・よいしょ。
あぁ〜。
カランカランカラン…!・おい今何をした?おれのつえを…。
(ミエ)チホ何してるの!?すいません!放しなさい。
チホチホ!
(田口公平)田中チホさんですね。
はじめまして心療内科医の田口です。
つえを投げちゃったって聞いたんだけどどうしてそんなことしちゃったのかな?
(ミエ)チホちゃんと答えなさい。
相手に何か言われた?腹の立つこととか。
(チホ)知らない。
えっ?知らないって言ってんの!どうしてしちゃったのか自分でもわからないっていう意味?もういいの。
おかしいのよ私!そんなことはないよ。
どんな症状にも原因があるんだ。
僕と一緒にゆっくり考えて。
カン!
(ミエ)チホ何してるの?考えたってわかるわけない。
申し訳ありません。
最近急におかしくなってしまって。
気持ちを制御できなくなってるのかな。
最近精神的にダメージを受けるようなことはありませんでしたか?それが何も心当たりは。
心と体のバランスが難しい年ごろですから。
少し時間を掛けて一緒に考えてみましょう。
田口公平先生ですね?ええ。
厚生労働省の者です。
突然で申し訳ありませんが今からご同行願えますか。
厚生労働省?
(白鳥圭輔)ちょっとごめん。
・
(ミドリ)お久しぶりね。
・
(足音)白鳥さん。
やっぱり君か。
わざわざグッチー連行して何聞こうっていうの?・
(ドアの開閉音)失礼します。
・
(ドアの開閉音)
(赤城)厚生労働省の赤城と申します。
田口です。
僕なぜ呼ばれたんでしょう?ラ・ボヌールのチーズケーキです。
田口先生お好きだとか。
まあどうぞ。
すいませんお気遣いいただいて。
バチスタ事件では先生ご活躍でしたねぇ。
いえ僕は全然。
厚生労働省としても事件を一度リポートにまとめたいと思いましてね。
それなら白鳥さんがすべてご存じですが。
ふふっ。
白鳥のような厚労省内部の人間ではなく東城医大の当事者の声を入れたリポートにいたしませんと。
なるほど。
せっかくですからどうぞ。
あっ…ではいただきます。
そこで是非お話を伺いたいんです。
白鳥とコンビを組んでいらした田口先生あなたから。
あぁ…。
はぁ〜。
内部監査室が何たくらんでんのかわかんないけどグッチーから話聞いたって僕が出した報告書と内容は違わないよ。
そうかしら。
だってず〜っと一緒に行動してたんだから。
いいコンビだったんだよ〜僕とグッチーは。
コンビ?いえとんでもない。
もう最高に息も合ってたし。
相性がいいとはとても。
付いていけないところが多くて。
僕がアクティヴ・フェーズ調査で相手を攻撃して動揺させる。
そこに受動的なパッシヴ・フェーズを操るグッチーが現れて話を聞き出す。
悪人キャラと善人キャラ。
まあいってみれば北風と太陽みたいな。
最高のバランスでしょう。
と白鳥さんは言ってましたけど僕にはアクティヴ・フェーズもパッシヴ・フェーズもいまひとつ理解できませんでした。
で監査室の狙いは何?バチスタ事件でのあなたの強引な行動が問題になってるの。
ははっ。
あなたの行動が事件を大きくし市民と医療従事者双方に多大な不安を与えたんじゃないかってね。
あぁ〜それ本気で言ってんの?私は上の指示に従ってるだけ。
あなた第三者機関の準備から外されるかもね。
あぁ〜そういうこと。
目的は医療関連死の調査委員会つぶしか。
すべては田口先生の証言次第かしらねぇ。
バン!カタッカタカタ…ちっ。
田口先生の尋問が終わるまでここを出すなって指令よ。
あなた終わりかもね白鳥さん。
あっそう。
そういうことなら僕も聞いてみたいもんだね。
グッチーが僕についてどんな証言をしてくれんのかを。
何を話せばいいんでしょう。
バチスタスキャンダルに関することでしたら何でも。
今後の医療行政のため二度と不幸を繰り返さないためです。
わかりました。
僕が白鳥さんと初めて会ったのは桐生先生率いるチーム・バチスタで3例目の術死が起きた後でした。
(鳴海)切除範囲は側壁に一部かかってる。
トップはD−1ボトムはOMから2mm。
(桐生恭一)OKゴー。
人工心肺の装着。
鑷子3−0。
(直美)はい。
下大静脈遮断解除。
ポンプオン。
(羽場)はい。
(氷室)換気停止します。
大動脈遮断鉗子。
(直美)はい。
フローダウン。
(羽場)フローダウンしました。
(ナレーション)
バチスタ手術とは拡張型心筋症の一部を切り取って小さく作り直す手術。
この難易度の高い手術を成功させてきた7人のエリート集団チーム・バチスタ。
しかし突然患者が3例立て続けに死亡するという原因不明の事態が起こり病院長からの依頼でチーム・バチスタの調査が始まった。
(高階)やはり君にも動いてもらったほうが良さそうかな。
でしょうね。
これ医療事故以上の可能性あるし。
ミスなんかじゃない殺人っていう可能性も。
手術室という密室で繰り広げられる連続殺人という可能性もね。
・コンコン!
(ノックの音)どうぞ。
失礼します。
田口先生今日からこの白鳥君も協力してくれるそうです。
協力って…そもそも誰なんですか?この人。
はい名刺。
ここ…厚生労働省?大臣官房秘書課付技官白鳥圭輔でございます。
よろしくね〜グッチー。
こうして白鳥さんと僕はコンビを組むことになりチーム・バチスタのメンバーの調査を開始した。
(垣谷)捜査なんて勝手にやらせとけばいい。
おれたちにはおれたちのやるべき仕事があるはずだ。
桐生先生は偉いね。
よく我慢してる。
彼だけメジャーリーガーでほかは草野球と少年野球だもん。
(酒井)素人に何が…。
人工心肺で循環血流を管理している最中その血液に毒物を注射して患者を殺すことは可能かな?おれたちが患者に毒を盛ったと思ってるのか!可能性を考えればいくらでもありですね。
麻酔医の周りにあるのは毒物ばかりだし。
患者さんが亡くなった原因知りたいんですよね。
えっ?私よ。
3人は私が殺したの。
もしかして怖い?余計なことに気づかれそうで。
おれは…。
大丈夫。
義兄さんは僕が守るから。
あなたは何者かが故意に術死を引き起こしてると思ってるんですか?まあ〜そうですね。
自分の言ってることがわかってるのか!それは殺人ってことだぞ!そうだよ桐生先生。
これは殺人だ。
「術死は続くこれからも。
これは完璧に仕組まれた犯罪である」。
こんなもの来ちゃったんだからさグッチーもそろそろ腹くくらないとね。
えっ?殺人事件だと思って調べれば医療事故は見逃さない。
でもその逆の場合真実を見落とす可能性がある。
グッチーもこれからは殺人を前提に調べるべきだね。
バラがさぁ…。
バラ?そう。
ガラスケースに入ったバラ。
いつからか知らないけどそこに置かれるようになったんだよ。
バチスタがある日にだけ。
あのバラは確かに殺人予告だと思います。
最初に置いたのは私です。
でも私はそんな意味で置いたんじゃなかった。
私がチームに加わった最初のオペケース27で術死が出て。
私患者さんに申し訳なくて。
(直美)それでせめてもの弔いにって…。
でその後バラはどうなったんですか?翌日には消えてました。
次に置かれたのはケース29。
2人目の術死が出たオペの直前です。
それからケース3031とバチスタで患者さんが亡くなるオペの前にだけあのバラが置かれるようになったんです。
どうしてそのこと黙ってたんですか?言ったら私が疑われるから黙ってたほうがいいって。
誰が?氷室先生です。
はっ…。
氷室先生も気づいていたんです。
あのバラの意味に。
(回想)氷室先生。
大丈夫ですか?麻酔科医はオペ室の奴隷ですよ。
えっ!)
(氷室)いつ0JMhかな。
こんなひとと食べるちゃんとした食事いつ以来だろう。
すげぇうまい。
僕疑われてるんですかね?はい。
これを書いたのはあなたなんじゃないですか?バラの予告とこの怪文書。
どちらもすごくよく似てるって。
僕に隠してることがあるなら全部話していただけませんか?じゃあもし僕が犯人だったらかばってくれるってこと?愚痴外来でお話聞いて理解してくれちゃうってことですか。
先生…。
ムカつくんだよあんたのそういうとこ。
誰でもわかってやれるなんてうぬぼれてんじゃねぇよ。
氷室先生…。
犯人が見つかったら遠慮なく殺しちゃえよそんなやつ。
(直美)緊急オペです。
バチスタの患者さん急に発作が。
どうして…。
田口先生!これだよこれ!このバラ。
どけよ。
桐生先生お願いします。
今日のオペは中止してください。
やらなければ死ぬ。
尖刃。
はい。
心筋切除終了。
縫合終了。
大動脈遮断を解除する。
フローダウン。
(羽場)フローダウンしました。
遮断解除。
バックアップ。
(羽場)バックアップしました。
スワンガンツの位置を調整します。
ペーシングスタート。
(氷室)レート60でペーシングスタート。
(羽場)復温36度です。
ピピピ…ピピピ…
(心電図の音)
(酒井)再鼓動しません。
カウンターショックの準備。
(直美)はい。
くそっ…。
くっそぉ〜。
(垣谷)桐生先生もう無理ですよ。
いやまだだ。
桐生先生。
・無駄だよ。
(警備員)困りますってば。
(鳴海)おい何だよその格好。
出てけよ。
その心臓はもう動かない。
なぜだ?オペは完ぺきだった。
それを今から解明する。
じゃあもう一度開いてもらいましょうかその心臓。
そうすればわかるはずだ。
なぜその心臓が再鼓動しなかったのか。
亡くなった人の心臓を開くことは解剖扱いになる。
家族の許可が必要だ。
だったら僕が許可取ってきますよ。
そんな簡単なもんじゃない。
身内が亡くなったばかりの人…。
簡単じゃなくても許可を取って解剖するんだ!グッチー。
誰もこっから出ていかないように見張ってろ。
全員ですか?当然でしょう。
ここにいる全員が容疑者だからね。
(酒井)吸引します。
何も異常は見られない。
そんなはずはない。
心臓に何の痕跡も残さずに殺すなんてそんなことできるはずが…。
いいかげんにしろよ。
そんなにおれたちを犯人にしたいのか。
白鳥さん!
(垣谷)偉そうにひとの領域にずかずか入りやがって!ここをどこだと思ってるんだ!神聖なオペ室だぞ!縫合しよう。
家族が待っている。
(酒井)はい。
でも遺体が東城医大を出たらアウトだよ。
家族に返されて焼かれたらまた何も見つけられずに終わる。
その前に何とか調べる方法はないんでしょうか?こうなったら解剖して全身くまなく調べたいとこだけど家族が了承しないだろうなぁ。
家族を亡くされたうえに今度は解剖なんて。
これ以上ご遺体を傷つけたくはないですよね。
でもこのままじゃこのままじゃだめなんです。
何かないんですか?ご遺体に傷を付けずに調べる方法。
白鳥さん。
遺体を傷つけずに遺体の中を調べる方法か。
はぁ…やっぱり無理ですよね。
そんな都合のいい…。
あるよ。
えっ?傷を付けずに中を調べる方法。
ほんとですか?ふっ。
日本じゃあんまりやってないけど確かにある。
えぇ〜そのご遺体を少しの間お借りしたいんですけどね。
どうするんだ。
Aiっていう検査をします。
Ai?聞いたことありませんよそんな検査。
オートプシー・イメージング。
略してAi。
死亡時画像病理診断のこと。
まあ日本じゃまれな方法だけどね。
遺体を画像で診断して死因を調べるんだよ。
これなら解剖しなくても異常があれば発見できる。
遺体をMRIに入れるっていうのか。
解剖より簡単だし遺体を傷つけることもない。
遺族の了承ももらってきた。
放射線科が受け入れると思えない。
ですね。
技師長は絶対うんと言いませんよ。
それなら大丈夫だ。
病院長が許可してくれたよ。
僕たちは共犯者だよ〜グッチー。
(黒崎)切り方を変えたってないものは見つからんよ。
ショートアクシス。
(曳地)ショート。
ストップ!ここ。
ここズーム。
これは…何だ?これは亡くなった蔵田さんの心臓をMRIのショートアクシスで撮影したものだ。
右心房のここ。
ここに白い部分が出来ている。
これは?位置を下げて写すと…。
ここに。
更に下にいくと…。
こことここ。
ここにも。
この白い部分を立体的に並べてつなぎ合わせるとどうなるか。
ある1つのラインが出来上がる。
このライン何かを思い出しませんか?スワンガンツカテーテル。
そのとおり。
スワンガンツカテーテルが通るラインだ。
心機能を測定するためのスワンガンツは右心房右心室心臓の右側に通される。
一方バチスタは左心室の一部を切って小さく作り直すオペだ。
だからさっき心臓を開いて中を見ても何も異常が見つからなかった。
グッチーちょっとあのスワンガンツ持ってきて。
はい。
これは今回のオペで使われたスワンガンツカテーテルだ。
スワンガンツカテーテルには電極が数か所付いている。
犯人はこのスワンガンツがつながるジェネレーターを改造したんだ。
そして電極から心臓内部へ通常の何十倍もの電流を流す。
自力で収縮する心臓の神経線維を心筋ごと数か所で焼き切る。
そうやって犯人は患者の心臓を止めた。
そいつは全員が見てる中スワンガンツを操りオペ中に操作しても見とがめられない所にいる。
本来心臓はちょっとやけどしただけでは死なない。
でもそいつは知っていたんだ。
心臓のどこを狙えばいいかを。
ピンポイントで攻撃する高い能力と冷静な判断力を兼ね備えた人間。
そんなやつは1人しかいない。
お前だ。
犯人は氷室貢一郎。
お前だよな。
お前が患者の心臓を焼き切ったんだ!スワンガンツの位置を調整します。
レート60でペーシングスタート。
(氷室)ようやくわかったんだ。
いい線までいってたんですけどねぇ先生の推理。
一歩遅かったですね。
なぜこんなことを。
ううっ…。
なぜだ!?行くよ。
答えてください!何でこんなことをしたのかちゃんと答えてください!何でですか?何で5人も殺さなきゃいけなかったんですか?ううっ…。
何で?全員僕がやったなんていつ言いました?えっ?術死は続くこれからも。
犯人はほかにもいる。
その中にね。
こうして氷室先生の犯罪が明らかになったんです。
でも事件はそれだけじゃ終わらなくて。
ちょっと確認よろしいでしょうか。
はい。
白鳥は田口先生たちの再三の制止を無視してオペ室などに強引に立ち入った。
これ間違いありませんね?ええ調査のために。
犯行を見つける決め手となったAiについてですが死因を特定するためにMRIなどの画像診断をすることは東城医大では日常的に行なわれていることですか?いえ。
では放射線科などの反発も当然あったんでしょうね。
それはもう。
でも白鳥は無理に実行した。
解剖せずに調べるにはあれしか方法がなかったので。
そもそもAiを最初に提案したのは誰でしたか?そんなこと考えつくのは白鳥さんしかいませんが。
そりゃ言いだしたのは僕だけどヒントをくれたのはグッチーだったんだよ。
すぐそうやってひとのせいにする。
じゃなくてあれに関してはグッチーのお手柄でもあったって言ってるだけなんだけどねぇ。
Aiは僕らにとって最後の賭けだったんです。
もちろん勝算のない賭けなんてしないけどね。
でも僕1人だったらあそこまでできたかどうか。
珍しいわね。
あなたが他人をそこまで評価するなんて。
僕はいつも相手を冷静に分析して相応の評価を下してます。
まあ残念ながら厚労省には評価に値するような人材がいないだけ。
田口先生って私も見たことがあるけど人の良さだけが売りみたいな人じゃない。
ははははっはははっわかってないんだな〜。
全然わかってないんだね。
じゃあどうして逃げた氷室がグッチーからの電話にだけ出たんだと思う?どうしてあの氷室貢一郎は田口公平にだけ本音を伝えたのか。
やっぱわかんないか。
僕にもわかりません。
でもあのとき氷室先生が語った言葉はうそじゃなかったと思うんです。
先生は死ぬつもりですね?あれは僕にはまねできないぐらいパーフェクトな殺人です。
オペ室だからこそできた完全犯罪。
警察はもちろん何もできないし田口先生や白鳥さんが調べても無駄。
そして…。
そしてまたいつか同じことが起こる。
術死は続くいつまでも。
はぁ…氷室先生…。
救急車を呼んでください!!・はい。
はぁはぁ…。
うっ!はぁ…氷室先生!はぁはぁ…。
nじゃなくて27だったんです。
ケース27。
バチスタで初めて患者さんが亡くなった症例です。
ケース27が緊急オペだったのは知ってるよね。
予定外のオペだったから氷室は直前まで別のオペを担当してたんだって。
だからバチスタの機材一式を準備したのは氷室じゃなくて研修医だったんだってさ。
ケース27で患者を殺したのは氷室じゃない。
真犯人はまだ生きてる。
なぜケース27のビデオだけがない?知らないよそんなこと。
大体何でビデオなんか。
はっきり言えよ!何疑ってんだよ。
お前あの夜どこにいたんだ?氷室が死んだ夜お前ほんとはどこで何をしてた?桐生先生は本当に病院にいたの?ああ。
でどこにいたかわからない鳴海先生がもしかすると氷室を殺したんじゃないかと疑ってるわけだ。
失礼。
いえ。
あれ〜?何か動揺しちゃってます?これが桐生先生の車。
ええ。
グッチー!11月6日21時54分。
氷室が死んだ夜だよ。
桐生先生病院にいたって言ってたのにあの人もうそついてたってことか。
かんぱ〜い!いや〜類は友を呼ぶっていうけどかわいい人のお友達はやっぱりみんなかわいいんだね宮原さん。
(加奈子)みんな看護師仲間なんです。
彼女は市立病院の洋子ちゃん。
(洋子)洋子です。
(加奈子)彼女は磯山医院のみゆきちゃん。
(みゆき)みゆきです。
(加奈子)聖徳クリニックの絵里ちゃんと恵ちゃん。
(絵里・恵)はじめまして。
あっそういえば聖徳クリニックって桐生先生も行ってるとこだよね?
(恵)佐藤先生とお知り合いで時々来てるみたい。
あっ佐藤先生。
そうかそうか。
えっと彼は何科の先生だったかな〜。
(恵)脳神経外科です。
そうだ。
彼は脳神経外科だ。
何が始まるんだよ一体。
今日は全員でもう一度考えてみましょう。
ケース27。
最初の術死が起きたあのオペについて。
みんな思い出してみて。
ケース27を。
大友さんあなたにとっては初めてのバチスタだったんだよね。
はい。
しかも予定外の緊急オペだった。
そのせいで鳴海先生はオペに間に合わなかった。
だから?いつもはすぐそばにいる鳴海先生なしでオペが始まってしまった。
(直美)よろしくお4jいします。
(羽場)鳴海先生渋滞にはまってて後どれぐらい掛かるか読めないそうです。
(垣谷)酒井先生動脈ラインまだ取れてないの?
(酒井)すいません。
脈圧が低くて。
氷室先生患者の状態は?
(氷室)尿が出にくくなってますこの状態が続くと危険ですね。
桐生先生鳴海先生待ってる余裕ありませんよ。
心筋切除に入る。
LADここですね。
尖刃。
(鳴海)遅れてごめん。
変性部位は取りきれてる。
心筋を縫合する。
XO。
(直美)はい。
(酒井)再鼓動しません。
(羽場)3分経過しました。
カウンターショックの準備。
(看護師)はい。
DC10Jチャージ。
10Jチャージ。
オン。
(酒井)だめです6M@8@h@8。
(羽場)外に連れ出して!
(看護師)はい。
大友さんしっかりして。
残念だったね。
でもオペはパーフェクトだったよ。
義兄さん。
パーフェクトねぇ〜。
違ったんじゃないの?ほんとは。
桐生先生は重大なミスを犯した。
緊急オペ初めての器械出し第二助手は動脈ライン取るのにてこずってた。
しかも鳴海先生もいない。
ケース27はそういう状況の中で起きたあなたの医療ミスじゃなかったんですか桐生先生。
グッチーお代わりちょうだい。
はい。
私にもくれ。
もう置いてありますよ桐生先生。
2杯目のコーヒーはあなたのすぐ横に。
前にも同じようなことありましたよね。
失礼。
いえ。
聖徳クリニック脳神経外科。
氷室が死んだ夜あなたが行ってた病院だ。
それを隠すために鳴海先生と2人で一緒に病院にいたってうそのアリバイ言ってたけど2人共バレちゃいましたね。
桐生先生。
あなたの目はもうオペをできるような目じゃない。
脳の下垂体に腫瘍が出来ている。
その腫瘍が視神経を圧迫し両耳側半盲を起こしてる。
両目共外側半分は見えない。
私に残された外科医としての時間は長くはない。
1人でも多くバチスタで救えればと思った。
そして涼が私の目になってくれた。
白い闇が訪れても涼の声が私の緊張を和らげ闇を晴らしてくれる。
パーフェクトなチームが出来たはずだった。
涼の目と私の手。
事実26例目まではすべて成功した。
だが27例目に術死は起きた。
あなたが目の秘密を隠したままオペをやったからだ。
じゃあほかにどんな方法があったっていうんだ。
サザンクロス病院にいた間何人もの日本人の子供たちが心臓移植を受けるために渡米してきた。
言葉もわからない海外で移植するしかないあの子たちを1人でも多く救いたい。
そう思って日本に帰ってきたことが間違いだったのか。
いいえ。
でもね桐生先生どんな思いでやったオペだろうがあなたがミスを犯したってことには変わらないんだよ。
ほんとにミスはなかったんですか?だからなかったって言ってるだろ!29人だぞ!日本に帰ってきてバチスタで救った命の数だ。
義兄さんが目のことを隠してオペを続けたから死なずに済んだ命の数だ!
(鳴海)まだまだやれるんだよおれたちは。
おれの目とこの人の腕があれば!完ぺきなオペできてたろ!?それに誰も義兄さんの目に気づいてはなかったんだ!29人の患者さんを救えたことはほんとに良かったと思います。
でも…でもお2人はもっと大きな罪を犯した。
知ってたんですよ桐生先生。
チーム・バチスタの全員が…知ってたんですよあなたの目のことを。
垣谷先生。
前回のオペで鑷子を落としましたよね。
あぁごめん拾っといて。
(看護師)あっはい。
(垣谷)すいません6M@8@h@8|!何かちょっと最近腰の調子が…。
あれわざとですよね。
大友さんあなたは…あなたはいつから気づいていたんですか?
(直美)桐生先生もしかして目が悪いんじゃ。
知ってたんですか?みんな知ってる。
大友さん以外のバチスタメンバーはみんな知ってることだ。
バチスタで救えるはずの命が救えなくなる。
で結局大友さんも沈黙を選んだわけだ。
ねえ桐生先生。
どうして今ここに酒井先生がいないんだと思います?自首したんですよ警察に。
(垣谷)警察?何で。
氷室を殺したから。
どういうことですかそれ。
酒井先生が殺人!?口止めのつもりだったんじゃないの?桐生先生の目のことをしゃべらせないように。
警察や厚労省がこのこと知ったら桐生先生おしまいだからね。
前に氷室先生が言ってました。
桐生先生を尊敬してるって。
擦り切れそうな毎日の中で唯一誇りに思っていたチームで隠ぺいが行なわれた。
そこから氷室先生の何かが壊れたんじゃないでしょうか。
だから彼はあえてこのチームのオペで殺人を犯した。
(氷室)思い過ごしかもしれませんけど桐生先生目が…。
必要ないだろ報告は。
難しいバチスタで今まで全部成功だったほうが不自然なぐらいだ。
こんな日もあるよ。
オペ室で患者を死なせてもその理由を誰も知ろうとしない。
誰も何も語らない。
完全な密室殺人ですね。
殺人って…。
ミスで人を死なせだんまりを決め込むのと故意に殺すのと…。
どんな違いがあるんですかね?桐生先生がご自分の病状を話し術死の原因を究明していたら連続殺人なんて起きなかったかもしれない。
そして酒井も氷室先生を殺さずに済んだかも。
桐生先生あなたの目の秘密はこれだけの罪を引き起こしたんだよ。
自分なら患者を救える。
目の障害を隠してでもやれるところまでオペをする。
一見使命感にあふれたすごい医者に見えるけどそんなものは桐生恭一という外科医のエゴだ!メスを持つ資格を失ったことを自覚しながらメスを置けない外科医。
オペに直面すると手が震えてしまう臆病者のくせに外科医への未練を断ち切れない病理医!自分たちでは幕を引けない中途半端な義兄弟を必死で守ろうとした自分たちの立場を守ろうとしたチーム全員!事実を隠ぺいして栄光にすがろうとしたチーム・バチスタのメンバー全員が5人もの患者を死なせたんだ!どこ行くんですか?すべてを病院長に報告する。
ケース27の術死の原因は私のミスだ。
ほかの先生たちは何も気づいていなかった。
あぁ!?ちょっと何それ。
彼らが気づいていたという証拠は何もない。
これは執刀医である私1人の罪だ。
桐生先生!ほかにも方法はあったと思います。
目のことを隠してオペする以外にも桐生先生が患者さんを救う方法は。
先生の技術をほかの医師に伝える。
桐生先生ならそれができたはずです。
天才じゃなくても優秀な外科医はたくさんいます。
先生は彼らに自分の技術を伝えるべきだったんじゃないですか。
1人の天才より同じオペができる外科医が10人増えることのほうが患者さんにとっては救いです。
私はもうオペはしない。
執刀医は垣谷先生にお願いしたい。
あった。
やっぱり。
白鳥さん!サザンクロス病院です。
やるねグッチーそのとおりだよ。
すべてはサザンクロスから始まってたんだ。
(直美)垣谷先生。
遅れてすまなかった。
桐生先生僕らはあなたに謝らないといけない。
まるであなたが患者さんを殺したみたいに言っちゃいましたけどあれは間違いでした。
どういうことだ。
ある人物があなたの目を利用してミスを誘発させた可能性があります。
犯人はあそこにいますよ。
(垣谷)心筋切除に入る。
尖刀。
(直美)はい。
桐生先生これを見ていただけますか。
ケース27の映像です。
こうやって並べると気づきませんか?ケース27ではなぜかこのオレンジのターニケットが特別に長い。
このターニケットって心臓をつり上げておくためのものですよね。
ああ。
心拍動下冠動脈バイパス手術のときに心臓の下の部分の心膜を糸で引っ張って心臓を持ち上げる。
ほかの全ケースのビデオとも比べたんですけどねターニケットの長さはどれも大体これぐらいだった。
それなのにケース27だけがこんなに長い。
これってどういう意味ですかね?桐生先生。
それだけ心臓を大きくつり上げていたということになる。
大きくつり上げていた。
するとそれに伴って心臓は回転して通常見えている部分とは違う部分が表になる。
ですよね。
視野狭窄のあるあなたの目ではオペ中実際に見えている範囲はひどく狭い。
だからあなたは必要以上に回転していた心臓に気づかずに。
LADからHL枝の間を切るつもりがHLからPL枝の間を切ってしまった。
そして患者の心臓は再鼓動しなかった。
はぁ〜。
ねえ桐生先生どうしてこの心臓は必要以上につり上げられていたんでしょうね。
混乱した緊急オペの中で生じたミスだろう。
ミスじゃなかったとしたら?これは全部誰かがわざと引き起こしたことかもしれない。
何のためにそんなことを。
桐生先生10年前どちらにいらっしゃいましたか。
サザンクロス病院ですよね。
先生は10年前ある日本人の女の子の心臓移植手術をされています。
その子の名前が…ここに。
まさか…。
娘をよろしくお願いします!
(英語)移植手術はうまくいきましたがその子は後日拒絶反応で亡くなった。
それが垣谷先生のお嬢さんだったんです。
なんてことだ…。
皮肉な巡り合わせですよね。
同じ外科医同士…お嬢さんの死が単純に執刀医のせいだとは垣谷先生も考えませんよね。
当然だ。
どんな一流の医師がやってもうまくいかないオペはある。
でも垣谷先生は一流だと思っていた桐生先生と一緒に働くうちにある疑念を持った。
あなたの目だ。
メッツェン。
・はい。
この人は目が悪いんじゃないか?いつから悪かったんだろう?もしかして娘のオペをしたころから?娘が死んだのも実は桐生先生の目が悪かったせいか?そして魔の9月7日を迎えた。
ケース27。
初めての器械出し緊急オペ。
悪い条件が重なってしまったんですよね。
(羽場)鳴海先生渋滞にはまってて後どれぐらい掛かるか読めないそうです。
その瞬間垣谷先生の心に悪魔が舞いおりた。
桐生先生への疑念を確かめるとすればそれは今しかない。
(垣谷)鳴海先生待ってる余裕ありませんよ。
オペの開始を急がせ。
心筋切除に入る。
(垣谷)酒井先生まだ取れないの反対側でトライして早く。
(酒井)はい。
(垣谷)ACT幾つ?
(羽場)はい。
今測定します。
(垣谷)氷室先生ハルンは?
(氷室)時間150出ています。
常に心臓に集中していたみんなの視線をそらす。
そこで出来た空白の3秒間に。
心臓を必要以上につり上げ。
(垣谷)LADここですね。
わざと違う血管を示すことで桐生先生あなたを試した。
そのまま心筋を切除すれば患者は死ぬ。
それがわかっていながら垣谷先生は桐生先生を止めなかった。
ケース27は垣谷先生の未必の故意による殺人だ。
これが僕と田口先生の結論です。
オペ成功おめでとうございます。
垣谷先生1つだけ教えてください。
ケース27で心臓をあそこまでつり上げたのはなぜですか?桐生先生。
ほんとに申し訳ありませんでした。
あなたにミスを起こさせたのは私です。
心臓が再鼓動しなかった瞬間とんでもないことをしてしまったと気づきました。
あれからずっと自分を責めつづけて。
ううっ…垣谷先生。
病院長の所へ行ってきます。
5件の術死のうちケース27については垣谷先生の自供のみでは公判が維持できないと判断され不起訴処分になった。
でも垣谷先生は病院を辞めた。
なるほど。
田口先生あなたはつらい立場にもかかわらず見事に内部調査を果たした。
さすが東城医大。
すばらしい人材をお持ちだ。
いえ僕はただ…。
こうして事件は解決した。
でも田口先生本当にこれで良かったんですかね。
はっ?いろんな人の過去や秘密を暴いて確かに真実はわかった。
だけどそれ一体誰のためになったのかしら。
はあ?今後も何かあれば警察どころか厚労省まで乗り込んでくる。
現場の医療従事者は萎縮するだけよね。
それはしかたないねぇ。
あの手の調査は医学の知識がない人間には無理だから。
患者もますます医療を信じられなくなる。
(赤城)白鳥は加減ってものを知らない。
相手を追い詰めるだけ追い詰めて余計な摩擦を生じさせ現場を混乱させた。
違いますか?でも患者さんやスタッフのために…。
聞きましたよ。
白鳥は調査を続けたいがために2通目の怪文書を偽造したらしいですね。
田口先生あなたもだまされたとか。
それはまあ…。
私ね思うんですよ田口先生。
白鳥は単に犯人捜しのゲームを続けたかっただけなんじゃないかってね。
現場スタッフや患者のためなんてのは単なる口実であいつはただ自己満足のゲームを楽しんでいただけだ。
ひとの秘密を暴くことに快感を覚えていただけ。
田口先生と東城医大は彼のせいで多大な迷惑を被った。
そもそも医療問題は専門家である医療従事者でしか解決できない。
白鳥の進めている第三者による調査委員会自体乱暴な話ですよねぇ。
バン!あなた医療の現場を見たことありますか!?少なくとも白鳥さんは東城医大に自ら入りこんで自分の目で見て耳で聞いて真実を探ろうとした。
こんなふうに机で誰かの話をのんびり聞くんじゃなくて。
真実から目をそむけていたら同じような過ちがきっとまた起きる。
白鳥さんは自ら行動してそれを教えてくれたんです。
どんな痛みを伴っても僕らは真実から逃げちゃいけないんだって。
あぁ…てっきりあなたは白鳥の最大の被害者だと思っていたんですけどねぇ。
確かに白鳥さんのやり方はどうかと思います。
でもあの人がいなければバチスタ事件は終わらなかった。
これは事実です。
了解しました。
グッチーは何だって?バチスタ事件のような不幸を繰り返さないためにも調査委員会は必要。
患者とスタッフ両方にとって救いとなる本当に中立的な機関を作れるのは…白鳥さんあなたしかいないって。
ねぇ〜?いいコンビでしょ?わかりました。
あっケーキどうぞ。
あっでは。
あっ最後にもう1つだけいいですか?はあ…。
・
(ドアの開閉音)あっ。
おぉ〜。
で?今日はうちに何の用だったの?べつに大したことじゃ。
ふ〜ん。
どう?そっちの仕事のほうは。
いつもどおり。
僕はただ話を聞くことしかできなくて。
だよねぇ。
グッチーにはそれしか取り柄ないもんね。
白鳥さんそういう言い方ばかりしてるから嫌われるんですよ。
でも何の取り柄もない人間よりは全然ましか。
パッシヴ・フェーズでしたっけ。
そう。
受動的にひとの話をひたすら聞きつづける。
ですよね。
僕にはそれしかないですもんね。
聞いてきます。
患者さんの話。
うん。
残念だったねぇ〜成果がゼロで。
ゼロ?実はそうでもないんですよ。
はいこれ。
バチスタ調査で必要経費として認められなかった分の領収書。
はあ?田口先生の証言もあります。
あっ最後にもう1つだけいいですか。
はあ…。
(赤城)白鳥が使った合コン代82,950円。
ほかもろもろ飲食代106,820円。
クリーニング代。
これらの経費は調査に必要なものだったと思いますか?いいえ全く思いません。
ってことで合計314,620円は自腹で。
はぁ〜。
やっぱちっちぇ〜人間だな〜。
グッチー!これから簡単な目の検査をします。
まず左目を隠してみてください。
こないだ知らないって言ったよね。
どうしてあんな行動をとってしまうのか。
君はほんとにわからないんじゃない?自分の意志と関係なく左手が動いてしまう。
違う?何で…何でわかったの?怖かったよね。
自分の手が勝手に動いちゃうなんて。
うっ…。
怖かった。
こんな…気味悪くて誰にも言えないし。
どうしたらいいかわかんなくて。
もう大丈夫。
病名がわかったんだ。
ほんと?エイリアンハンドシンドローム。
エイリアンハンド?自分の意志と無関係に片方の手が動いてしまう。
他人の手症候群とも呼ばれる行動なんだ。
脳内の腫瘍が原因だったんだ。
後は脳神経外科の先生が診てくれるから安心して治療していこう。
ありがとう田口先生。
・「守りたいもの」
(西園寺)バイポーラ。
(看護師)はい。
(西園寺)摘出を始める。
マイクロシザー。
(看護師)はい。
(ミエ)チホ。
彼女の手術は無事成功した。
・
(看護師)西園寺先生!
だけどまさかこの先脳神経外科であんな事件が起こるなんて。
このときはまだ思いもしなかった。
2016/11/12(土) 16:00〜17:30
関西テレビ1
チーム・バチスタの栄光SPECIAL 〜新たな迷宮への招待〜[再][字]
連続ドラマ「チーム・バチスタの栄光」がスペシャルドラマでよみがえる!医療ミスか殺人か?バチスタ事件の新たな謎をめぐり、厚生労働省VS田口・白鳥の攻防戦が始まる!
詳細情報
番組内容
天才心臓外科医ひきいるオペチームで起きた原因不明の連続術中死は、医療ミスか、殺人か?気のいい心療内科医・田口(伊藤淳史)と厚生労働省の変人官僚・白鳥(仲村トオル)が奇妙なコンビを組み、真相を探る医療ミステリー連続ドラマ「チーム・バチスタの栄光」のスペシャルドラマ。
バチスタ事件から数ヶ月後、突然、厚生労働省から呼び出しを受けた田口。
番組内容2
バチスタ事件での白鳥の一連の行動が、厚生労働省で問題になっているらしい。事件を振り返り、事情聴取を受け始めた田口だが、同じころ、白鳥も窮地にたたされたいた。
田口を呼び出した厚生労働省の真の意図は?そして、事件を振り返り、浮かび上がってきたある真相とは…?
出演者
伊藤淳史
仲村トオル
要潤
小林涼子
鈴木砂羽
遠藤憲一 ほか
原作・脚本
【原作】
「チーム・バチスタの栄光」(海堂尊 著/宝島社刊)
【脚本】
後藤法子
監督・演出
【総合演出】
今井和久
【演出】
星野和成
音楽
羽岡佳
妹尾武