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字幕書き起こし サイエンスZERO「遺伝子解析でサンゴを救え!」 2017.02.19

去年8月衝撃的なニュースが沖縄から飛び込んできました。
日本最大のサンゴ礁が瀕死の状態にあるというのです。
水中に潜ると真っ白になったサンゴが目立ちます。
白化と呼ばれる現象です。
こうして白くなったサンゴは…今年1月には…原因は…去年3月には世界最大のサンゴ礁オーストラリアのグレートバリアリーフでも大規模な白化が起きました。
こうしたサンゴを救おうと今世界中の研究者たちが急ピッチでhttp://blog.hatena.ne.jp/shigotogirai/kakiokoshi.hatenablog.com/edit#source研究を進めています。
その決め手になるのがサンゴの…研究によって高温に耐えられる遺伝子がある事が分かりサンゴ礁復活への道も見えてきました。
一体どのようにサンゴを救うのか。
最新報告です!いやサンゴが真っ白になっちゃってましたね。
それが沖縄とオーストラリアで起きてるって事で。
これ大きなニュースになったんですがとっても心配ですよね。
そうですよね。
瀕死状態って事ですもんね。
さあ後ろにですねサンゴ礁の映像が出てきました。
おお〜きれいですね。
きれいですね。
でこのサンゴが無くなると大変な事が起きるんですが一体どうなるでしょうか?う〜んこの魚たちが隠れる場所が無くなってしまうとか。
そうなんですよ。
そんなに多くいるんですか。
そうなんですね。
いやそしたらサンゴ礁が無くなってしまったらその生物たち危険になっちゃいますよね。
これが無くなると台風や高波の影響を沿岸部が直撃してしまうという事で大変危険性が増してしまうんですね。
そういう重要な役割もあるんですね。

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だけどどうしてああやってサンゴが白化してしまうんですか?一番の原因は海水温の上昇だといわれています。
海水温の上昇?沖縄県。
石垣島と西表島の間に日本最大のサンゴ礁が広がっています。
石西礁湖と呼ばれるこのサンゴ礁は面積がおよそ400平方km。
琵琶湖の半分ほどの広さです。
これは去年7月に撮影されたサンゴ礁の写真。
特に異常は見当たりません。
同じ場所を8月に撮影したのがこちら。
え〜全然違う。
サンゴの色が白く変わっています。
白化現象です。
実はこれ栄養がとれなくなって瀕死の状態なのです。
サンゴはほとんど動きませんがこれでも立派な動物。
そのため栄養が欠かせません。
これがサンゴの食事の様子です。
触手を出して水中のプランクトンなどを捕らえて栄養をとっていますがこれだけでは十分な栄養がとれません。
実は…サンゴ礁を見るとほとんどのサンゴは茶色や褐色に見えます。
この色はサンゴの色ではなくその生物の色です。
正体は褐虫藻と呼ばれる植物プランクトン。
これがサンゴの主な栄養源になっているのです。
ところが褐虫藻は…水温の高い状態に置いたサンゴをよく見ると…。
茶色い塊が出ていきました。
褐虫藻がサンゴから出ていくところを捉えた瞬間です。
こうして褐虫藻が抜けるとサンゴの骨格である石灰の白い色が目立つようになります。
これが白化の正体。
白化しただけではサンゴは死んでいませんが…石西礁湖のサンゴに最適な水温は25〜28℃といわれています。
しかし去年の8月の水温はなんと31℃!水温が高い状態が続いたために大規模な白化が起きてしまったのです。
あの褐虫藻がいなくなってしまったからああやって真っ白になっちゃったんですね。
そうなんですね。
さあここからは詳しく専門家に伺いましょう。
長年沖縄のサンゴを研究している波利井佐紀さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
去年大規模な白化が起きてしまっていましたけどこういう現象っていうのは今回初めてなんですか?いえ初めて沖縄で大規模な白化が起こったのは1998年の事です。
以前もあったんですね。
そのあと2007年また昨年と続いています。
それって9年周期みたいな感じなんですがこれって…はい関係しています。
ちょっと石西礁湖の水温のグラフを見てみましょうか。
これが2015年なんですけれども。
あっ確かに30℃超えてる時期もありますけど何か8月にガクンと下がってますね。
ここは何があったんですか?ここに…あっ台風。
台風が来ると5℃ぐらい下がるんですか?そうですね。
水温がかき混ざって下がるんですね。
ああそうなんだ。
じゃあ次に2016年を見てみましょうか。
あ〜何か30℃超えてる時期が。
ねえいっちゃってますよね。
多いですよね。
しかも2015年みたいにガクンと下がる部分がないですけど…という事は台風も来なかったって事ですか?全くそのとおりで通常は7月から8月にかけて台風が来るんですけれども昨年の場合は9月まで来なかったんです。
だから30℃を超えるのが続いてたんですね。
だけどどうして水温が上がると褐虫藻は出てってしまうんですか?褐虫藻とサンゴの共生関係はまだ分かってない事が多いんですけれども一つの説として…去年はどれぐらい白化してしまったんですか?え〜もうほぼですね。
そうですね。
水温が下がって元の状態に戻ればまた回復するんですけれどもでも残念ながら今回は…いやそれは深刻ですね。
ですね。
早く元に戻したいですよね。
実は沖縄県ではこのサンゴの再生のためにいろんな取り組みをしているんですね。
でその一つがサンゴの養殖なんですね。
養殖?はい。
沖縄本島中部にある恩納村。
ここでは1998年からサンゴの養殖が行われています。
水槽に入っているのは同じ大きさに分けられたサンゴ。
海中で折れるなどして育たなくなったサンゴを切り分けたものです。
これをマグネシウムなどで作られた土台にくくりつけます。
その後海の中で育てます。
ご覧下さい。
一面に広がっているのが養殖したサンゴです。
きれいに並んでる。
試行錯誤の末に金属の棒の上で育てるとサンゴがよく育つ事が分かりました。
こうしておくだけでサンゴは褐虫藻から栄養をもらい成長していきます。
5年もたつと種によっては直径30cmくらいまで育ちます。
こうしてサンゴ礁復活の手助けをしているのです。
いやサンゴが整然と並んでて初めて見る光景でしたね。
何かこうヒマワリ畑みたいなイメージですよね。
何かきれいでしたね。
はい。
こうやるとやっぱりサンゴは早く再生するんですか?はい。
実は…無性生殖は受精しないでも増えていけるっていう事ですか?そうですね。
はい。
そのとおりです。
そんな事ができるんですね。
はい。
これちょうど…そうですね。
そうすると何かメリットはあるんですか?ただ一方で…じゃあそうなると有性生殖が大事になってくるんですか?そうですね。
ただデメリットとしてはサンゴは年に1回しか産卵をしないのでそういった意味では回数がちょっと少なくなってしまうという事です。
なるほど。
早く増やす事はできないけど重要ですよね。
そうですね。
とても重要だといえます。
となるとサンゴの養殖の場合でも有性生殖をいかに効果的に行うかっていう事が重要になるんですがその鍵を握るのがこちらなんですね。
おっ?遺伝子解析。
はい。
これがですね見ただけじゃ分かんないんですよ。
ああ確かにそうかもしれない。
区別がつかない。
という事で遺伝子解析を使った新しい方法によって遺伝的多様性があるサンゴを再生しようそういった試みが行われているんですね。
沖縄のサンゴ礁を再生させたい。
そんな強い思いで研究をしているのが…新里さんの専門は遺伝子解析です。
ミドリイシ類というサンゴのDNAを抽出。
そこから次世代シーケンサーを使って遺伝子情報を取り出し膨大なデータを解析しました。
こうした方法で2011年にコユビミドリイシというサンゴの全ゲノム解析に成功。
更に新里さんはこのデータを利用してサンゴがクローンかクローンでないかを判別する方法の開発に挑みました。
注目したのは塩基配列と呼ばれるDNAの並びです。
ATGCという4つの記号で表されます。
この部分を見るとTATという塩基配列が10回表れています。
こうした同じ塩基配列が繰り返し表れる場所をマイクロサテライトといいます。

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実はこの繰り返しの回数は個体によって違うためクローンを見分けるのに使えるのです。
新里さんはサンゴのマイクロサテライトを識別する方法を開発しました。
例えばTATというマイクロサテライトの両端にくっつく試薬を作ります。
片方には蛍光物質がついていて光るようになっています。
これを解析するとマイクロサテライトが終わったところで光ります。
この光がピークとしてグラフに表れます。
こうしてマイクロサテライトの長さを測るのです。
これは5体のサンゴのマイクロサテライトを調べた結果です。
一番上と4番目は同じ場所にピークが表れています。
つまりこの2つはクローン。
そして残りの3つは別の個体である事が分かるのです。
新里さんはこの方法で養殖したサンゴの遺伝子を解析しました。
155体調べて見つかった遺伝子型は83。
つまり2つに1つはクローンである事が分かりました。
一方自然に生息する同じ種のサンゴを調べた結果全て遺伝子型が違いました。
自然のサンゴからはクローンは見つからなかったのです。
恩納村では有性生殖がしやすいよう遺伝子型が違うサンゴ同士を近くに植えるようにしています。
タグの番号を見れば遺伝子型が分かります。
隣は…違う番号です。
その近くを見てみると…。
小さな赤ちゃんサンゴがいました。
こうした取り組みを通して少しでも自然に近い遺伝的多様性を持ったサンゴ礁を再生させようとしているのです。
う〜ん。
自然に近いサンゴ礁を再生するためにはやっぱり遺伝子解析っていうのが重要なんですね。
そうなんですね。
さあという事でスタジオにはですねこの研究を行った新里宙也さんにお越し頂いています。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
初めてサンゴの全ゲノム解析したのが2011年。
結構最近でびっくりしたんですけども。
そうですね。
先ほどお話があったようにサンゴというのは地球上の0.2%ぐらいの海域にしかなくてなかなかやっぱりサンプルを採るのが難しいというのがあります。
そういうのもあってなかなかこの研究が進んでこなかったっていう現状があります。
そうなんですね。
しかしゲノムというかDNAにはその生き物を作る全ての遺伝子情報が載っています。
サンゴのゲノムを解読する事でその遺伝子情報を全て手に入れると。
それを用いる事でよりこのサンゴの生物学的研究を推進するために私たちはサンゴの全ゲノム解読に挑みました。
今回のこの全ゲノム解析のデータを使ってクローンを見つけるっていう事で養殖に役立つ訳ですが養殖によってサンゴは復活できそうですか?今養殖という試みも最近始まってきた事ですしこの遺伝子解析技術を導入するというのもまだ始まったばかりの試みですので今後それがいかにどれだけ効果があるのかといった事は今後調べていかなければいけない事だと考えています。
実はですね…白化に強いサンゴですか?はい。
これは2015年の「サイエンス」誌の論文なんですが「Genomicdeterminantsofcoralheattoleranceacrosslatitudes」という事で。
どういう意味ですか?はい。
これはですねサンゴに耐熱性を決定する遺伝子があるという事なんですね。
耐熱性のある遺伝子って事ですか?論文の著者の一人…マッツ博士は世界最大のサンゴ礁グレートバリアリーフが緯度の高い所から低い所まで広がっている事に注目しました。
緯度が高いオルフェウス島は夏の水温が29℃ほど。
一方赤道に近いプリンセス・シャーロット湾は水温が31℃を超える事もあります。
つまり2℃も違います。
どちらにも生息しているハイマツミドリイシというサンゴを比べれば高温に耐えるために必要な遺伝子が見つかるのではないかと考えたのです。
マッツ博士は高温と低温それぞれの場所で育ったハイマツミドリイシを交配させる実験を行いました。
まず低温のオルフェウス島からAとBという2つの個体を採取。
そして高温のプリンセス・シャーロット湾からCとDの2つを採取しました。
更にこれらの個体から卵子と精子を採取します。
これがサンゴの産卵です。
これをさまざまな組み合わせで交配させたのです。
こうして誕生したのが…これを35.5℃の高温状態で飼育し生存率を調べました。
その結果多くの幼生が37時間後には死んでしまいました。
しかし生き延びたものもいたのです。
その一つがDの卵子とCの精子から生まれたもの。
これはどちらも高温のプリンセス・シャーロット湾由来なので想像はできた事です。
興味深いのはCの卵子と低温のオルフェウス島由来のBの精子を交配させたものが生き延びた事。
一方で卵子と精子の組み合わせが逆だと早く死んでいる事が分かります。
研究の結果…なぜ卵子が重要なのか。
マッツ博士は細胞内のミトコンドリアに耐熱性の遺伝子が存在するのではないかと考えています。
ミトコンドリアは細胞の中でエネルギーを作り出している器官です。
独自のDNAを持ちますが…え〜高温地域のサンゴには耐熱性の遺伝子があるんですね。
ですよね。
しかもこれが母親からの遺伝が意外と重要だと。
でミトコンドリアってエネルギーを作り出す器官なのでそれが耐熱性と関係しているのかもしれないですね。
非常に期待しています。
はい。
実はサンゴって意外と環境適応能力があるという事ですかね。
そうですね。
現在のサンゴの祖先は大体2億年ぐらい前から繁栄してきているんですけれどもその2億年の間にはいろいろな環境が大きく変わってしまう機会が何度かあったんですけれどもその度に繁栄していたものが少なくなってその生き残りがまた増えていくという事を繰り返して進化してきています。
いやでもサンゴって身近だと思ってたんですけど意外とまだ知らない事っていっぱいあるんですね。
そうですね。
沖縄の石西礁湖の近くでも最近新しい事実が分かってきたんです。
そんな深い所にもいるんですか?
(波利井)はい。
これは石垣島の名蔵湾という所で8月に撮られた水深30mの写真なんです。

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えっ8月っていう事は浅い所では白化してしまっている状態ですよね。
はい。
全くそのとおりです。
これ写真をよく見て頂きますとエダサンゴがいるんですけれどもこれは浅い所にもいる種類なんですね。
同じ時期に見ますと…へえ〜。
今後はどのように研究が進められていくんですか?そうですね。
まず浅い所から深い所に広い分布を持っているサンゴを調べて更に…新里さんは今後の研究としては。
はい。
サンゴと褐虫藻のそのゲノム情報を使ってですね当然この白化のメカニズムであったりとかあとはこのサンゴと褐虫藻がどうやって共生しているのか。
より詳細に調べていきたいなと考えています。
今日はどうもありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2017/02/19(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「遺伝子解析でサンゴを救え!」[字]

1月、日本最大のサンゴ礁域で91%が白化という衝撃の発表があった。海洋生物の25%の種が生息しており影響が懸念される。サンゴの遺伝子解析など対策の最前線に迫る。

詳細情報
番組内容
1月、日本最大のサンゴ礁域「石西礁湖」で91%が白化、過半数が死んでいるという衝撃の事実が発表された。オーストラリアのグレートバリアリーフ北部でも、90%が白化。サンゴ礁には海洋生物の25%の種が生息しており、生態系に大きな影響が出ると危惧されている。対策として注目されているのが、サンゴの「遺伝子解析」。効率のよいサンゴの養殖方法の開発や、海水温の上昇に耐える遺伝子の発見など、最新研究を伝える。
出演者
【ゲスト】東京大学大気海洋研究所准教授…新里宙也,琉球大学熱帯生物圏研究センター准教授…波利井佐紀,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】土田大