。
「そうだよ」。
「数茶碗ちゅうてなあさらでも5つで20文か30文。
こない古なったのは一文の値打ちもありまへんな」。
「だからてめえじゃ分からねえってんだよ。
茶金出せ!茶金を!そりゃあな3百両の品物だぞ」。
「3百両!アハハ!あんさんたわけを言うて」。
「笑いやがったな。
コンチクショー!」。
「痛い!何しはります!?」。
「おいおい。
店が騒がしい。
どないした?うんうん。
うん?このお客様が駄茶碗持ってきて3百両ちゅうから笑ったら横を張られた?あんさん乱暴はあきまへんな。
おい番頭。
何年この商売やっております?お客様が『3百両の値打ちがある』ちゅうならそれでええねん。
『手前どもでは扱いかねます』と答えりゃええこっちゃ。
ああいや…わてが見まひょ」。
「ああそうっすか旦那!ヘヘッ!この番つくには分からねえんだよ。
よさがね。
うん。
旦那見てくれりゃこっちは心丈夫だ。
お願いします」。
「これでっか?」。
「ええそうっす」。
「ふ〜ん…これは清水焼の数茶碗ちゅうてなさらでも5つで20文か30文。
こんな古なったのは一文の値打ちもありまへんな。
さあ持ってお帰り。
お帰り。
お帰り」。
「わしゃ鶏じゃねえんだよおい。
何だい?これは。
旦那!手に取って見て下さいよ!」。
「手に取ったってこれは…あああきまへんな」。
「旦那。
昨日どこ行きました?清水の観音さん行ったでしょ?音羽の滝の!」。
「ああ!ハハハ…!ああ〜!あの時の茶碗でっか」。
「そうですよ。
忘れちゃ嫌だ。
それ3百両の値打ちがあるでしょ?」。
「ありまへんな」。
「『ありまへんな』って旦那!三度こう『はてな?』ってんで曲げたよこれ。
えっ?いっぺんやりゃあ百両だ。
えっ?3百両!」。
「ああ〜。
この茶碗な漏りますのや」。
「え〜っ!?漏る?」。
「ぶぶがポタリポタリ。
よう見ても何のにゅう一つない。
思わず『はてな?』」。
「冗談じゃねえよ。
じゃああん時なぜ『あっ漏る』って言わねえんですか?えっ?そのままピュッて行っちゃうからこっちは3百両の値打ちがあると思ったから。
ああ〜えれえ事になっちゃった!ありったけの5両。
油の荷5両。
5両と5両でね10両!嫌がるおやじから無理やり買い上げたんですよ。
あ〜江戸へ帰る事はできねえ。
おふくろ一人残してきてんですよ。
ええ?おふくろの面倒見なきゃしゃあねえ。
あ〜えれえ事になっちゃった。
あ〜冗談じゃねえや」。
「あんさんこの茶碗を?10両で買うた?おもろいな」。
「面白くねえや本当に!死人が出ますよ!」。
「明日からいくらあったら商売ができます?10両?おお…じゃ貸しましょう。
お〜い番頭。
手文庫からな10両油屋はんに渡してあげ。
さあ持っていき。
みつきかかっても半年かかっても僅かずつでも入れて下さい」。
「へっ!貸してくれるんですか!?ありがとうございます!商売すりゃあねすぐお返しできますからね。
じゃあこれ遠慮なくお借り致しますよ。
ええ必ずね毎月お返しにあがりますよ。
じゃあ旦那何ですか?10両の値打ちはあるんですか?」。
「ありまへん。
1文の値打ちとてありまへんがなあんさん茶金という名を買うてくれた。
そこで貸しまひょ。
さあさあ商いに精出して」。
「ありがとうございます。
じゃあ確かにお借り致しました。
えっ何ですか?旦那。
その茶碗?見たくもねえよそんなもの!たたき壊しちゃって下さい。
へいどうもありがとうございます!」ってんでベッといなくなった。
さあ茶金さんこの茶碗を店から自分の居間へ持っていきまして茶金さんとこの包装紙…これ昔のこってすから手すきでございますね。
この包装紙が値打ちがあるんですね。
この包装紙で包んでこう相手に渡すってぇとグンと値打ちが上がろうという訳でございましょう。
その紙に「清水の音羽の滝に落としてぞ茶碗もひびにもりの下露」と書いてこの茶碗をグルグルッとくるんでその辺に置いといた。
それから10日ばかりたつってぇと茶金さん近衛殿下の茶席に招かれましてこの間こういう事がと申し上げると「麿見たい」とおっしゃった。
早速取り寄せてこう殿下に見せるってぇと何か書いてある。
「ん?」。
水を入れるってぇとポタリポタリ…。
よ〜く見ても何のにゅう一つない。
にゅうってぇのはあれ貫入とも申しますが窯で焼く時に温度差でピシッという筋…傷でございますかねそういうものが入りますですな。
そのにゅうがない。
傷がない訳ですから近衛殿下思わず「はてな?」ってね。
これ色紙を取り寄せるってぇと「音もなく滴り落つる清水のはて名も高き茶碗なりけり」とおしたためになった。
さあこの色紙をありがたく茶金さん頂いて帰ります。
これ商売人の勘でございましょうな。
ひょっとするとひょっとするぞってんで桐の箱をあつらえてその中に入れといた。
それから10日ばかりたつってぇと近衛殿下が帝の茶席に招かれました。
この間こういう事がと申し上げると「朕見たい」とおっしゃった。
早速取り寄せる。
これ蓋を開けてみるってぇと色紙が出てきた。
紙にも何か書いてある。
どんな高貴なお方の前でもポタリポタリ…。
よ〜く見てもにゅう一つない。
思わず「はてな?」ってんで短冊を取り寄せるってぇと「漏りいでし岩間の清水流れいで世に伝わりしはてなかるらむ」とおしたためになった。
さあ余った墨でもってこの桐の箱の裏っかわに万葉仮名で大きく「はてな」とお書きになった。
これがもう京都中の評判になる。
みんな金持ちが茶金さんとこに売ってくれ売ってくれって来る訳ですな。
もう4日後には名古屋でも評判になっちゃって名古屋の金持ちが「茶金さんみゃ〜はてなの茶碗みゃ〜みゃ〜みゃ〜5百両でみゃ〜」って。
売らないなかなか。
江戸の金持ちもやって来る。
「どうです?茶金さん。
6百両」。
「あきまへん」。
売らない。
その当時の一番の金持ちが鴻池善右衛門様。
じきじきにやって来るってぇと「茶金はん。
あのはてなの茶碗な千両で買うたる。
どうや?」。
「売りまひょ!」ってんで売っちゃったんですね。
千両を目の真ん前に置いて茶金さんが考えちゃった。
「元はといえばあの江戸の油屋さんの持ち込んだもの…。
番頭。
あの油屋はんまるっきり姿見せん?ああ捕まえて。
見つけた者には1分やるで」ってんで丁稚小僧が表へ出るってぇと1分落っこってないかってんでなかなか見つかりません。
「油屋はん!」。
「何だこの野郎!どこのガキだコンチクショー!えっ何?茶金さんとこの小僧かてめえは。
旦那が呼んでんの?分かったよ行くよ。
行きゃあいいんだろうよ。
めっかっちゃったか…おい。
あ〜分かったよ。
今ここへ荷を下ろすから。
どうも旦那!すいません風邪ひいちゃってね。
来月には必ず入れますんで勘弁して下さい」。
「まあええからこっちおいで。
そこへ座ってな。
そこに5百両あるさかい。
それ持って江戸へ帰って親孝行しなはれ」。
「へ!?何すか5百両ってぇのは!はてなの茶碗評判だよ!鴻池様が千両でお買い上げになったってうわさですけどもね。
あれ?あっしが持ち込んだやつ?あの漏るやつかよおい!冗談じゃねえよだから大きな商人は油断がならねえんだよ。
え?10両ぐらいで売っ払っておいて千両ってのはひでえじゃありませんか!ねえ旦那!」。
「今でもな一文の値打ちありまへんがな。
あの茶碗に物語がついて千両っちゅう値が上がったんや。
まあ値打ちといえば漏るところやろうなあ。
さあさあ持ってお帰り。
江戸へお帰り」。
「頂いちゃってよろしいんですか?これ5百両?ちょいと疑る訳じゃねえすけど一つね封を切ってみますから。
うわっピカッと光ったよおい!ハハッ!うわっハハハッ!ああそうだ旦那にね10両借りてましたからね10両お返し致します」。
「堅いこっちゃ。
ええもろうときまひょ」。
「番頭さん!こないだね横っ面張っちゃってすいませんでしたね。
これねじゃあ5両…膏薬代だよ!おうおめえだ小僧こっち来い。
よく俺を捜してくれたな。
3両おめえにやる。
あとみんな並べ!1両ずつやるから!」。
「無くなってしまう。
早く持ってお帰り」。
「へえありがとうございます!」ってんでそれから7日たちまして茶金さん自分とこの中庭を眺めながらたばこをぷか〜りぷかり。
あの江戸の油屋はん今頃どの辺りを旅してるやろと考えているってぇと木屋町の表通りが「わ〜!わ〜!」という歓声が上がっておりますな。
居間を出まして店を通ってひょいっと表を見るってぇとそろいの半纏背中に丸八としてございまして若い衆が30人ばかりでもって大きな木の箱をおみこしのようにワッショイワッショイ担いでこっちへ近づいてくる。
先頭でもって大きなうちわでもって音頭をとってるのがあの油屋さんで…。
「ワッショイワッショイワッショイ!おら!もう少しだよ!こっちの肩落ちてるぞ!気を付けろおら!ワッショイワッショイワッショイワッショイ!」。
「油屋はん!あんさん江戸へ帰ったんじゃないのんか!?」。
「えっ旦那江戸?冗談言っちゃいけねえや!今日は10万両のお仕事を持ち込みましたよ!」。
「10万両!?何やねん」。
「いいからねこの箱ん中見てやっておくなさい!」。
箱ん中ひょいっと見るってぇと大きな水がめの漏るやつで…。
(拍手)2017/01/22(日) 14:00〜14:30
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日本の話芸 金原亭馬生 落語「茶金」[解][字]

金原亭馬生▽落語「茶金」▽第689回東京落語会

詳細情報
番組内容
金原亭馬生▽落語「茶金」▽第689回東京落語会
出演者
【出演】金原亭馬生