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書き起こし プロフェッショナル 仕事の流儀「照明デザイナー・東海林弘靖」 2016.12.05

影響はありますか?
あります。
これ、8月でしょ。
ですから雷が一番多発しそうな時期なんですね。
ですので、例えば競技施設だとか、それからテロ対策だとか、いろんなものに実は雷対策を背後ここは新生児集中治療室。
低体重児や疾患を抱える赤ちゃんがベッドを並べる特別な部屋だ。
そこにやって来たちょっと場違いな男。
男はこの病室の照明を手がけたデザイナー。
母親の胎内のように赤ちゃんが安心できる明かりを作り出した。

(主題歌)独創的な明かりで世界を照らす…三度の飯より明かりが好きな58歳。
(シャッター音)東海林は言う。
「大切なのは影」。
ギラギラとした光は要らない。
商業ビルから公共施設まで手がけた照明は600以上。
その実績で名だたる建築家からも一目置かれる。
突然暗闇に包まれたあの日。
自分の存在理由を見失った。
この秋挑んだのはある城下町の照明デザイン。
廃虚の中からかつてのにぎわいを取り戻す。
交錯する光と影。
そこに人々の暮らしがある。
この日最新の照明器具が届いた。
紙のように薄いLEDライト。
照明となると無邪気になる58歳。
お遊びはここまで。
現在40を超えるプロジェクトを抱える東海林。
日本全国世界各地を飛び回る。
今回の現場は京都の料亭。
数寄屋造りの建物その照明をデザインする。
この建物が造られたのは64年前。
「大工の神様」ともうたわれた中村外二の名建築だ。
自然光などを計算し尽くした名工の仕事に向き合う。
もともとは一般の住宅だったというこの料亭。
女将は客をもてなす明かりがない事に長年頭を悩ませていた。
そこで頼ったのが東海林だった。
これまで手がけてきたデザインにほれ込んだ。
東海林の照明デザイン。
それはこう評される。
早速始めたのは座った人への照明の当たり具合だった。
細かく座り位置を変えながらどんな印象で顔が見えるか確かめる。
陰影が強すぎず表情が穏やかに見える光の強さを探る。
更に東海林が気にしたのは床の間の照明だった。
床の間は部屋の顔。
いかに美しく際立たせるか。
東海林が大切にする流儀がある。
肝心の料理の明かりにもある工夫を加えた。
実際に試してみる。
部屋を照らす電灯の中心に僅か2ミリのLED電球を仕込んだ。
客に気付かれずに料理だけを際立たせる。
その差は一目瞭然だった。
3週間後。
建物を手がけた名工の息子中村義明さんが完成間近の照明の出来を見に来た。
中村さんも父親の工務店を継いだ棟梁だ。
歴史が積み重ねてきた物語をしっかりと受け止める。
東海林は中村さんにある仕掛けを見てもらった。
コース料理が始まっておよそ2時間をかけて照明が落ちていく。
ごめん下さい。
これはガスかな。
・えっと…石油です。
(東海林)石油ですか。
これどうなってんですか?これは。
これは足元を照らすためにね持って歩くんですけどこれが畳むとこういう状態になります。
(東海林)かっこいいねこれがまたね。
こちら折り畳みのしょく台です。
(東海林)これがねどうなったんだって手品みたいにね…。
(東海林)ほらほらこれこれ。
揺れてますね。
(東海林)揺れてますね。
(東海林)刺すんだ…。
つっかける事もできます。
かもいに引っ掛けてもいい…。
あっそうですねはい。
9月上旬。
新たなプロジェクトが始まった。
乳がん治療で日本でも指折りの鹿児島の病院。
3年後に全面改装を控えていた。
特に設計者がこだわったのはがんを告知された患者や家族に精神的なケアを行う病棟だった。
病と向き合う患者や家族その精神的なプレッシャーを照明の力で和らげてほしいという。
東海林が考えたのは禅の世界で大切にされる形丸三角四角をモチーフとしたデザインだった。
それぞれにかたどった照明を模型に貼り患者の目線で見る。
禅のアイデアはやめ丸に絞った。
だが…。
元気あふれる光ではない。
癒やしのための闇でもない。
追求したい理想とする明かりがあった。
1週間後の設計者へのプレゼン。
たどりついたのはおむすび型の不等辺三角形。
動きのある柔らかい線で患者の心を包む。
設計者はこう評した。
入ってますよ入ってますよ。
完成は3年後。
「心を灯す」その光を作り上げる。
5年前のあるテレビ番組での事。
異国の地で涙する東海林さんが映し出された。
(東海林)「なんかね涙出てきちゃうね。
なんか分かんないけど」。
その涙が東海林さんの人生を変えた。
建築家を志し福島から東京に出てきた東海林さん。
ところがたまたま受けた建築照明会社の面接での事。
そこで言われたデザイナーの言葉で人生を決めた。
しかし現実は厳しかった。
入社後時代はバブルに突入。
建設ラッシュと共に仕事は次々押し寄せたが照明は二の次。
設計や現場の都合で東海林さんのデザインは勝手に変更された。
「照明は明るければいい」その言葉で片づけられた。
だが東海林さんはめげなかった。
東海林さんは現場と膝を突き合わせて徹底的に話をした。
設計の都合を飲み込んだ上で可能性を探っていった。
そして15年が過ぎた頃には業界でも一目置かれていた。
ネオン管技術を応用した幻想的な照明のオフィスビル。
地中に埋められたLEDが素朴な自然の風景を思わせる広場。
光の伝道師として空間を彩っていった。

 

 

 

 


しかし…計画停電により東京の街から明かりが消えた。
更に節電のさなか照明そのものの価値が問われ始めた。
自分が生涯の仕事としたものの意味は一体何だったのか。
目の前に深い闇だけがあった。
2か月後東海林さんはかねてから依頼されていた番組の企画である国を訪ねた。
南太平洋に浮かぶパプアニューギニア。
たどりついたのは小さな島の電気もガスもない村だった。
唯一の明かりはヤシの実から搾り取った油で灯すランプだけだった。
東海林さんは思わず聞いた。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
いやあなんかね…ありがとう…ありがとうございます。
帰国直後。
そこ青やめてちょっと同じ色にしてみて。
東海林さんが手がけたのは節電が続く中での商業施設の照明だった。
全体を照らす事はやめ渡り廊下の照明や床の誘導ラインなど細部だけに絞った。
電力は従来の1/3に削減。
それだけで十分だった。
53歳で到達した境地。
思い描いたのはあの島のほのかな明かりだった。
舞台は九州のひなびた城下町。
照明デザイナー東海林弘靖の次なる仕事。
この町の明かりの意味とは何か。
答えは暗闇の先にあった。
9月上旬今回のクライアントは気心の知れた友人だった。
広場や公園などを中心に街全体を設計するデザイナーだ。
東海林への依頼は故郷・大分に新たに作る事務所の照明デザインだった。
現場は城下町として有名な竹田市。
商店街で空き家となっていた築50年以上の美容院を改装するという。
今町に増えている若者たちが気軽に出入りし地元の人々と交流できる場所にしたいという。
更に電力にもこだわる。
全てをソーラーパネルで賄いエネルギーを最小限にとどめたいという。
若者が集まりたくなるような新しいシンボル。
しかも地元の人にも受け入れられる懐かしさも醸し出す。
だがその2つの両立は口で言うほど簡単ではなさそうだ。
1週間後。
東海林は大分・竹田市にいた。
この町になじむ照明とは何か。
高台に何かを見つけた。
町を望む寺にあった巨大な灯籠。
この町の人は明かりに何を求めているのか。
かつては観光客でにぎわっていたという城下町もその面影はない。
「サロン・ド・マツイ」って。
絶対そうですよ。
昭和40年代には4万8,000を数えた人口も今では2万余り。
事務所となる建物は町の中心地にあった。
この町の人たちはここでどんな明かりを見ていたのか。
長年使われてきた照明器具を見つけた。
見つけたのは昭和の時代に使われていたホーロー製のかさの街灯だった。
45年間この町で暮らす…去年まで自治会長を務めてきたという。
きた!
(シャッター音)ついたですか?つきましたよ。
(シャッター音)ああそうなんですか。
聞けば古い町並みに合うものを自分たちで選び今もメンテナンスを行っているという。
(笑い声)いろいろ勉強なさってるんですか?ありがとうございます。
東京に戻った東海林は骨董市に足を運んだ。
ホーロー製のかさを探した。
あの電灯の光にこそ町の明かりの本質があると読み解いた。
10月下旬。
プロジェクトは大詰めを迎えていた。
内装は美容院の面影を生かしつつも一新されていた。
いよいよ東海林が魂を入れる。
上限ある太陽光発電を逆に生かし落ち着ける明るさの電灯を効果的に仕込んだ。
おぉ強いね。
人を引き込むような明かりを作り出していく。
近所の人たちも気になって集まる。
(東海林)見て見て。
はい。
周囲が暗くなると全ての明かりをつけて回った。
最新の有機ELライトを仕込んで再利用した古い照明器具。
(東海林)ついた!ついた…。
すげえ!3つもついた。
懐かしくて新しい光。
そしてこだわったホーロー製の電灯も探し出していた。
街灯として使われるものをあえて室内に取り付けた。
突如東海林が駆けだした。
訪ねたのは自治会長を務めていたあの児嶋さんだった。
(東海林)ここ…中も…ああいうちょっと違うタイプなんだけど…
(東海林)あれです。
(東海林)全く同じだと思うんですけどね。
(児嶋)へえ〜。
東海林は建物の奥にもホーロー製の電灯を設置していた。
(児嶋)あっあぁ…。
(児嶋)はあはあはあはあ。
町の人々を建物の奥へといざなうようなデザインだった。
すると児嶋さんが語り始めた。
まずその…探していたこの町の明かりの意味にたどりついた。

(主題歌)「新しい命がまた生まれる」なんていう事を言われちゃってっからね。
びっくりするよね。
よくさ照明の何ていうんですか専門家でも何でもない人はどこに行っても同じような事を言うっていうのは不思議ですね。
「新しい命」だってさ。
「灯る明かりは人が生きる証し」。
その本質に東海林は光を当て続ける。
必ず前へ進むと。
とにかく進めるという事を努力すると。
間違ってても進めると。
早く気付いて戻って別の方向を模索すると。
それがまあプロフェッショナルとしての思いですね。
いつも変わらずに思い続けてるのです。
2016/12/05(月) 22:25〜23:15
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀「照明デザイナー・東海林弘靖」[解][字]

“美しい闇”を作り上げる照明デザイナー!明かりが子どもたちを包む病院、「おかえり」と語りかける駅ビルの光。独創的な陰影が人生を照らし出す、プロの仕事!

詳細情報
番組内容
ギラギラした光は、もういらない。世界的照明デザイナー・東海林弘靖の流儀は、“居心地がよい暗闇”に宿る。緻密な計算と感性によって作り込まれた光と影の交錯に、人は安らぎを覚え、時に涙する。その原点は、東日本大震災。計画停電や節電で、町から光が消えた。自分の存在理由が揺るぐ中、答えはなんと、南太平洋の島にあった!この秋挑んだのは、九州随一の城下町の廃墟…人々の心に灯をともす、起死回生のアイデアとは?
出演者
【語り】橋本さとし,貫地谷しほり