（橘志帆）私手術しないんで。
（雪野）ちょっと気になってるんですよね橘先生が。
あのままだったら彼は死んでいたわ。
（雪野）理由が知りたいの。
有名な脳神経外科医だったのになぜうちの解析診断部に来たのか。
（高杉）白州会西東京総合病院で働きだしたのは１年半前からでその前は海外の病院を回っていたらしい。
でも海外のどこの病院にいたのかは誰も知らない。
隠す理由があるのか。
ようやくお会いできましたね。
・
（ドアの開閉音）はぁ〜ただいま。
よいしょ。
よいしょ〜はぁ〜。
ふぅ〜。
（黒木）橘先生はうちの病院が誇る名医でしたからね引き止めたんですけれど意志が固かった。
（雪野）何か辞める原因があったんですか？
（黒木）さあ？いつもと変わりなかったんですけどね。
辞める直前にも難しいオペを成功させていたし。
オペをしていた。
（黒木）彼女は正真正銘の天才です。
後にも先にもこの病院には彼女を越える脳神経外科医は出てこないでしょうね。
（高杉）こちらに来る前は海外にいたって聞きましたがどちらの病院かご存じですか？
（黒木）わかりません。
私なんかよりも北畠先生に聞かれたらどうですか？うちの院長ですか？
（黒木）橘先生をこの病院に紹介してくれたのは北畠先生ですから。
そのへんのことは一番詳しいはず。
（高杉）北畠院長が絡んでるとはね。
確かあの２人って師弟関係だったよな。
（雪野）橘先生を解析診断部に連れてきたのも北畠院長よ。
（高杉）院長なら橘先生の全てを知ってるかも。
雪野の気持ちが少しわかったよ。
えっ？
（高杉）順風満帆だった天才医師にしては謎が多すぎる。
実に興味深いね。
はぁ〜。
ははっ見て〜真央のこの顔。
懐かしいね。
覚えてる？子供の成長って早いね〜。
ついこないだまで赤ちゃんだった気がするもん。
ねっ真央。
はっ！はっ…。
あっあぁ…。
高杉先生何で？どれだけ過去を懐かしんでもあのときには戻れませんよ。
真央。
真央？真央！あんたに関わった人間はみんな不幸になる。
はぁはぁ…。
はぁ〜。
はいチーズ…。
ピピッカシャ！おっ。
ねえあの人。
ん？・あぁ危ない！
（田丸綾香）昨日運ばれてきた患者さんです。
奥山賢太郎さん２８歳男性。
湾岸シティーの展望台から飛び降り自殺を図りましたが全身打撲と左足の踵骨骨折で済んでいます。
（結衣）よく助かったわね。
落下した場所が運よく茂みだったみたいです。
（岩倉葉子）何で自殺未遂の患者さんがうちに来るの？
（夏海）そうですよね。
心の問題なら心療内科でしょ。
本人が自殺してないって主張してて。
（藍）じゃあ事故？目撃者が複数いて明らかな飛び降りだと証言してます。
何人もに見られてたの？
（結衣）湾岸シティーの展望台はデートスポットですからね。
私もたまに行きます。
へぇ〜。
（雪野）患者さんの言い分がうそでないとすると本人の意思とは裏腹な行動を取ってたことになるわね。
はい。
何かしら病気の存在があるのではないかと。
（結衣）でうちに回されてきたわけか。
（藍）本人の意思とは裏腹な行動を取る病気か〜。
まずはコカインなどの薬物中毒があるわね。
幻覚や気分の高揚でジャンプしたパターン。
でもこの場合自分から申告できないから隠し通そうとするはず。
薬物中毒は救命救急で既に疑われて検査済み。
陰性です。
睡眠時無呼吸症候群とかナルコレプシーの脱力発作は？発作的に睡眠に入って転落してしまうことも考えられる。
自覚症状がないケースもあるし。
（藍）だとしたらふだんの生活から障害があるはず。
本人が気付かないわけない。
一過性脳虚血性発作は？突然まひが出て転落したとか。
それならまひの自覚があるはず。
う〜んどれも決め手に欠くわね。
やっぱり心の病なのかも。
精神疾患ってことですか？２０代の死亡原因のトップは自殺よ。
この患者さんも自殺願望があってそれが家族にバレるとまずいからうそをついてるとか。
（夏海）きっとまた自殺を試みますね。
心療内科と連携して治療に当たりましょう。
（結衣・夏海）はい。
橘先生も精神疾患が原因だと思いますか？そうね。
目撃者もいるし。
やっぱり岩倉先生が言うように奥山さんはうそを。
でも１つ引っ掛かるのよね〜。
えっ？自殺するのにわざわざ人でにぎわうような所を選ぶかしら。
確かに。
変ですね。
変なのよ。
どこ行くんですか？
（奥山）景色を見にいっただけなんです。
それで柵に近づいたら突然落下してしまって。
飛び降りようとしてではなく？死ぬなんてそんなこと考えたこともないですよ。
（由美子）あっ…。
あっ妻です。
あっ…。
由美子です。
主人がお世話になります。
主治医の橘です。
お子さんが？
（奥山）ええ来月。
そうなんですかおめでとうございます。
（由美子）ありがとうございます。
男の子？女の子？女の子です。
あっうちも女の子。
もう１０歳なんですけどふふっ。
奥山さんお仕事建築士さんなんですね。
（奥山）はい。
建築設計事務所に勤めてます。
ふだんは図面ばかり描いてるんですが昨日は久しぶりに現場に出て。
現場がその展望台のそばだったんです。
食欲ないですか？いえ病院の食事は少ないくらいで。
自殺したいって感じではありませんでしたね。
来月子供が生まれるんだからね。
だったら何で飛び降りたりなんか。
私高い所苦手なのよね。
知ってる？高所恐怖症になる人って想像力の豊かな人が多いの。
へぇ〜そうなんですか。
落ちることとか考えちゃうんですかね。
う〜ん私はそんなの意識してないんだけどね。
でもジェットコースターとか観覧車とかもう全然だめ。
田丸先生はどう？そういう乗り物とかって。
遊園地のですか？絶叫マシンとかあるでしょ？もうありえない高さからこう落ちるやつとか。
はい大好きです。
長い列出来てても並んじゃいます。
あぁそう。
わざわざ並ぶんだ。
はい。
そうか。
じゃあ高い所平気だね。
良かったははっ。
あれ？何か今まずいこと言ったような気が…。
（北畠）黒木先生がそうおっしゃったんですか。
はい。
白州会西東京総合病院に橘先生を紹介したのが北畠院長だと。
確かにそうです。
間違いありません。
それ以前橘先生は海外にいたとお聞きしましたが。
まっどうぞ。
（北畠）新田先生は相変わらず橘先生に興味があるんですね。
さあどうぞ。
誰一人橘先生が海外のどの病院にいたか知りません。
どういうことなんでしょう。
なぜ誰も知らないのか。
不自然です。
（北畠）ふっ橘先生が海外の病院にいたのは事実ですよ。
（雪野）じゃあなぜ秘密になってるんですか？何か隠す必要があるからじゃないですか？脳外科として名をはせていた橘先生がこの病院の解析診断部に来た理由オペをしないと言っている理由と何か関係が。
何にもありませんよそんなもの。
海外にいたときはどこか特定の病院に籍を置いていたわけではないようです。
視察として回っていたとか。
あっひょっとして新田先生も海外の病院に行きたいと思ってるんじゃありませんか？いやいや解析診断部の大事な人材なんですから残ってほしいんですけどね。
でもねどうしても行かれるというならボストンのビーコンヒル教育病院にいる私の友人を紹介します。
脳外科の世界的権威であの橘先生も訪ねたほどの名医ですからね。
本当に橘先生は海外にいたんですか？もちろんです。
私がうそをつくメリット何かあります？橘先生。
（高杉）こないだはどうも。
どうかしました？いえべつに。
新田先生から聞いてますよ。
橘先生のご活躍ぶり。
新田先生から？ええ。
彼女とは彼女が心臓外科にいた頃から仲がいいんで。
そうですか。
（高杉）是非１度ゆっくりお話を聞かせてもらえませんか。
私の？ええ興味があるんですよね。
橘先生の診断に。
（宮部）カップルばかりですね。
こんな場所に僕を誘うなんて…。
カシャ！
（宮部）田丸先生ひょっとして…。
ピピッカシャ！病院で会って無理やりついてきたんでしょ。
だってまた橘先生の使いっ走りだっていうからほっとけないじゃないですか。
何かうまいこと言いくるめられたんですよ。
高い所平気なら写真撮ってこい！って。
誰かに撮ってもらいますか僕らの写真も。
それは大丈夫です。
あっここが奥山さんの落ちた場所。
工事中ですね。
はぁ〜。
あれ？あそこだけ柵がない。
立ち入り禁止の看板も立ってるし気付かないわけないと思うんだけど。
ピピッカシャ！工事中ってすぐにわかるしそもそも柵がないのに普通近づきませんよ。
ぼ〜っとしてたんですかね。
そんな宮部さんじゃあるまいし。
（宮部）えっ何ですか？この看板の場所ってどの辺り？場所ですか？左側じゃない？左隅のほうとか。
そうです。
えっどうしてわかったんですか？なるほど…そういうことか。
何がなるほどなんですか。
つらいことがあったんでしょ？正直に話して。
だからべつに何もないって言ってるじゃないですか。
恥ずかしいことでも何でもないのよ。
みんな弱い心を持ってるものなんだから。
はいこれ。
何ですか？これ。
私の著書「病は気からストレス社会を生き抜くためのヒント１０８」。
読んでみて。
名著よ。
・
（足音）
（夏海）橘先生何よ？奥山さんはうそついてません。
自殺するつもりじゃなかったんです。
何を根拠に？何か描けるもの…あっ。
（夏海）あっちょっと…。
ここに絵を描いてもらえますか。
田丸先生写メ。
あぁはい。
この写真の絵を描いてください。
簡単でかまわないので。
展望台の絵ですか。
はい。
ちょっと何するのよその本はね…。
わかりました。
出来ました。
これが奥山さんがうそをついていない自殺なんてするつもりじゃなかった証明です。
村上先生。
はい。
ＭＲＩの準備を。
わかりました。
奥山さんの脳のＭＲＩ画像です。
ここを見て。
小さな梗塞がありますね。
右頭頂葉に小梗塞このせいで奥山さんは自殺に勘違いされるような行動を取ってしまっていたの。
（藍）脳梗塞が原因…。
奥山さんは工事中の落下防止柵のない所から落下した。
立ち入り禁止の看板があったにもかかわらず。
田丸先生写メを。
はい。
ありがとう。
奥山さんが落下した展望台の写真です。
（結衣）あっ岩倉先生の「病は気から」。
私も持ってます。
あっちょっと…えっ？この展望台の風景を奥山さんに絵に描いてもらいました。
それがこれです。
（藍）えっこれって…。
（結衣）絵が右半分だけ。
ここで問題です。
展望台の左端にある工事現場奥山さんが落下した場所が描かれていません。
それは一体なぜでしょうか？はい岩倉先生。
見えていないから描けなかった。
ピンポンピンポ〜ン正解です。
さすがですね。
（藍）あのどういうことですか？奥山さんは立ち入り禁止の看板に気付かなかったんじゃない。
見えてなかったのよ。
そうです。
正確に言うと認識していなかった。
奥山さんは左側半分に見えているものを脳が認識できない半側空間無視なんです。
半側空間無視？奥山さんは展望台で景色を見ようと柵のほうに歩いていった。
けれど工事現場が視野の左半分だったため立ち入り禁止の看板を認識せずそのまま進んで落下してしまった。
自殺しようとして飛び降りたんじゃなかったんですね。
そう。
これが奥山さんが自殺に間違われた理由です。
右頭頂葉のこの梗塞をなくせば半側空間無視は解消される。
症状が出て飛び降りたのが昨日の夕方。
まだ２４時間たってないわね。
すぐに脳保護薬を投与。
アスピリンも始めましょう。
（綾香・志帆・雪野）はい。
（夏海）今から始めますね。
はい。
良かったですね原因がわかって。
そうね。
最初からわかってたんですか？奥山さんの半側空間無視。
確信はなかったわよ。
だから田丸先生に展望台に行ってもらったの。
工事現場の場所を確認するために。
最初に奥山さんに会ったとき食欲があるのに食事を半分残していた。
（回想）病院の食事は少ないくらいで。
きれいに左半分だけね。
発症からまだ２４時間以内だし病巣は小さいから治る可能性は十分あるわ。
ふぅ〜。
雪野。
橘先生と何話してたの？えっ？見てたのよ２人で話してるの。
あぁたあいもない雑談だよ。
随分楽しそうだったけど。
（雪野）ねえ私に何か隠してない？何を？悪いけどこのあとオペなんだ。
行くよ。
（宮部）田丸先生今日こそ食事行きましょうよ。
今日も忙しいので無理です。
ずっと無理じゃないですか。
いつだったらいいんですか？わかりません。
僕だっていつまでも田丸先生だけを追いかけてるわけじゃないんですよ。
僕のこと気にしてくれる人だっているんですよね。
どうぞそちらの方と。
えぇ〜。
あっ。
（奥山）もう少しで退院できるって。
（由美子）あら〜良かった〜。
（奥山）出産にも立ち会えそうだよ。
（由美子）うんふふっ。
（奥山）あっははっ。
ねえそれ膨らませてあげよっか。
うん。
（奥山）ちょっと貸して。
いくよ。
・うわ〜すげぇ！よし。
はいどうぞ。
ありがとう。
バイバイ。
バイバイ。
（由美子）もうすぐ私たちにも子供が出来るね。
（奥山）ははっ待ち遠しいな。
待ち遠しいでしゅね〜。
何だかとっても幸せそう。
（宮部）すてきなご夫婦ですね。
愛し合ってるのがこっちまで伝わってきます。
（藤本）へぇ〜女の子ですか。
いいですね。
（渡辺）名前はもう決めたんですか？
（由美子）それがまだなんですよ。
もうすぐ生まれるっていうのに娘の名前は俺が決めるってうるさくて。
（奥山）この子には特別な名前を付けてやりたいんだよ。
（由美子）こんなことばっかり言ってるんです。
（藤本）生まれる前からこれじゃ将来大変ですね。
娘さんが結婚するなんて言ったら。
結婚だなんてそんなん許しませんよ。
（由美子）もうあなたったらふふっ。
（渡辺）はい残さず食べてくださいね。
（由美子）ありがとうございます。
（奥山）いただきます。
（渡辺）いいえどうぞ。
えっ？何してるんですか奥山さん！？
（由美子）あなた！？
（渡辺）急にどうしたんですか奥山さん！痛っ！どうしたの？
（藤本）奥山さんが急に暴れだして。
えっ？僕じゃないんです。
奥山さん落ち着いてください。
落ち着いてます。
奥山さん…うわ！あぁ〜！違うんだこれは。
由美子…。
（藤本）奥山さん！
（奥山）由美子〜！
（藤本）落ち着いて奥山さん。
鎮静剤で落ち着かせるから。
（奥山）あぁ…あぁ〜！
（藤本）落ち着いてください！
（奥山）あぁ〜！はぁはぁ…あぁ〜あぁ〜！
（藤本）奥山さん。
あぁ…あぁ〜！あぁ〜！あぁ〜！はぁ…はぁ〜。
大丈夫ですか？ちょっとびっくりしちゃって。
彼ふだんからあんなふうに暴れたりするの？あっいえ全然。
どちらかと言うとおとなしいほうで。
暴れながら違うんだって訴えてたけど。
最近奥山さん何か変わった行動してなかった？変わった行動ですか？あっささいなことでもいいんです思い出してみて。
あっそういえばつい最近スマホの使い方がわからなくなったことがありました。
スマホの？はい。
どうしたの？ん？ん？どうすんだっけ？これ。
ん？課長に電話かけたいんだけどこれどうやって電話するんだっけ？ふふっ何何？ふざけてんの？わかんないんだよな。
（由美子）でもしばらくたったら何事もなくスマホ使ってましたけど。
一時的に使い方がわからなくなっていた。
他にも会社で突然自分の名前が書けなくなったことがあったって言ってたことが。
それもすぐに治ったらしいんですけど。
（結衣）もう１度ＭＲＩ撮る必要ってあるんですか？脳梗塞は昨日見つかったじゃないですか。
別のがあるはずなの。
そんなはずないですってちゃんと診たんですから。
はぁ〜。
ストップ！１個戻って。
はい。
見て脳梁のここ。
（結衣）えっ新しい梗塞？奥山さんが急に暴れだしたのはこれのせいですか？そうね。
梗塞が出来た場所からすると他人の手症候群。
他人の手症候群？別名エイリアンハンドシンドローム。
意思と関係なく勝手に一方の手が動きだす症状。
自分の手なのに制御できなくなるの。
だから言ってることとやってることばらばらだったんですね。
由美子さんの話によれば過去にも一時的にスマホの使い方がわからなくなったり自分の名前を書けなくなったりしてたらしいわ。
（結衣）それも脳梗塞の仕業。
この前の半側空間無視といい他人の手症候群といいこうも続けざまに脳梗塞が起こるなんて一体何が？新しい梗塞が見つかった場所に脳細胞のえ死は見当たりません。
えっ何で？
（結衣）それどころか前回のＭＲＩで見つかった半側空間無視の病巣も消えています。
恐らくこれまでも軽度の脳梗塞を起こしては自然回復をしてを繰り返していたと思われます。
（夏海）何でそんな連続して脳梗塞が起きるのよ。
おかしいじゃない。
心臓に起こる心房細動が原因かもね。
心房細動で出来た血栓が血流に乗り脳まで飛んで脳梗塞を引き起こす。
心エコーと胸部ＣＴは撮影済みです。
ホルター心電図も撮っていますが今のところ血栓や心房細動は確認されていません。
心房細動が原因じゃないの？はい解析診断部。
あぁ里見先生。
えっわかりました今すぐ伝えます。
奥山さん容体急変です。
（藍）大丈夫ですよすぐ処置しますからね。
うぅ…痛い。
（由美子）あなたねえ大丈夫？状況は？
（藍）心筋梗塞です。
せきこんだあと激しい胸痛を訴えてます。
（雪野）田丸先生ニトログリセリン舌下それから心エコーお願いします。
はい！由美子さん大丈夫ですよこちらへ。
奥山さんお薬口入れます。
除細動も準備。
はい。
あっ…あっあっ…。
由美子さん？
（由美子）あっ…。
大丈夫ですか？どうしました？はぁはぁ…おなかおなか…。
ちょっと触りますね。
あっあぁ…。
あっちょっと張ってきてる。
あぁ…。
切迫早産のおそれがある。
植松先生。
はい。
ストレッチャーを。
あっはい。
村上先生すいません毛布取ってもらえますか？
（夏海）わかった。
ちょっとはい足楽にしてくださいね。
はい…。
（雪野）奥山さんＰＣＩ行ないます。
（藍）準備します。
田丸先生。
はい行きます。
（由美子）はぁ…。
大きく吸って。
はぁ〜…。
はいふぅ〜ふぅ〜。
（由美子）ふぅ〜。
そうですそうです。
（結衣）由美子さんしっかり。
頑張るのよ。
（由美子）はぁはぁ…娘だけは助けてお願い。
私はどうなってもいいから娘だけはお願いします。
真央。
橘先生？・だめです落ち着いてください。
・真央を助けて真央〜！ピッピッピッ…
（心電図の音）
（雪野）スパイダにして。
はい。
（雪野）ステント入りました。
・はい。
（雪野）造影剤で確認します。
・はい。
造影剤入れます。
（雪野）はい。
（雪野）どう？とりあえず切迫早産は回避できました。
今は落ち着いてます。
奥山さんのほうは？大丈夫心筋梗塞以外の所見は見つからなかった。
頻発する脳梗塞との関連はないってことですか。
今のところは。
そうですか。
橘先生は？あぁ…由美子さんを運んでる途中急に体調を崩されて。
体調を？何か娘さんの名前を呼んだりして。
橘先生娘さんがいるんだっけ？ええ１０歳の娘さんが。
橘先生シングルマザーなんですよ。
・
（真央）どうしたの？真央。
はぁ〜。
病院で何かあった？昔のこと思い出しちゃって。
患者さんは？はぁ〜あんまり良くない。
ほったらかして帰ってきたの？だめだよ。
ごめん。
真央のこと考えちゃって。
１人でも多くの患者さんを救うんでしょ？うん。
話してみていつもみたいに。
え〜っと…。
頻発する脳梗塞があって心臓の心房細動が原因だと思ったけど違ったの。
でも他の原因がわからない。
やっぱり心臓なんじゃないの？心エコーやＣＴには何もおかしなものは写ってない。
見せかけにだまされてるんじゃない？ん？昆虫や魚にもいるでしょ。
体の色や形が周りの植物や地面の模様にそっくりになっているの。
枯れ葉だと思ってたら実はちょうだったり。
そんな感じなんじゃない？見せかけは良くても本当は悪い…。
（結衣）軽度の脳梗塞を起こしては自然回復を繰り返していたと思われます。
（夏海）何でそんな連続して脳梗塞が起きるのよ。
（藍）心筋梗塞です。
他人の手症候群？別名エイリアンハンドシンドローム。
半側空間無視なんです。
（奥山）昨日は久しぶりに現場に出て。
現場がその展望台のそばだったんです。
そういうことか。
ふふっはぁ〜。
橘先生もう大丈夫なんですか？あっもう大丈夫ごめんね。
由美子さんは？大事には至りませんでした。
まだ油断は禁物ですが。
彼女に奥山さんのことで聞きたいことがあるの。
由美子さんお加減どうですか？あっ先生方のおかげで何とか。
はぁ〜良かった。
ありがとうございます。
あのところでご主人なんですけど他人の手症候群を発症する直前変わったところありませんでしたか？変わったところですか？はい例えば行動。
突然怒ったりとか何か緊張したりとか。
そんな様子はなかったですけど。
いつもどおりでした。
いつもどおり…。
（由美子）はい中庭に行ったんですけどそこで会った男の子の相手したりして。
男の子の相手って何してました？男の子が風船膨らませることができなくて主人が代わりに膨らませてあげたんです。
そのあとはすぐに病室に戻りました。
風船を膨らませてたんですね。
はい。
やっぱり。
マイクロバブルテストですか？
（結衣）超微細な泡を血液に流し込んで血流を見るテストですよね？なぜそれを？奥山さんの脳梗塞の原因は心臓にあるからよ。
（夏海）でも心エコーやＣＴには何も残らなかった。
じゃあ他にあの頻発する脳梗塞の理由を説明できる？異常がなかったんじゃない。
異常がなかったように見えていただけ。
私たちは見せかけにだまされていたの。
見せかけ…。
今からそれを見破る。
マイクロバブルは血流に乗って心臓に到着します。
心臓の血流に異常がないかどうか心エコーやＣＴでは見ることのできない僅かなものも映し出してくれます。
入れます。
マイクロバブル右心房に達しました。
奥山さん少しの間息を止めてください。
息してください。
あっ。
（結衣）右心房から左心房にマイクロバブルが流れ込んでる。
これって…。
卵円孔開存症よ。
卵円孔開存症とは左右の心房の間の壁心房中隔の中央に穴が開いている症状のこと。
もともとこの穴卵円孔は母親の胎内にいる間肺呼吸をしていない間だけ存在し生後自然に閉じるようになっている。
しかしこれが閉じずに残っている状態これが卵円孔開存症。
卵円孔開存症は心房の壁の一部が弁のようになって通常はくっついている。
この場合一見すると何の異常もなく見える。
心エコーやＣＴでも見つけることはできない。
奥山さんの心臓はまさにこの状態。
これが私たちをだましていた見せかけ。
（夏海）道理で気付けなかったわけね。
だけど何かしらの拍子に腹圧がかかると…。
右心房の圧力が一時的に上がって弁が開き僅かな血流が起こる。
このため静脈内の僅かな血栓が卵円孔を通過して左心房に流れ込みそれが脳に達して脳梗塞を引き起こしていた。
奥山さんが発症していたさまざまな種類の脳梗塞はこれが原因です。
他人の手症候群を発症する前に風船を膨らませていたと由美子さんがおっしゃってた。
そのせいで腹圧が上がったんです。
動脈硬化のリスクが全くないのに心筋梗塞を起こしたのも…。
せきこんだあとに発症してるわよね。
（藍）心筋梗塞です。
せきこんだあと激しい胸痛を訴えてます。
卵円孔から冠動脈に血栓が飛んだの。
卵円孔開存症ならカテーテルを使ってアンプラッツァー閉鎖栓で穴を塞げば症状は改善される。
治るんですか？はい。
脳梗塞が起こらなければ今までに悩まされていたような症状はもう起きませんよ。
はぁ〜。
はまったわ。
（雪野）成功です。
さすが心臓血管外科医ね。
いい腕してるわ。
奥山さんから話を聞きました。
湾岸シティーの展望台から落下した日近くの現場で重い荷物を運んでいたそうです。
（結衣）それが腹圧の上昇につながった。
会社で字が書けなくなったのも上司にひどく怒られた直後だったそうよ。
（夏海）怒られて緊張したのね。
全てに因果関係があったのよ。
珍しい症状の病気の数々と脳梗塞に気を奪われて心臓の不具合に気付くのが遅れました。
でも橘先生よく気が付きましたね。
（結衣）もし気付かずに放置していればどうなってたかわかりませんでしたよ。
娘と話しててねふと思ったのよ。
（藍）娘さんも将来医者ですか？どうかな〜。
いいじゃないですか親子で医者。
解析診断部に来てもらいましょう。
ふふっ気が早い。
ふふふっ。
はい解析診断部です。
えっそうなんですか？わかりました。
皆さんに伝えます。
（夏海）まさか奥山さん容体急変？いいえ違います。
由美子さん赤ちゃん生まれたそうです。
おぉ〜！何だ何今の…。
う〜ん予定日からは少し早いけど恐らく問題ないでしょうね。
奥山さんの自殺未遂の謎も解けたし赤ちゃんも生まれたしとりあえずはめでたしめでたしですよね。
ふふっそうね。
ふふふっ。
うぇ〜ん！かわいい〜。
ねぇかわいいね〜。
（由美子）橘先生田丸先生ありがとうございます。
主人の病気治してもらって私まで助けてもらって。
ううん私たちは何もしてませんよ。
奥山さんと由美子さんがそれぞれ頑張ったからです。
あなた。
ああ。
由美子と話して娘の名前決めたんです。
おっ！何ですか？聞きたい。
（奥山）はぁ〜んんっ…。
志帆にしようと思います。
ん？志帆。
いやえっ？えっ何で？いいじゃないですか。
良くないよ。
志帆ちゃん。
ちょっとやめてよ。
奥山志帆ちゃんです。
いやそう…。
志帆…いや！はははっ！いや無理。
絶対無理無理。
うぇ〜ん！ほんとですか？
（奥山）はい。
性格ひねくれちゃうよ〜。
・「ミラクル」ピンポーン！あっ！はい。
はぁ〜。
どうぞ。
よくお会いしますねこのエレベーターで。
階段使いなさいよ。
ふっ…。
はっ院長室最上階ですよ。
あの部屋廊下の突き当たりで使い勝手が悪いんだよな遠いし。
ところで橘先生はどうですか？みんなとうまくやってます？何？何か心配なことでもあるの？いえ何も。
新田先生はどうですか？何なのよ。
いやべつに。
解析診断部の先生方が快適に仕事なさってるかなと思っただけで。
この私が部長なのよ。
そんな心配しなくていい。
ふっ…ですよね。
あっ岩倉先生今度どうですかゴルフでもご一緒に。
はぁ？お互い運動不足ですよね。
はぁ〜。
余計なお世話よ。
あっ…。
あっ押すの忘れた。
えぇ〜？あっ俺ここだ。
どうも。
うそでしょ。
・コンコンコン！
（ノックの音）・
（ドアの開閉音）
（佐々木）新田先生どうしたんですか？佐々木事務長お願いがあるんですけど。
（佐々木）何でしょう？今ちょっと忙しいんですけどね。
（雪野）橘先生の住所教えてもらえませんか？橘先生の？はい。
う〜ん…。
最近個人情報の管理はうるさいんですよね。
たとえ同僚でも簡単には教えられないんです。
佐々木事務長は岩倉先生を次期院長に推したいんですよね？ん？何ですか？急に。
もし橘先生に秘密や責められるべき汚点があればどうですか？えっ？橘先生をヘッドハンティングしてきたのは北畠院長です。
橘先生の過失はそのまま北畠院長の過失につながりますよね。
引責問題による現院長の更迭。
交代もありうるかと。
おっともうこんな時間ですか。
業者との打ち合わせがあるので少し出かけます。
（佐々木）医師名簿はここにあります。
さっきも言いましたが見せることはできませんけど。
しかし私がいない間に新田先生が何をしようと私の知るところではありません。
１時間は戻りません。
ん？娘がいない。
１０歳の娘さんが。
橘先生シングルマザーなんですよ。
娘と話しててねふと思ったのよ。
何で？
（真央）その赤ちゃん本当に志帆って名前になったの？そうみたい。
ちゃんと素直に育つかな？どういう意味よ。
私がまるで素直じゃないみたいじゃない。
失礼ね。
晩ご飯何食べたい？カレーかいいね。
えぇ〜辛口？食べられるの？ほんとに辛くしちゃうからね。
あっ…。
真央？
（雪野）私のミスだっていうんですか？オペは完璧です！
（北村）何で失敗したやつがここにいる？全部お前のせいだ！患者さん助けたくないの？
（雪野）私には私のやり方があります。
口出ししないでください。
患者さんを救う。
それ以外に大切なことなんてないでしょ？
（北畠）誰にでもあるでしょ？ふれられたくない過去の１つや２つ。
（ナレーション）
このドラマをもう１度見たいというあなたにお知らせです。
パソコンやスマートフォンなどでご覧いただけます。
詳しくは番組ホームページで。
2016/11/08(火) 21:00〜21:54
関西テレビ１
レディ・ダ・ヴィンチの診断 ＃０５[字][デ]【頻発する脳梗塞の謎を発見】
「頻発する脳梗塞の謎を発見」
吉田羊 相武紗季 吉岡里帆 高橋克典 伊藤蘭
詳細情報
番組内容
志帆（吉田羊）の過去が気になる雪野（相武紗季）は、高杉（小林且弥）とともに志帆が以前勤めていた病院を訪ねるが、これといった成果は得られない。
そんなある日、公園の展望台から飛び降りた建築士の奥山賢太郎（桐山漣）が解析診断部に回されてくる。
目撃証言から自殺と見られるが、本人はそれを否定。
志帆は、奥山が朝食の左半分だけを残していることが気になり、奥山に絵を描いてもらう。
番組内容２
すると、完成したのは右半分のみ。
奥山は脳梗塞が原因で、左側半分に見えているものを認識できていなかったのだ。
数日後、奥山が今度は突然、左手で周囲のものを投げ始める。自分の意思とは関係なく勝手に手が動き出す病気で、これも脳梗塞が原因だった。
さらに最近、一時的にスマホの使い方が分からなくなったといい、志帆は恐らくそれも脳梗塞が原因だと考える。
番組内容３
連続して脳梗塞が起きるのはなぜか？
—解析診断部が理由を探り始めた矢先、奥山の容態が急変して…。
出演者
吉田羊
相武紗季
吉岡里帆
白鳥久美子（たんぽぽ）
滝沢沙織
庄野崎謙
小林且弥
池岡亮介
五十嵐健人
笛木優子
戸次重幸
・
高橋克典
伊藤蘭
スタッフ
【脚本】
田中眞一（『チーム・バチスタ２ ジェネラル・ルージュの凱旋』、「チーム・バチスタ３ アリアドネの弾丸」「ＧＴＯ」他）
【演出】
星野和成（「チーム・バチスタ」シリーズ、映画「チーム・バチスタＦＩＮＡＬ ケルベロスの肖像」他）
【プロデューサー】
安藤和久（カンテレ）
豊福陽子（カンテレ）
遠田孝一（メディアミックス・ジャパン）
布施等（メディアミックス・ジャパン）
スタッフ２
【制作】
カンテレ
メディアミックス・ジャパン
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