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字幕書き起こし クローズアップ現代+「我が町のレガシー?お荷物?〜モダニズム建築 騒動記〜」 2016.11.08

住宅街にこつ然と現れた十字架。
実は話題の建物なんです。
巨大カタツムリのようなこの有名な建物にも関心が高まっています。
いずれもモダニズム建築と呼ばれる建物なんですね。
今高度経済成長期に日本中に作られたユニークな建築が世界から熱い視線を浴びています。
7月にはとうとうこのモダニズム建築が世界遺産の栄冠を勝ち取りました。
ところが今こうした建物の取り壊しが各地で始まっています。
海外からは思わず非難の声も。
日本が誇る財産のはずなのになぜ?今日は各地で勃発するユニークな建物を巡る騒動のお話です。
こうした数々の個性的な建築。
日本のモダニズム建築と呼ばれる建物です。
有名なものですとこちら国立代々木競技場。
丹下健三による名建築ですよね。
そして観覧車のような不思議な建物。
宮崎県にある旧都城市民会館。
更にロボットの頭のようにも見えますが日光市にある今市文化会館などです。
日本のモダニズム建築は主に1950年代から70年代高度経済成長期に作られたものです。
従来の建築様式にとらわれない独創的なデザインが特徴で国内に2,000以上あるといわれています。
日本ではあまり知られていないんですけれども世界では日本のモダニズム建築が高く評価されているんです。
ところが近年こうした建物の老朽化が進み保存か解体かを巡ってさまざまな議論が巻き起こっています。

 

 

 

 


東京・銀座。
今世界中から観光客がひっきりなしに訪れる建物があります。
外国人を中心に熱狂的なファンが目指す先にあるものは?何やら子どもが積み上げたブロックみたいな…実は海外のドラマや映画にも頻繁に登場する有名な建築です。
積み重なったカプセルのような部屋は丸ごと自在に組み替えられる設計になっているそうです。
更に若者たちが見学に殺到するというカプセルの中身とは…。
へえ〜。
おお〜。
そこにあるのは半世紀前の日本人を夢中にさせた未来。
広さ四畳半の空間にカラーテレビや録音デッキなど1970年代当時の最新機器がぎっしり詰まっています。
発売当時のキャッチコピーはエリートたちの夢の隠れ家でした。
(取材者)こんにちは。
こんにちは。
(取材者)よろしくお願いします。
熱烈に希望して最近移り住んできたデザイナーの男性です。
建物の写真を一目見てそのエネルギーのとりこになりました。
しかし建設から半世紀。
カプセルの多くは老朽化し実は8割が使われていません。
屋根が腐食して入り込んだ雨で天井が崩落したカプセル。
更にカプセルを建物に固定している箇所も劣化が激しく放置すれば部屋ごと落下する危険性さえ指摘されています。
2年前に行った耐震診断では現在の耐震基準を満たさないという結果が出ました。
建物を取り壊すべきという意見も出る中このまま残してほしいという根強い声にオーナーは戸惑っています。
モダニズム建築が広がったのは東京五輪を成功させ日本が自信を取り戻し始めた高度経済成長の時代。
焼け野原に次々建物が建ち暮らしが豊かになっていく中人々は建築に未来への夢を託しました。
このころ丹下健三をはじめとする若き気鋭の建築家たちが続々登場。
常識にとらわれない見た事もない建物を競って生み出し世界を驚かせました。
そうして日本各地に広がったモダニズム建築。
しかし現在次々と取り壊しが進んでいます。
高松市に取り壊し問題に揺れる名建築があります。
丹下健三がデザインした体育館。
宙に浮いた船のような斬新な形です。
世界遺産の選定に影響力を持つ国際団体も視察しその独創性を高く評価しました。
しかし4年前に県が改修を検討したところワイヤーでつる特殊な工法で作られた屋根の補修が極めて難しいと分かりました。
改修に必要な費用はおよそ16億円。
当初の想定を大きく上回りました。
結局県はやむなく改修を断念。
取り壊しにも保存にも踏み切れない状態が続いています。
保存か解体かでだいぶ揺れているようでしたけれども津田さんこうした事態はご存じでしたか?ツイッターはですね建築家とか建築好きの人が交流とか情報交換してて何か建築クラスターなんていわれてるんですけれども結構彼らは発信力があって例えばVTRに出てきた「中銀カプセルタワーで新しい入居者募集したよ」とかこの「香川のこの問題どうするんだ?」とかですねそういう事がかなり定期的にあがってきて結構反響もあるんですよね。
そういうのもあって僕も知っていましたね。
そうなんですね。
今まさに世界で高く評価されているこの日本のモダニズム建築なんですがどうしてなんでしょうか?世界でもまれな完成度と独創性だと思います。
完成度と独創性。
日本は明治という時代にヨーロッパの建築を輸入していつか世界の水準に並ぼうという事を夢みてきた訳ですけどそれが敗戦でゼロになってそこからはい上がるっていう。
その課題の中で例えばさっきの丹下さんの代々木体育館などはオリンピックの会場ですから世界中が注目する訳です。
その会場としてこれはもう最高のものを作りたい。
最高のものを作らなければもう後がないという切実さがあったんじゃないでしょうか。
それがすばらしい完成度につながってるんじゃないかと思いますよね。
でも日本ではあまり知られていないというのは何でなんでしょう?やっぱり歴史が浅い。
モダニズムの建物というのは大体50年代から70年代のものでまだ歴史が浅いという事。
まあそれと関連してモダニズムってどう楽しんでいいかというのがちょっと分かりにくい。
どう楽しめばいいのかなってみんなが悩んでるような感じがします。
なるほど。
一方で気になるのが安全性の問題ですよね。
NHKのアンケートでも不安を訴えるという声は非常に多く寄せられています。
保存か解体かを考える上で避けられないのがやはり耐震性ですよね。
不動産業界とか建築業界の人に取材するとこれモダニズム建築に限らず高度経済成長期に建てられた建物が今もうマンションとかも含めて一斉に大幅改修もしくは建て直しという時期に来ているそうなんですね。
例えばそれも建ててから10年ごとにこまめに補修とか改修をしておけば結構長もちするらしいんですけれども建物ってこういったモダニズム建築ってアート作品みたいなところもあって建築家に著作権もあるんですよね。
そうするとモダニズム建築の場合建物の形が変わっちゃうのは大幅改修とかがやりたくてもこれ建築家に拒否されるというそういった事例なんかもあってなかなか手が入れづらいというような事も聞いた事があるのでそれが改修コストを結果として上げてるとこもあるのかなと思いますね。
米山さん実際モダニズム建築というのは改修が難しい面というのもやはりあるんでしょうか?モダニズムの非常に重要な理念として機能主義というのがあるんですね。
これはつまり機能とか構造とかいった建築の骨格が前面に出るという事なんですけど。
これ逆に言いますと部分的に補修するというのは難しい。
どこかだけを直したいっていうのはなかなかできずに結局は全面改修になるっていうケースが多い。
それが保存あるいは改修を困難にしている理由の一つだと思います。
費用もかかってしまうという事ですよね。
一例として熊本県の宇土市役所があるんですけれども熊本地震で大きく崩れまして衝撃的な映像でしたけれどもこれもモダニズム建築なんですよね。
(米山)その範ちゅうに入りますよね。
あの建物の場合は修理を予定していたんですよね。
ところが実際に修理をする前に地震に見舞われて壊れてしまったという事で。
実際のところそういうモダニズムは予断を許さないという事ですね。
直ちに修理をしなきゃいけないものがあるという事は事実だと思います。
はい。
今まさに次々と解体されていっている建物もある訳ですよね。
そうですね。
私たちの身の回りはモダニズム建築であふれてるんです実はですね。
そういったものって専門家が評価するんじゃなくてやっぱり自分でいいなと思ったらそれを埋もれさせないでどんどん評価するとか広めていくっていう事を普通の人がみんなでやってほしいと思います。
それがモダニズム建築の保存につながる事。
埋もれさせないって事です。
そういう意味ではネットは非常に可能性はあると思いますね。
広められる。
今まさに我が町のモダニズム建築をなんとか残したいとさまざまな模索が始まっています。
取り壊しが迫った建物をコスト削減の工夫で守った例があります。
愛媛県鬼北町。
築60年の庁舎です。
会議場の屋根は当時最先端だった柱を使わない特殊な構造。
壁一面の色ガラスは庁舎とは思えない鮮やかさです。
モダンなデザインが人気を呼び町民がスポーツなどで気軽に集える場所として長年親しまれてきました。
11年前この庁舎は耐震診断の結果を受け大規模な補強工事を迫られました。
しかし当初の計画は庁舎の外壁に筋交いを加える方法で費用は5億6,000万円。
町の年間予算の1割近いばく大な金額でした。
町の人に愛されてきた庁舎。
なんとか補強費用を抑える事はできないか。
町は外壁を補強する当初の案ではなく屋内の壁を厚くする代案を検討。
そうすれば工期は大幅に短縮し予算も抑えられる見込みでした。
しかしそうすると改修中は庁舎内で業務ができなくなるという大問題が持ち上がりました。
それでも町は庁舎の向かいのスーパーに役場を臨時移転し工事を決行。
その結果改修コストを2億円近く抑える事に成功したのです。
使われなくなった建物を全く新しい用途で生かそうとする試みも始まっています。
鳥取県倉吉市の…国内に残る最も古い円形校舎ですが11年前から使われなくなり取り壊しの危機にさらされてきました。
特徴はらせん階段を取り囲むように配置された教室。
廊下を作らずに済み大勢の利用者を受け入れられる広い空間です。
ベビーブームの時代児童の増加に備えて全国各地に建てられた円形校舎。
田舎町に突如現れた近未来的な建物に子どもたちは胸を弾ませました。
3億円以上かかるという校舎の再生に挑もうとしています。
稲嶋さんは地元のアニメメーカー社長赤井さんに相談を持ち掛けました。
著名な漫画家を輩出しアニメ産業で全国に知られる鳥取県。
その強みを生かせないかと考えたのです。
赤井社長のひと言が大きなヒントになりました。
アドバイスを受けた稲嶋さんが向かった先そこは国内最大のフィギュアの祭典でした。
年間300億円の市場規模を誇るフィギュア業界。
円形校舎をフィギュアの博物館にすればその収益で校舎を維持できるかもしれない。
稲嶋さんなんとか集客につながるヒントを見つけようと懸命に情報を収集します。
果たしてフィギュア博物館というとっぴな構想は地元に受け入れられるのか。
この日稲嶋さんは地域の人たちにアイデアを説明する事にしました。
ところが全く耳慣れない計画に住民からは不安の声が上がりました。
新事業の収支計算は透明性をもって行い地域に迷惑をかけない。
稲嶋さんは地元のシンボルを守る覚悟を繰り返し訴えました。
(拍手)ご覧頂いた円形校舎のフィギュア博物館ですがその後地元の人や企業から2,000万円以上の資金が集まりまして改修に向けた第一歩が始まっているという事なんですね。
津田さんどうご覧になりました?やっぱりこのモダニズム建築という伝統あるカルチャーとアニメという新しいカルチャーで掛け合わせる事で新たな価値を作るという意味ではすごくいいと思うんですがただ新しいものってどうしても拒否反応があるんですよね。
住民の方がどう考えるかというとこでこれ全国で今花盛りの地域アートプロジェクトなんかでも起きている事で例えば成功している大地の芸術祭とかって住民への説明会2,000回以上やって10年ぐらいやって定着してきたって事があるので。
多分これ本当に主催者の方がどれだけビジョンを持って丁寧に住民とコミュニケーションできるかという事が鍵かなとも思います。
長いスパンで見ていく必要もありそうですよね。
こうしたモダニズム建築が再生したケースというのはほかにもあるんでしょうか?例えば自由学園明日館というアメリカのフランク・ロイド・ライトの設計ですけどもともと学校として建てられたものですけれども今は結婚式場として積極的に使われています。
それから比較的多いのは邸宅を美術館にするケースですね。
原美術館あるいは東京都庭園美術館といったものが挙げられますよね。
用途を変えて再生する。
(米山)そうですね。
それすごく有効だと思います。
私はモダニズムというのは使い手が価値を生み出すものだと思っています。
それまでの歴史的な様式建築というのはどちらかと言うと作り手が上位にいて完成したものをさあ大事に使って下さいという感じだったと思うんですけどモダニズムは機能が大事で使う事によってその建物の価値が初めて生きる。
要するに機械が使い手によって機能するのと同じようにやっぱり住み手がいて建物の価値を生み出していくっていう。
それが大事だと思うので今後やっぱり使いにくくなったらこうすれば残せるんじゃないかという事があれば積極的にそういうのを話し合ってどんどん自由にアレンジしちゃって僕はいいと思います。
(津田)僕も使い手が重要だと思ってましてやっぱりそれって使い手の記憶が宿っているって事だと思うんですね建物に。
それを住民が意識した上でこれ残すのか取り壊すのかを決めるって事が重要で。
ただ一つだけ確実に言えるのは取り壊してしまう。
拙速にもうコストがかかるから取り壊してしまうと元に戻せないって事なんですよね。
例えばあの原爆ドームなんてあれも残すか残さないか戦後議論あったんですけど永久保存決まったのって1966年。
そこまで結構いろんな議論があった上で残そうっていう事を決めたのでその意味で言うと旧香川県のいわゆる県立体育館のようにですねペンディングしておくととりあえず。
ペンディングした時に住民がこの建物に宿ってる我々の記憶って何だっけ?これってやっぱどうしても残したいものかっていう事をやっぱりちゃんと意識して議論して長い間決めてじゃあ残そうじゃあ壊そうっていう事を決めるのが大事。
今は昔と違って税金だけじゃなくてクラウドファンディングみたいにネットで集める事もできるようになりましたからそういう事も含めて何か向き合う事が大事かなと思いますね住民の方が。
形にとらわれずに誰がどう使っていくのか。
私たち自身が考えていく必要がありそうですね。
五輪のレガシーをどう残すのかっていうケーススタディーになると思いますねこれ考える事は。
米山さんと津田さんにお話伺いました。
ありがとうございました。
こんばんは相葉雅紀です。
2016/11/08(火) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「我が町のレガシー?お荷物?〜モダニズム建築 騒動記〜」[字]

高度成長期に全国で作られた奇抜な「モダニズム建築」が今、世界遺産に認定されるなど注目を集めている。一方で進む老朽化の危機。保存か解体か、揺れる現場に密着する。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】ジャーナリスト…津田大介,建築史家・江戸東京博物館研究員…米山勇,【キャスター】小郷知子
出演者
【ゲスト】ジャーナリスト…津田大介,建築史家・江戸東京博物館研究員…米山勇,【キャスター】小郷知子