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(三遊亭歌之介)大勢様で本当にありがとうございます。
私もおかげさまで子供が二人おります。
上の娘が長女。
(笑い)何か間違った事を言いましたか?
(笑い)長男は25歳で石川遼君と同い年。
背も一緒なんです175。
ただ収入が違うんです。
(笑い)遼君はいっぱい稼ぐみたいです。
家の息子はこの間私の貯金箱を割ってました。
(笑い)「かくばかり偽り多き世の中に子のかわいさは真なりけり」と言ってあります。
「親方いるかい?親方いるかい?」。
「えい。
そこん所開いてますんでどうぞお開けんなって。
あ〜番頭さんじゃありやせんか。
こらぁどうも相すみませんで」。
「いや春早々すまない親方。
ちょいと急なんだけどもどうしてもつきあってもらいたい所ができちまった。
今日は何かあるんだろ?」。
「いえ。
何もありやせんよ。
ええ。
どちらのほうでござんすか?」。
「かねてからお願いしてあった例の隠居の茶室を拵えるってぇ件だよ。
いや〜もう年寄りのこった言いだすってぇと聞きやしないよ。
まぁああなると子供と同じでね。
いや今日深川の木場でもって木口のいいのがあるってんだが私が一人で行ったっていい物を見つける事はできやしない。
親方。
ひとつ頼むよ」。
「分かりやした。
喜んでお供させてもらいますんで。
え〜ちょいとすみません。
そこん所で待っててもらえますか?ええ。
すぐに行きますんで。
お婆さんお隣のお婆さん。
出かけてきますよ。
日の暮れ方ぐれえには帰ってきますんで。
それから仲間が無尽の銭取りぃ来やす。
棚ん所に袋くら貼ってますがね銭入ってますから渡してやって下さいな。
じゃあ留守お願いしますんで。
どうもすみません」。
「いや〜。
大変だな親方も。
やっぱりなにかい?独身者ってのはそうやって出かける時にはお隣のお婆さんに声をかけていかなくっちゃいけないかい?」。
「まぁこういう事はしょっちゅうなんで別にどうって事ぁありやせんけどもね。
今番頭さんにちょいと家ん中見られちまって。
随分と散らかってましたでしょ?」。
「親方。
たまにはなんだろ?思い出すんだろ?」。
「たまにはってぇと何をですか?」。
「何をですかって事はないよ先のかみさんのこった。
お光っつぁん」。
「ウフンその話はもうよしに致しやしょうや。
そらぁ思い出さねえっつったら嘘んなりやすけどもね今更思い出してみたってあとの祭りでござんすんで」。
「いや〜私がこういう事を言うのもなんだがな親方あんないいかみさんいやぁしないよ。
あのころのお前さん方の暮らし向きってのは決して楽じゃなかったはずだ。
その苦しいさなか切り盛りをちゃんとやってくれて。
あんないいかみさんいやぁしない」。
「ええ。
私もそう思ってますよ。
まぁ近頃は年のせいなんですかね?ガキの事を思い出しちゃってしゃあねえんですよ」。
「かわいい男の子がいたっけ。
確か名前が亀ちゃんっつった。
幾つぐらいになるんだい?」。
「別れた時が6つでござんしたんであれから3年経ってます。
この間も浅草の観音様へお詣り行った帰り饅頭屋の前通りやした。
饅頭がこううめえ具合に煙出して蒸けてあったんですよ。
『亀の野郎この饅頭好きだったな〜。
買ってやったらどんなに喜ぶ顔すんだろな』と思ってましたら目頭熱くなってきやしてね」。
「そうかい。
いや〜親方もうひとふんばりだよ。
ここまで一生懸命やってきたんじゃないか。
きっといい事が待ってるよ」。
「はい。
ありがとうございます」。
「親方。
ちょいとあの路地ん所を見てごらん。
女の子が羽子板でもって二人で遊んでんだろ。
その脇でもって地べたへ字書いて遊んでる男の子がいるよ。
間違ったらごめんよ。
あの子亀ちゃんじゃないかい?」。
「んな事ぁありませんよええ?亀がここらでもって遊ぶ訳は…」。
「野郎です。
亀の野郎ですよ。
間違いありませんよ野郎ですよ。
動いてます」。
「そらぁ動くよ」。
(笑い)「ハハ〜ッこういう事ってあるんだな。
親方何をしてんださぁ会ってやんな」。
「いえ」。
「私の事を心配する事は要らないよいつもん所で待ってるから。
ゆっくりと会ってやんな」。
「ありがとうございます。
おっつけ行きやすんで」。
「大きくなりやがったな〜。
おう亀〜っ。
亀。
どこ見てやがんだおい。
ええ?こっちだぃこっちこっちだぃ。
亀」。
「誰だ〜い?さっきから他人の事を亀亀って呼び捨てにしやがって…」。
「ああ〜っ?お父っつぁんだな?」。
「分かるか?」。
「うん。
分かるよ」。
「大きくなったな〜」。
「お父っつぁんも大きくなった」。
(笑い)「お父っつぁん大きくなる訳無えじゃねえか。
おっ母さん元気でやってっか?」。
「うん元気だよ」。
「そうか。
そらぁなによりだ。
お父っつぁんかわいがってくれっか?」。
お父っつぁん?お父っつぁんお前じゃねえか」。
「俺ぁお前先のお父っつぁんだぃ今のお父っつぁんよ」。
「そんなばかな話聞いた事ないや子が先できて親があとからできんの…」。
(笑い)「ヤツガシラぐらいなもんだ」。
(笑い)「芋と一緒にする奴があるかおい。
だから何て言やぁいいのかなお前が寝てからよぅ遊びに来る他所のおじさんがいんだろ?」。
「ううん。
そんなもんいやしないよ」。
「いやしねえよってお前寝てっから分かんねえんだ」。
「そんな事ないよ家3畳しかないんだい。
んでもって箪笥やなんやかんや置いてあっから私寝る時はいつもおっ母さんと重なるようにして寝てんだい。
こないだなんか寝返りをうったらコロコロって台所に転がっちゃったんだから。
そんなもんいやしないよ」。
「いやしねえよってじゃあお前どうやって学校に上げてもらってんだぃ?」。
「おっ母さんが近所の人の着物を縫ったり洗い張りの仕事をして私をちゃんと学校に上げてくれてんだい」。
「そうか。
針が持てたっけ。
おっ母さんがそうやって苦労して学校に上げてくれてんだ一生懸命勉強すんだぞ」。
「うん。
おっ母さんもそう言ってた。
『お前一生懸命勉強しないと今にきっとお父っつぁんみたいになっちゃうぞ』」。
(笑い)おっ母さんよぅお父っつぁんのこと何か言ってねえか?」。
「ええ?あっこないだ学校の遠足で動物園に行ったんだよ。
で家へ帰ったらおっ母さんがね『今日は動物園に行ったんだろ?何と何と何見てきた?』っつうから『象や虎に熊』っつったら『象や虎は呼び捨てにしてもいいけども熊だけは呼び捨てにするんじゃないよ』」。
(笑い)「『熊はお前のお父っつぁんの名前じゃないか』って。
フフフだからまだ脈があらぁ」。
(笑い)「この野郎生意気な事を言いやがって。
八百屋。
何笑って聞いてやがんだよ」。
(笑い)「あっち行ってろぃ。
他には何か言ってねえか?」。
「近所のおばさんが遊びぃ来ておっ母さんに話ししてた」。
「何だって?」。
「『お前さんもいつまでも一人でいられる訳じゃないんだから花の咲けるうちにもう一度花を咲かしてみたらどうだ?』っつたらねおっ母さん頭を深々と下げて『お言葉は本当にありがとうございますが亭主は先の呑んだくれでこりごりです』って」。
「呑んだくれでこりごりか。
お父っつぁんな酒よしちまったんだぃ」。
「ええっ?お父っつぁん酒やめたの?本当なの?お父っつぁん。
本当?」。
「本当だ。
お酒の匂いしなくなっちゃった。
家にいた時なんか朝から晩までお酒の匂いプンプンプンプンさしてたもんね。
お父っつぁん酒よしちまったんだ」。
「ああ。
でこんな事ぁおっ母さんには言わなくったっていいんだぞ。
吉原の女もおん出しちまってなお父っつぁん今一生懸命仕事やってんだぃ」。
「一生懸命仕事やってんだ」。
「おう。
お前もうちょっとこっち…。
何だ?おい。
俺ぁお前そこん所墨かなんかはねたのかなと思ったらそうじゃねえじゃねえかよ。
傷じゃねえか。
眉間だぞおい。
そんな所へお前傷つける奴があるかい。
どうしたぃ?」。
「ここん所のこの傷だろ?これこないだ斎藤さんのお坊っちゃんと駒回して遊んでたんだよ。
私の駒効いたんだよ『私の駒効きました』ったら『そんな事ぁない。
俺の駒が効いた』っつうから『そんな事ありません。
私の駒効きました』ったら『生意気言うな』って駒のとんがった所でここん所突かれちゃって血が流れてきたから私泣きながら家へ帰ったらおっ母さんが『どこのどいつにやられたんだか言ってごらん。
男親がいないと思ってばかにしやがる。
おっ母さんねじ込んでやっから言ってごらん』っつったから『斎藤さんのお坊っちゃんにやられました』ったら『じゃあ痛いだろうけど我慢をおし』って」。
(笑い)「『あそこのお家じゃお坊っちゃんの要らなくなった着物を戴いたり洗い張りの仕事をさしてもらって親子二人がやっと生活できるようにしてもらってんだ』って。
『子供同士の喧嘩でもって親子二人が路頭に迷うような事になっちゃいけないからお前悔しいだろうけど我慢をおし』って。
おっ母さん私の頭なでながら涙ポロポロポロポロこぼして『こんな時にあんな呑んだくれでもいてくれたらせめてもの案山子になったのに』って」。
「勘弁しろお前にまでそうやって辛え思いさせちまってよぅ。
泣くんじゃねえよ。
男が泣いてどうすんでぇ」。
「お父っつぁんだって泣いてらぁ」。
「泣いちゃいねえ。
目から汗が流れてんだ。
そうだお父っつぁんよぅまさかお前にこんな所で会えるなんて思ってねえからいくらも持っちゃいねえ。
おうお前これで何か好きなの買いな」。
「いいの?お父っつぁん。
ありがとう。
お父っつぁん。
これ札じゃないか」。
「札だよ」。
「私おつりなんか持っちゃいないよ」。
(笑い)「お前からつりもらおうと思っちゃいねえやな。
それ全部お前にやんだぃ」。
「ええっ?だって家にいた時なんか『1銭くれ』ったら目ぇ三角にして怒ったろ?」。
(笑い)「それが今じゃこうやってお札を出すようになって。
やっぱり年はとらしたい」。
(笑い)「生意気な事ばっかり言いやがって」。
「私これでもって鉛筆買ったっていい?」。
「ああ。
いいってこったい」。
「私の使ってる鉛筆こんな短くなっちゃったんだよ。
でおっ母さんに買ってくれっつったら『鉛筆は芯のあるうちは使えるんだよ。
我慢おし』って買ってくんないんだよ。
私これでもって長い鉛筆買ったっていい?」。
「ああ。
いいってこったぃ」。
「ありがとうお父っつぁん。
でも鉛筆買ったらおっ母さんが聞くよね『そのお銭はどうしたんだ?』って」。
「そん時ゃお前『知らねえ他所のおじさんに戴きました』とな?そう言っときな」。
「だって『名前言わないとお礼が言えないから』って」。
「『名前は男と男の約束で言えません』とな?そう言っときな。
それからおっ母さんにぁよぅお父っつぁんとここで会った事を言うんじゃねえぞ。
分かってっか?よし。
そうだお前鰻好きだったなおい。
鰻食ってっか?」。
「そんな物食べられやしないよ。
もう鰻の顔も忘れちゃった」。
(笑い)「情けねえ事言うんじゃねえやな。
明日の今時分ここん所へ来れっか?おう?そうか。
じゃあよぅあそこの鰻屋ん所で待ってろ。
お父っつぁんなお前に鰻いっぱい食わしてやらぁ」。
「ええっ?本当なの?お父っつぁん。
鰻食べさしてくれんの?本当?」。
「うん。
じゃあ明日な鰻だな。
お父っつぁん行っからよぅ」。
「お父っつぁんもう行っちゃうの?家すぐそこなんだよ。
ちょっとだけ寄っていきゃいいじゃないか。
今だったらおっ母さんいるんだからさぁ」。
「駄目なんだよお父っつぁんほら人を待たしてっからよぅ。
だから明日鰻屋で待ってろ。
な?そこん所ズ〜ッと行っておう突き当たり右入って一番奥か?分かった。
気を付けて行け。
大きくなりやがったな〜」。
「ただいま〜っ」。
「ただいまじゃないよこの子は。
全くまあ〜遊びぃ行ったら行ったっ放しになって帰ってきやしないじゃないか。
おっ母さんの仕事手伝ってくんなきゃ困んだよ。
糸こんがらがっちまったんだから手ぇ貸してくれってぇの手を。
全くまあ〜。
左の袖ん所見てごらんテカテカテカテカ光らして。
洟拭いちゃったんだねそこで。
汚いね。
おっ母さん洗うの大変なんだから。
洟が垂れてきたってぇの?洟が垂れてきたってぇの?どうしてそうやって1本しか垂らさないんだろね?」。
(笑い)「1本しか垂らさないからばかに見えてきちゃうんだよ。
垂らすんだったら2本一遍にお垂らし」。
「んな事言ったって私の鼻はそんな器用じゃない。
この鼻吹き抜けんなってる」。
「余計な事言わない。
ほらまた糸落っことす。
ちゃんと持ってなきゃ駄目じゃない。
亀。
お使い頼まれてんだね?先に済ましてきな」。
「んなもん頼まれちゃいないよ」。
「頼まれてないのかい?本当なんだね?」。
「頼まれてないんだったらこのお銭は何だ?」。
「あっそれ私んだい。
返しとくれよ鉛筆買うんだい。
返しとくれよ」。
「札じゃないか。
どうしたんだい?」。
「もらったんだい」。
「誰にもらったんだい?」。
「知らない他所のおじさんにもらったんだい」。
「知らない他所のおじさんがこんな大きなお銭なんかくれる訳ないだろ?おっ母さんその人に会ったらちゃんとお礼言わなきゃいけないだろ?誰にもらったんだい?」。
「名前言っちゃ駄目なんだよ。
おっ母さんのよく知ってる人だよ」。
(笑い)「名前言っちゃ駄目だって私男と男の約束したんだい」。
「あ〜そうかい男と男の約束を。
そらぁおっ母さんが悪かったよ。
亀。
お前表へ行って心張りかってきな。
心張りかったらおっ母さんのほうに来るんだよ」。
「何をしてんだねもっとおっ母さんのほうにもっとおっ母さんの…。
言う事を聞かなくなっちまって。
こっちへ来やがれってんだ。
なんて事してくれたんだい。
おっ母さんお前にそういうさもしい料簡になってもらいたくないから朝から晩まで一生懸命仕事をしてんじゃないか。
三度のものを一度にしたってお前に不自由な思いさせた事あんのかい?どっから盗んだか言わないかい」。
「盗んだんじゃない本当私もらったのもらったの」。
「またそうやって嘘なんかついちゃ嫌だよ。
おっ母さんとお前と二人っきりじゃないか。
やっちまったもんしょうがないだろ。
おっ母さん一緒に謝りに行くからどっから盗んだか言わないかい」。
「盗んだんじゃない本当私もらったのもらったの」。
「言わない気だね。
ここに玄翁があるよ。
この玄翁はお父っつぁんと別れる時にお前が持ってきた物なんだ。
何かの足しになるんじゃないかと思って取っといた。
言わないとこの玄翁でお前の頭を叩き割るよ。
これはおっ母さんが叩くんじゃないんだ。
お父っつぁんが叩くのも同じだよ。
どっから盗んだか言わないかい」。
「盗んだんじゃない本当もらったのもらったの」。
「じゃあ誰にもらったの?」。
「エエエ〜ンエエ〜ンお父っつぁんにもらったんだ〜っ」。
「お父っつぁんにってお前お父っつぁんに会ったのかい?」。
「お父っつぁんったらいきなり目の前へ飛び出してきやがった」。
「あの人がお前にお金を?お父っつぁんなんだろ?ベロベロに酔っ払ってたんだろ?」。
「ううん。
酒なんざよしちまったんだって。
きれえな半纏重ねて着てたよ。
で『こんな事はおっ母さんには言わなくていい』っつったんだよお父っつぁんは。
吉原の女もおん出しちまったんだって。
言わなくていいっつたんだよ」。
(笑い)「どうする?」。
(笑い)「何がどうするだよこの子は。
酒さえ飲まなきゃいい人なんだよ。
あの人がお前にお金を?お父っつぁんおっ母さんのこと何か言ってなかったかい?」。
「両方で同じような事聞いてらぁ。
明日のお昼あの鰻屋さんで鰻食べさしてくれるっつうんだ。
私行ったっていいだろ?」。
「ああ。
いいってこったよ。
さぁお前早くお寝」。
「お寝ったってまだお昼じゃないか」。
(笑い)「いいからお寝。
おっ母さんも寝るから」。
よほどうれしかったんでしょう。
次の日になりますとこざっぱりとした身装をさせまして亀ちゃんを先に出す。
自分も鏡台の前に座りますと軽くポンポ〜ンとお化粧しましてお使いの帰りみたいな格好をして鰻屋の前を行ったり来たり。
「あの〜すいません家の悪さがお邪魔しておりませんでしょうか?」。
「ええっ?あ〜坊っちゃんですか?二階でどっかの棟梁と一緒でございますよ。
坊っちゃ〜ん。
おっ母さんが見えたよ〜」。
「お父っつぁん。
おっ母さん来ちゃった」。
「い…言うんじゃねえっつったろうよ」。
「だって来ちゃったもんしょうがないじゃないか。
おっ母さ〜ん。
こっちだから早く上がっといで〜」。
「まあ〜お前どうしてこんな所にいるの〜?」。
(笑い)「おっ母さん知ってるくせにさ〜」。
(笑い)「お父っつぁんほらきまり悪がってんだから呼んでやんなよ。
おっ母さん早く上がってといでって。
お父っつぁん呼んでやんな。
おっ母さん。
お父っつぁん。
もうしょうがないな両方で仲人に世話やかしちゃ」。
(笑い)「昨日は家の子がお金を戴きまして今日はまた鰻までご馳走して下さるとのこと『どちらの方だろう?』とひと目会いましてお礼をと思いました」。
お前さんでしたか。
お元気そうでなによりです」。
「あ…頭上げてくんねえかな。
いやこらぁ昨日ばったりそこん所でもって亀の野郎に会っちまってよぅ『お前鰻食ってっか?』ったら『鰻なんざ顔も忘れた』ってもんだから『じゃあ鰻でも食おうじゃねえか』って。
『誰にも言うんじゃねえぞ』ってぇのに子供ってぇのはどうも正直でいけねえ言っちめえやがったもんで。
いやこらぁ昨日そこん所でもってばったり亀の野郎に会っちまって『お前鰻食ってっか?』ったら『鰻なんざ顔も忘れた』ってもんだから『じゃあ鰻でも食おうじゃねえか』って。
『誰にも言うんじゃねえぞ』ってぇのに子供ってぇのはどうも正直でいけねえ言っちめえやがった本当。
いやこらぁ昨日そこん所でばったり亀…」。
「お父っつぁんったら同じ事ばっかり言ってらぁ。
お父っつぁん。
おっ母さんに謝っとくれよ。
学校の先生が言ってたよ。
『家族みんなが一緒に暮らせる事が一番いいんだ』って。
私学校の友達にお父っつぁんのこと自慢したいからさまた一緒に暮らしておくれよ。
いいんだろ?お父っつぁん」。
「すまねえ。
お父っつぁんに意気地がねえばっかりに」。
「俺が今更こんな事を言えた義理じゃねえんだろうがここまで亀育ててくれてありがとうよ。
もしお前が許してくれるんだったら昔みてえに親子三人川の字になって寝かしてくんねえかな?このとおりだ」。
「夢かなんか見てるみたいで…お前さんがそんな事言ってくれるなんて…。
亀。
お前がいたからまたお父っつぁんと一緒に暮らす事ができるんだよ。
子は鎹ですね」。
「私鎹なの〜?だからおっ母さん玄翁でぶつって言ったんだ」。
(拍手)2017/02/06(月) 15:00〜15:30
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日本の話芸 三遊亭歌之介 落語「子別れ」[解][字][再]
三遊亭歌之介▽落語「子別れ」▽第690回東京落語会
詳細情報
番組内容
三遊亭歌之介▽落語「子別れ」▽第690回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭歌之介