70年前に施行された日本国憲法。
憲法で保障されたさまざまな権利。
多くの条文は国民を主語に書かれています。
外国人についての記述はありません。
外国人の権利について憲法に定めがない国は先進国ではあまり例がないといいます。
第2回は「外国人と憲法」。
さまざまな理想が書かれた国民の権利。
一方憲法に記されなかった外国人の権利は?矛盾を抱えた現場から考えます。
生存権です。
製造業が盛んで外国人が多く暮らす豊橋市です。
生活保護の窓口には毎日のように日系人からの相談が寄せられています。
23年前に来日した日系ブラジル人です。
男性はこれまで工場勤めやトラックの運転手などいくつも仕事をしてきました。
しかし3年前に事故で足が不自由になり収入がなくなりました。
蓄えも底をつきそうだといいます。
柴田さんは生活保護を外国人でも申請できる事を説明しました。
今豊橋に暮らす日系人の多くは90年代に国が労働力として受け入れた人たちです。
当時製造業など肉体労働の現場は人手不足に悩まされていました。
そこで国が目をつけたのは南米に移住した日系人とその家族です。
法律を改正し日系人が国内で働きやすくしました。
日系人は永住権や定住権を取り税金も納めてきました。
はい失礼します。
どうもありがとうございます。
現在生活保護は国籍に関係なく受けられます。
しかし外国人に生活保護を支給する法的な根拠はぜい弱なものです。
憲法第二十五条を基に作られた生活保護法です。
生活保護は国民の権利として書かれています。
外国人は対象になっていません。
1954年生活保護法の対象でない外国人の措置について厚生省が出した通知です。
当時日本国籍のない朝鮮半島や台湾出身の人たちの中で生活に困窮する人が増えていました。
国は「生活保護制度を外国人にも準用する」としました。
3年前外国人の生活保護を巡って裁判が行われました。
永住権を持つ外国人が生活保護を申請。
市役所に認められませんでした。
生活保護は外国人にも認められるべきと市役所の対応が違憲であると訴えました。
最高裁は「生活保護は日本国民に限られた権利で外国人は含まれない」とし「自治体の判断で外国人に支給しているものだ」としました。
柴田さんは高齢の外国人の家を定期的に回っています。
かつて生活保護を受けられなかった人がそのまま困窮し亡くなった経験があるからです。
生活保護を受給すると自立に向けた就職活動などが義務づけられます。
しかし中には自立が難しい外国人もいます。
(ノック)日系人の夫と27年前に来日した具志堅さん。
夫が亡くなり今は1人暮らしです。
79歳まで化粧品の箱詰め工場で働いていました。
手取りは少なく年金には加入できませんでした。
その仕事も去年4月年齢を理由に突然解雇されました。
困り果てていた時市の通訳担当に出会い生活保護を受けるようになりました。
具志堅さんの生活の基盤は日本にしかありません。
経済的に頼れる家族や親戚はブラジルにも日本にもいないといいます。
アリガトウゴザイマシタ。
オブリガーダ。
オブリガーダ。
生活保護制度は社会保障に入れなかった外国人にとって数少ない命綱となっています。
憲法に書かれていない外国人の権利を国の通知だけで対処する事に限界があるのではと柴田さんは感じています。
日本国憲法になぜ外国人の権利は書かれなかったのでしょうか。
「本日日本国憲法を公布せしめた…」。
それは憲法の成立過程にまで遡ります。
諸外国の憲法に倣って外国人の人権も憲法に盛り込もうとしていました。
草案では「自然人すべての人の権利を保障する」との文言もありました。
それを基に日本政府案を作りGHQとの間で検討が重ねられます。
最終的に憲法から外国人の権利を定めた条文は消えました。
「自然人」としていた主語も「国民」と書き換えられました。
なぜGHQは書き換えを許したのか。
憲法の草案作りに関わった一人が生前NHKに証言していました。
こうして憲法で保障された権利は国民を主語に書かれる事になったのです。
今外国人に生活保護を受ける権利があるかどうか意見が分かれています。
近藤敦さんは長年国内で暮らしている外国人には認めるべきだと言います。
一方で生活保護は国民に限るという意見もあります。
教育の現場も影響を受けています。
憲法第二十六条には国民の教育を受ける権利と義務が書かれています。
外国人については書かれていません。
東京のNPOが運営する日本語学校です。
平日の昼間教室は満席です。
子どもたちの親は製造業や清掃介護など慢性的な人手不足に悩む職場で働いています。
これは?これ違う。
アハハハハッ。
子どもの日本語学習を支援しているピッチフォードさんです。
子どもの中には小中学校への入学を断られるケースがあるといいます。
3年前ネパールからやって来た…来日当初は全く日本語が話せず教育委員会から「もう少し日本語が上手になってから来てほしい」と断られました。
こんにちは。
あっこんにちは。
母親のシャンティさんはつてを頼ってピッチフォードさんにたどりつきました。
ピッチフォードさんは教育委員会だけでなく学校にも直接働きかけます。
2か月後ようやく中学校への入学を認めてもらいました。
小中学校での就学拒否は決して珍しくないといいます。
この教室が把握しているだけでも5年間で17人います。
憲法第二十六条の二項には義務教育は国民の義務と書かれています。
外国人はその対象ではないので就学を断られる事もあります。
外国人の子どもに対する就学拒否。
国はどう考えているのでしょうか。
外国人を受け入れる義務があると考える国。
しかし現場では受け入れ態勢を作りにくいといいます。
匿名を条件に関係者が取材に応じてくれました。
就学拒否の起きる理由の一つが財政的な問題だといいます。
教育を受ける権利は外国人にも認められるのか。
憲法の解釈も分かれています。
ピッチフォードさんのもとには小中学校に通えないという親からの相談が絶えません。
この日はネパール人の親子を連れて市役所に行きました。
一番大きいね。
そうそう一番大きいねここがね。
手続きが分からず小学校に3か月間通えていませんでした。
(ピッチフォード)そうですね。
パスポートと在留カードあるね?はい。
あの話すのはネパール語普通に…。
ピッチフォードさんのような草の根で支援するNPOが外国人と学校とを結ぶ役割を担っています。
(ピッチフォード)読み書きはできないっていう…はい事ですね。
(ピッチフォード)ユーキャンゴートゥスクール。
よろしくお願いします。
ありがとうございました。
憲法の条文から消えた外国人の権利。
今日本に暮らす外国人の数は230万人。
今後政府は外国人の受け入れを増やしていく方針です。
2017/01/05(木) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ 暮らしと憲法 第2回「外国人」[解][字]
今年は、日本国憲法が施行されてから70年の節目の年。ハートネットTVでは暮らしの現場から憲法について考える。第2回は「外国人」の視点から、外国人の権利はどこに?
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