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字幕書き起こし クローズアップ現代+「トランプ大統領で自動車産業は〜日米首脳会談の先に何が〜」 2017.02.14

日本の自動車産業はどうなるのか。
メキシコで日米首脳会談を見守っていた部品メーカーの経営者。
脳裏をよぎっていたのは…。
トランプ大統領による自動車産業への容赦ない批判。
しかし日米首脳会談では一転。
自動車産業への直接の批判はなくトランプ政権との交渉は2国間の新たな場に移ることに。
交渉の舞台裏で何が起きていたのか。
今後、自動車産業はどうなるのか。
その行方を探ります。

 

 

 


日米首脳会談を1週間後に控えた今月3日、都内のホテル。
安倍総理大臣とトヨタ自動車豊田章男社長の姿がありました。
2時間近くの会談。
アメリカへの対応などを巡って意見を交わしたものと見られます。
報道陣が詰めかける中多くを語らずにその場を去りました。
トヨタに衝撃が走ったのは1か月前のツイッターでした。
トランプ大統領が批判したのはトヨタがアメリカへの輸出拠点としてメキシコに建設している工場の計画です。
メキシコは人件費がアメリカの4分の1。
しかも、輸出する際に関税がかかりません。
アメリカの雇用を第一に掲げるトランプ大統領。
国内に工場を作るよう求めたのです。
ツイッターの4日後。
豊田章男社長みずからアメリカのモーターショーで批判に応えました。
豊田社長が強調したのは長年トヨタが、アメリカ経済に貢献してきた実績でした。
トヨタがアメリカ進出を本格化させたのは1980年代。
当時、日本車が大量に輸入されたことでアメリカの雇用が脅かされたと猛反発を受けていました。
トヨタは、アメリカとの貿易摩擦を解消するために現地生産に力を入れるようになったのです。
初めて単独で設けた生産拠点ケンタッキー工場です。
従業員は7700人。
トヨタの中で最大規模の工場です。
進出を機に、関連企業が集まり現地で雇用が拡大しました。
製品の7割がトヨタ向けだというこのメーカー。
2人で始めた会社は60人を雇うまでに成長しました。
工場が進出しておよそ30年。
町には働く人が集まり人口は3倍3万2000人にまで増えました。
今も新たな住宅の建設が進んでいます。
こうした工場を全米10か所に展開。
今では13万6000人の雇用を生み出しています。
モーターショーの場でトランプ大統領からの批判に応えた豊田社長。
そこに込めた思いをトヨタの幹部が明かしました。
さらに豊田社長は、水面下で政権の複数のキーマンに接触。
ペンス副大統領との会談にもこぎ着けました。
アメリカの工場で長年雇用を守ってきた実績を訴えトヨタの活動に理解を求めたと見られます。
一連の対応に手応えを感じていたトヨタ。
しかし、最も警戒していた発言が飛び出しました。
今度は、日本からの自動車輸出に批判の矛先を向けてきたのです。
貿易摩擦の再燃も懸念されました。
これに対して日本政府は日本の自動車産業がアメリカ経済にいかに貢献してきたかトランプ政権側に説明しました。
豊田社長もさらに踏み込んだメッセージを発信しました。
そして、トランプ大統領の発言が注目された日米首脳会談。
日本の自動車産業が批判の的にされることはありませんでした。
きょう、まず、トランプ政権のフリン大統領補佐官、この人、日米首脳会談にも出席していた人なんですけれども、この人が辞任したというニュースが入ってきております。
安井さん、これ、発足から僅か3週間で、側近中の1人が、もう側近が辞任、ちょっと気になる動きですよね。
かなり異例の事態だということだと思います。
フリンさんの場合は、外交安全保障の要となるポジションになりますので、日本から見ましても、一体誰が後任になるんだろう、そこに関心は集まっていくというふうに思います。
話は日米首脳会談なんですけれども、トランプ大統領から、自動車に関する言及がなかったっていうこと、中西さん、長年、日米の自動車産業を見てこられましたけれども、このことについては、どう感じられましたか?
正直申し上げて、非常に緊張して、首脳会談を見守っていたんですけれども、その前のトランプさんの発言が、あまりにもかなり過激で、これ本当に、貿易摩擦、再燃するんじゃないかと、そういう緊張感を持って見ていました。
ただ結果的には、非常に友好的なムードで、自動車に全く触れないということで、正直いって今は、ほっとしてるというのが、正直なところなんですね。
あまりにも身構えてましたから。
おっしゃるとおりで。
今、逆に力が抜けて、実は、これはなんというか、ちょっとわれわれ、振られ過ぎなのかなと思うんですね。
やはり今の状況をそれほど楽観するのは間違いではないのかなと思っておりまして、あまりこう、トランプ楽観論みたいなそういう形に振れ過ぎるのは、いかがなものかなと思っていますね。
まだ安心というわけにはいかないんじゃないか。
会談後の共同会見で、トランプ大統領は、このように述べているんですね。
友情を結べたことを感謝する。
両国にとって利益のある貿易を求めていくと述べまして、これ具体的な政策については、こちらの経済対話、これ、麻生副総理とペンス副大統領との間の経済対話で話し合っていくことになった。
これが新たに決まったわけなんですけれども、何を話し合うのか、議論する3つの枠組み、こうなっているんですが、安井さん、これ、可能性として、この中で再び自動車産業が議題に上ってくる、ありえますか?
可能制は多いにあると思います。
ここに2国間の貿易に関する枠組みというのが入っていますので、そこの中で自動車が出てくるという可能性ですよね。
実際、日本とアメリカの貿易の中ではやはり貿易不均衡、貿易赤字、アメリカがたくさん持っている中で、自動車っていうのは、非常に大きな割合を占めています。
ちょっとこちらをご覧いただきましょう。
日米の貿易なんですけれども、日本から輸入する量がアメリカは多くて、輸出する量が少ないと、対日貿易赤字、去年はこれほどあるんですけれども、今おっしゃっているのはそのうちの実は5兆円分は自動車関連なんだと。
これだけ存在感が大きいということですので、2国間で話し合うというふうになった場合に、自動車が話題にならないことのほうが、むしろ不自然ということなんだろうと思います。
選挙期間中もトランプさん、ずいぶん自動車のことは言ってきていますので、どこかでこの話題がもう一回出てくると考えておいたほうが自然だと思います。
背景にこれが存在しているかぎりは、いつもその可能性は拭えないんじゃないかと。
一方でなんですけれども、中西さんが、日米首脳会談の中で気になったトランプさんの発言があるということで、それがこちらです。
自動車メーカーなど、多くの企業に、アメリカに戻るように訴えてきた。
実際に企業は、アメリカに戻ってきている。
この発言のどのあたりがポイントですか?
やはりその今のトランプさんの思い、政策に対する一貫性みたいなものが、結構表れてることばだと思うんですね。
トランプさん、やっぱりアメリカの産業の競争力をちゃんと強くして、その中で、雇用も増やし、もう一回、偉大な国にしていきたいと、そういう思いの中で、製造業っていうのは、ずっと構造的に弱体化してきたわけですね。
これをもう一回、強化していきたいと。
そういう中で、強硬な姿勢も取りつつ、もう一回、要である自動車産業も新たな投資を生み出して、活発化させていきたいという、そういう思いがきっちりとある程度出たことばだと思いますね。
つまり、われわれはツイート、毎回出てくるたんびに、どういうことなんだろうと、なんとなく右往左往しているように感じますけれども、中西さんはそうじゃないんだと、実は一貫してるんだと。
私は方法論に関しての議論はあれども、アメリカの産業を、もう一回競争力を高めて、それがアメリカの復活につなげていくっていう、そういったトランプさんの強い思いというのは、非常に一貫した思いがあると思っています。
だとすると、その思いが一貫してるとしたら、これ、日本の自動車産業、これまでもやれることはやってきたように、先ほどのVTRを見ていても思いますけれども、まだ何を要求される可能性がありますか?
基本的に、アメリカでちゃんとした地産地消型の産業になれているかというと、まだそれは十分とはいえないと。
やはり日本を中心として、開発から調達を含めて、日本中心のところがありますので、やはりアメリカの中にそういうものを移していく、そういうものがやっぱり要求されてくる可能性はあると思うし、数量規制みたいなものも出てくるリスクはあると思っていますね。
日本の自動車産業にとって、トランプ大統領から突きつけられている、もう1つ、大きな課題があるんですけれども、それが、トランプ大統領が見直しの対象としている、NAFTA・北米自由貿易協定ですね。
これがあるために、アメリカとメキシコとの間の貿易では関税がかかりません。
そのため、日本からメキシコには、自動車関連を中心におよそ1000社の企業が進出しています。
今回のこの会談、進出企業はどう見ていたんでしょうか。
メキシコに進出している愛知県の自動車部品メーカー。
現地工場社長の飯田拓治さんです。
トランプ大統領は日本にどんな要求を突きつけるのか。
会談の行方に注目していました。
世界の名だたる自動車メーカーが、相次いで生産拠点を構えるメキシコ。
それに伴って、日本からも自動車関連の企業を中心におよそ1000社が進出しています。
飯田さんの会社は5年前に工場を作り、今では会社全体の売り上げの1割近くをメキシコで稼いでいます。
作っているのは走行時の音を和らげる防音材。
メキシコで生産した部品はアメリカにあるトヨタや日産の工場に輸出。
さらにメキシコの日産やマツダの工場にも納めています。
その部品は車に取り付けられアメリカに輸出されています。
関税がかからず、人件費が安いメキシコの利点を最大限生かして売り上げは毎年2割以上増加。
従業員も90人にまで増やしました。
しかし、今、飯田さんが頭を痛めていることがあります。
トランプ政権によって浮上した国境税です。
アメリカに製品を輸出した場合多額の税金をかけるというのです。
この会社にとって心配の種になっているのが大型の新規事業です。
おととしドイツの部品メーカーと提携し新たにフォルクスワーゲンのメキシコ工場に納める契約を結びました。
そのために、ドイツのメーカーと4億円を投じ新たに製造ラインを完成させたばかりでした。
この日、ドイツのメーカーと対応策を協議しました。
さらなる製造ラインの増設も検討していましたが当面、見送ることにしました。
飯田さんは今、日本企業の経営者たちと頻繁に会い最新の情勢をつかもうとしています。
先行きが不透明になるNAFTA。
トランプ大統領によって日本企業の経営戦略は根本から揺さぶられています。
中西さん、NAFTAが仮に見直しとなりますと、今ありました日本の自動車メーカーをはじめ、1000社ですよね、進出してる企業にとっては大きな影響になりますよね。
1000社っていう規模以上に、これからどんどん進出するっていう、まさにそのタイミングなんですね。
これなぜかというと、TPPという自由貿易協定を、まさにそれに向けて、日本の産業というのは東南アジアと日本、そしてメキシコの安い労働力を使って、アメリカだとか、ヨーロッパに売っていくっていう、こういう産業構造を取ろうとしてた、まさにみんなが船に乗った瞬間にこういった形での政策の変更が行われる、影響はかなり大きいと思います。
大きな、体力のある企業はまだしも中小企業になってくると、これ、大変ですよね。
かなり抜本的な経営の判断の見直しを迫られるリスクはあると思いますね。
改めて日本では働いている人のうち、10人に1人が、これはディーラーやサービスも含めて、自動車関連の仕事に携わっていまして、その自動車産業、日本経済の屋台骨なんですよね。
こういった自動車産業を取り巻く環境が変わろうとしている中で、では日本の自動車メーカー、アメリカとどう向き合えばいいのか。
中西さんはどうお考えですか?
日本の自動車産業にとっては、関係を見直す、いいチャンスだと思っています。
そういう意味において私の考えというのは、アメリカに競争力をもたらす関係作りを見いだすべきだと。
アメリカに競争力をもたらす?
競争力のないところに投資をするということはできません。
ところがやはり、トランプ政権の政策というのは、やっぱりアメリカと、ウィンウィンになる関係を求めてるわけですね。
そういう意味においては、やっぱり例えば分かりやすくいえば自動運転、あるいは電気自動車、あるいはITと絡むようなサービス産業、こういったものを先を見据えた、アメリカの競争力につながる、そういう投資を日本の自動車産業は求められていると。
ある意味、日本を少し重視し過ぎたところを、見直すという意味においても、私はいいチャンスだというふうに考えています。
むしろいいチャンスと考えて、戦略を練り直す機会にきているんじゃないかと。
安井さんは、どうお考えになりますか?日本はアメリカとどう向き合うか。
日本がアメリカとどうするべきかということなんですけど、日本はやはり、アメリカと仲よくなれば、勝ち組だというような考えに陥ってはいけないと思うんですね。
日本とアメリカがよかったとしても、アメリカとメキシコがおかしければ、メキシコを経由してビジネスをしてる日本の企業は困ってしまいます。
アメリカと中国がおかしければ、世界の経済がおかしくなります。
そういった意味では、アメリカを、グローバルな視点にどうやってつなぎとめていけるのか、日本ばっかり、アメリカに近寄ってるじゃないかといわれますけれども、近くにいるからこそ、アメリカをグローバルなところに引き止めていく力が必要だと。
トランプさんは聞く耳を持ってくれますか?
アメリカにとってもそれがプラスになるということであれば、トランプさんにもそういった考えは届くんじゃないかと、期待したいと思います。
ただ気にしなければいけないのは、日米間でやはり為替の問題が出てきてしまうことですよね。
日本の企業にとっては円高のほうにいってしまうとなりますと、なかなか輸出もやりにくい。
ところがトランプさんは、この為替の問題が貿易不均衡の背景にあるんだということで、かなりいってきた経緯がありますので、今後は為替の問題に発展していくのかというのが、注目されるところです。
こんばんは相葉雅紀です。
今日はですね世界一に輝いた現役メジャーリーガーにグッと迫ります!2017/02/14(火) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「トランプ大統領で自動車産業は〜日米首脳会談の先に何が〜」[字]

事前の発言とは異なり、日米首脳会談では、日本の自動車産業を名指ししての批判は行わなかったトランプ大統領。今後の二国間協議はどのように進められるのか。行方を占う。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】みずほ総研欧米調査部長…安井明彦,自動車アナリスト…中西孝樹,【キャスター】鎌倉千秋
出演者
【ゲスト】みずほ総研欧米調査部長…安井明彦,自動車アナリスト…中西孝樹,【キャスター】鎌倉千秋