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書き起こし オイコノミア「笑って納得!落語の経済学」 2016.12.14

(テーマ音楽)
(出囃子)
(又吉)「え〜毎度バカバカしいお笑いを一席…。
隣の空き地に塀が出来たってねぇ。
カッコいい!あれ?反応ないな。
囲いい!あれ?何でウケへんのやろ。
ちょっと声が小さいからかなぁ」。

 

 

 


(中島)「又吉さん!」。
「ああ先生…」。
「落語は経済学を勉強するのにとてもいいんですよ」。
「へぇ!カッコいい」。
「ん?」。
「あっ何でもないです」。
通路をぎっしりと埋め尽くす人。
あっ!また人。
「一体何だ?」って。
これみんな落語を聞きに来たお客さんなんです。
今落語が空前のブーム。
寄席以外の場所でも落語会がどんどん開かれて今や年間1万4,000回を超えます!うわっ!はぁ〜!「でも落語と経済学は関係あるのか?」ですって?これがビックリ!大ありなんですよ!さあ始まり始まり〜!すごいですね。
いろんな建物があって。
ホントに。
ここは江戸の町を再現した博物館。
あれ?
(そばを食べている音)あっちょっとすいません。
ここ飲食禁止ですよ。
(花緑)えっ?何のことですか?あれ?確かに今何かね食べてる音聞こえましたよね。
そば食べてましたよね。
食べてないですよ。
(笑い声)師匠じゃないですか!いやいや。
今日はあれですよ経済学の視点から落語を見ていくというんでものすごい楽しみに来ました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ゲストは落語家柳家花緑さん。
今最高に乗ってる噺家の1人です。
今すごく落語がブームなんですよね。
いやなんかねそう言われてるんですけれどもこうなんかこう全体に来ない。
なんか雨が降るでしょ?ゲリラ豪雨みたいに。
局地的に降ってこっち降ってないみたいな。
なるほど。
そんな感じがあって。
全体落語家がブームかっていうとどうもねクエスチョンで。
なるほど。
でも一番のブームはこの「オイコノミア」が落語の特集をしたっていうところが一番ブームだと思います。
なるほど。
ここが一番今雨が降ってる所なんですね。
そうです。
そんな感じに思います。
そういう江戸時代からね伝わる伝統芸能古典落語っていうか落語の世界ですけども。
まあその演目にも実は経済学と非常に深い関係のあるものもたくさんあって。
まあ師匠にも一席ですねちょっとご披露いただきまして我々もそれを拝聴して。
でまたあのえ〜落語の経済学談義をちょっとさせて頂ければというふうに思います。
あ〜。
千両は今のお金に換算するとウン千万円という大金。
みかん1つにとんでもない値段がついてしまうお話です。
(出囃子)
(拍手)え〜ある御大家の若旦那が病の床について早10日。
お医者様の見立てではこれは「気の病」。
何か心に思っている事があるのでその願いさえかなえば病は自然と治るという。
まあ両親には話しにくいことも番頭さんにであればまあ気軽に話せるんじゃないかと。
「若旦那!どこの娘さんなんです?恋わずらいなんでござんしょ?」。
「そうじゃないんだよ番頭さん。
私は…みかんが食べたいんだよ」。
「みかんですか!」。
「というわけで大旦那様若旦那そうおっしゃいますんでね『みかんなんてねあっしがすぐに買ってきて差し上げますよ』と言ったらみるみる顔色がよくなりましたんで今買ってきますから」。
「お前なんという事を約束したんだい。
えっ?今この真夏の8月だ。
どこにみかんが売っているんだい?」。
「あっ!」。
「いいか?せがれにもしもの事があったらお前さんははりつけだよ」。
さあ番頭さんは驚いてもう江戸じゅうの果物屋や八百屋をもう駆けずり回って探して探して探して歩いたけれども真夏にみかんはない!ところが神田に万惣というみかん問屋がありましてそこを訪ねると「お待ち下さいまし。
はい。
みかんはございます。
こちらです」。
と1つのみかんを出されて「買います。
おいくらですか?」。
「千両です」。
「はっ?千両!みかん1個ですよね?」。
「うちはみかん問屋です。
いつなんどきでもみかんが欲しいというお客様がいらっしゃればそれに応えられるよう冬の間よりいいみかんばかりを箱に詰め蔵のほうにギッシリと収めているのでございます。
たった一つ腐らずに残ったのがこのみかんでございます」。
「買わして頂きます。
でも少々お待ち下さい」と店へ帰って主に聞けば「いやあせがれの命が千両で買えるなんて安いな」と。
千両でみかん1つを買ってきた。
「若旦那!みかんですよ!さあむいて差し上げました。
ねぇ。
ちょうどね十袋ございましたよ。
ええ。
ということはね一袋これ100両ですよ!」。
「ああ番頭さんありがとう。
うん。
ああ…」。
(食べる音)
(食べる音)
(食べる音)「ああおいしい!」。
「はははっよかった!よかった!」。
「番頭さんここに三袋残った。
おとっつあんとおっかさんともうひとつは番頭さんお前が食べておくれ…」。
「ありがとうございます。
若旦那頂戴いたします」と廊下へ出た。
「ああすごいなぁ!千両のみかんだよ。
七袋召し上がってここに三袋残った。
3百両だ。
3百両なんてなこの先自分じゃ到底稼ぐことはできないだろう。
3百両…ああ…ごめんなさい!」と言うと番頭さんみかん三袋持って逃げてしまいました。
アハハッ!
(拍手)いや〜ありがとうございました。
ありがとうございました。
いや面白かったですよ。
不思議な話ですよね。
はい。
そうなんですよ。
いやまあその落語でも漫才でも笑いというのは結構こう一般に見て……になったりすることが多いんですよね。
例えばこう最後にえ〜3つだけ3袋だけみかん持って逃げちゃった。
あそこは笑いましたよね。
はい。
何で笑ったかっていうとやっぱり変だから笑ったわけですよね。
実は経済学的に考えてみましょう。
って言うとそこでキーワードがあるんですよね。
はい。
いわゆる使用価値とそれから交換価値という。
これはどういうこと?この2つが混同されてる。
「千両みかん」では若旦那とそのお父さんにとってはみかんに1000両の使用価値がありました。
一方…みかん1個を1000両と交換したいと言ってもまず無理ですね。
みかんには1000両の交換価値はないからです。
つまり使用価値と交換価値は違うのです。
だからまさに今回の話の面白さはその2つの価値を混同して番頭さんが3袋持って出て行ってしまったと。
うん。
3袋をじゃあ持ってって実際それで300両になるのかどうかっていう。
つまり交換価値を持ってるかどうかですね。
何文とかその時代分かんないけど相当普通に安く買えるものです。
皮むいてるやつですもんね。
そうですね。
あのあとどうなるのかっていうね。
ちょっとかわいそうな気もしますよね。
そうですね。
すごいな。
「千両みかん」こうやって見るとなんかとても奥の深い話のような気がします。
ほかにも落語でなんか経済学が読み取れるようなお話ってあったりするんですか?あっ実はですね経済学者の間でもちょっと話題になった落語の演目がありまして。
その「花見酒」という落語の演目これをまた経済学で考えてみたいというふうに思います。
はい。
落語「花見酒」。
花見客でにぎわう隅田川のほとりで「酒を売ればひともうけできるんじゃないか」と2人の酒好きの男が思いつきました。
2人は酒屋から2升の酒を代金後払いで買って川へと向かうのですが…。
途中で兄貴分が我慢できなくなり弟分に10文払って1杯飲んでしまいます。
「んん…パハーッ!」。
まあお金を払ってもらえれば問題はありません。
でもそうなると今度は弟分も飲みたくてたまりません。
さっきの10文がありますからそのお金を兄貴分に払って1杯飲んでしまいます。
「んんん…パハーッ!」。
こうなるともう止まりません。
お互いに10文をやりとりしつつ1杯。
はいまた1杯。
はいまた1杯。
はいまた1杯。
「ハッハッハーッ!」。
ようやく川に着いたときには酒だるは空っぽ。
全部売り切れたはずなのにお金は全く増えていません。
2人でもうけるつもりがどうしてこんなことになってしまったのでしょう?そう。
まあこの話もねまあ面白い話なんだけどもその面白さはどこにあるかっていうかねどこが先ほど言った不自然さですか?まあ全部全部面白いですけどね。
全部不自然なんですけど。
(笑い声)自分たちでやっぱり飲んじゃうっていうところで一応お金の何て言うんですか。
このやり取りはしてるんですけどそのお金が…。
…のやり取りがおかしいというところでしょうね。
ああおかしいね。
はい。
まあ売るべき酒がなぜか自分たちで飲んで無くなってしまう。
はい。
なんでそういう事が起きたのか?それ実はですね「共有地の悲劇」っていうキーワードがありまして。
共有地の悲劇。
例えば牧草地を牛飼いたちが共同で使っていた場合みんな自分の牛にできるかぎりたくさんの草を食べさせようとするため牧草は食べ尽くされ土地は荒れてしまいます。
実は例えば最近マグロとか漁業資源ウナギもそうですけどちょっと無くなってきてますよね。
無くなってきますね。
あれはなんでかって言うとまあこれに近い。
土地ではないけども海ってみんなのものじゃないですか。
特に公海に出ちゃうと。
まあ取り放題取ってしまう。
みんながそれをやるとどうなりますか?無くなる。
無くなっちゃう。
その話と今回のね「花見酒」を結びつけるとどういうことが分かってくるかなっていう感じです。
あの酒って誰のものなんですか?だから…。
借りてきたものですね。
酒屋から借りてきた酒ですよね。
そうすると誰か1人のものじゃないので。
はい。
1人が金持っててそれちょっと飲ましてくれよと言ったときは誰に所有権がありますか?だから兄貴分がそう言ったときには飲みたいと言った。
弟分。
ですよね?はい。
で金が移動しますよね。
そうですよね。
そしたら今度は金持ってる側が飲ましてくれよって言った時にはどっちが所有権ありますか?今度は弟分が飲みたいと言って兄貴に渡す。
うん。
だからそうやって今の話って不思議なことにその酒の所有権が飲むごとに入れ代わるんですよね。
ああそういうことですね。
だから本当は自分がその預かった酒に対して責任を持ってればどうするはずですかね?まあ守ったりねしますよね。
そうですね。
飲まないでしょうね。
1人でしょってたらね。
それをちゃんと売って商売したお金を持って酒屋に。
絶対そうですよね。
ねえ。
というふうに思うんだけどまあこれ結局2人でいたもんだから。
ああ。
2人で起きた悲劇なんですか?そうですね。
やっぱりそうか。
だから海もこういう牧草地も誰かひとりが所有してればあるいはその使う権利を持っていればその人がその権利を大切に使う訳ですよね。
ああなるほど。
これは…これに近いことってあったりするんですかね?自分のものとか誰かのものだとちゃんと使うけどみんなのものやと例えば公衆便所が汚いとか。
はい。
何かそういうのに近いんですかね。
近いと思いますね。
うん。
ああ。
非常に難しくなりますね。
だから税金なんかもそれに近いとこありますよね。
みんなから集めた税金っていうお金は誰のものでもなくてみんなのために使う訳ですよね。
そうですね。
そうするとなんか変なことに無駄に使われてしまったりとか。
う〜ん。
そういうことも起きたりする。
そうやって聞いていると落語のお話っていうのは割と現代の何て言うんですかね。
僕たちともすごく感覚的に近かったりしますよね。
なんかやっぱり江戸の話とかしてるとこっちもやっぱり躊躇するところがあって。
いわゆる歌舞伎みたいに衣装を着てるわけでないので分からない部分があるんじゃないかって。
でもやっぱり感情的な部分ってあまり変わってないですよね。
特にお金っていうものが題材であったりもちろん人情っていう意味でもそうですけれどもやっぱりズレてないんだなとは思いますね。
そうですよね。
うん。
まあだから時代が変わってもやっぱりこう人間の本質的な部分もあんまり変わらないしそれから特にお金ね経済合理性みたいなものはある意味時代を超えてみんなそれなりに考えてきたんだなということはまあ分かりますよね。
はい。
師匠。
落語家になるにはどうすればいいんですかね?ああ。
落語家になるにはやっぱり誰かこの人っていう師匠を決めてその師匠に…やっぱり弟子にならないと。
そうなんです。
ここが決定的にプロかアマチュアかの違いなんですよ。
これいろんな方が弟子にして下さいって来ると思うんですけど弟子をこうなんですか?取る。
何かあるんですか?その。
ああ。
基準みたいなものですか?いわゆるウェブとかで募集してないので「花緑の弟子大募集」とか言ってないので突然来るわけですよ。
いつ来るか分からないわけですから。
あの結構楽屋で出待ちをしてくれることが多いのでそういう時って僕も次にどっか行ったりとかその場で急にってなかなか出来ないので。
事務所とかの名刺を渡してそこへ手紙を書くように僕に向かって。
そこでちゃんと改めてどういうふうに落語家になりたいと思ったかとか落語の出会いとか思いを書いてきなさいと。
どんな子も大体取った子は丁寧なんですよ。
字がきれいっていうよりも僕に読んでもらうと想定したときにすごく丁寧に書こうとしてるっていうのでまず気持ちが伝わりますよね。
はいはい。
そういうのが今後落語界に入ったときやっぱりお客様に向けて商売するっていう時になんかその丁寧さがその人の中にあるものが教えた以上のものが出てくるんじゃないかと思うので。
落語の世界には独特の階級があります。
まず「見習い」。
次に「前座」。
「二ツ目」でようやく落語家と認められ一番上の位が「真打ち」です。
今回又吉さんは花緑さんと兄弟子である柳亭市馬さんによる落語会を訪ねました。
その舞台裏で前座の仕事に密着取材。
(ノック)はい。
おはようございます。
おはようございます。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
これ弟子です。
お弟子さんですか?
(緑助)ええよろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
小学5年のときに花緑師匠の落語に衝撃を受けこの道に入ろうと決めたそう。
開演1時間前。
音響設備のチェック。
ではマイクチェックお願いいたします。
え〜昔からキツネタヌキは人を化かすなんて事よく申しましてキツネが七化けタヌキが八化け。
(緑助の落語)はいはい。
はい。
じゃこれで。
続いて「めくり」の確認。
なかなか手慣れたものですねぇ。
兄さん方の…からもう教えてもらって何となくつかめてきたかなという感じですね。
舞台の前座を務めるので自分の支度も必要です。
ここでお着替えされるんですね。
ええ。
着物を自分で着たこともなかったんですよねぇ。
うん。
ホントに高校出てすぐ師匠のところにつきましてそれで全部初めてですねホントに。
落語に関することは。
それが今ではこの手際のよさ。
すばらしい!結構急がないと駄目なんですね。
そうです。
時間があんま無いので。
本番前結構やる事多いんですね。
いやもうそうですね。
前座は。
雑用が結構メインになるので。
ああ。
ええ。
演者というよりはなんかもう。
スタッフ的な役割も。
そうですね。
はい。
続いては師匠の着替えをお手伝い。
サッと羽織らせます?と気が付けば自分の出番まであと5分。
さあ気持ちを入れ替えて。
ウン。
ショと。
演目は「真田小僧」。
頑張って!
(拍手)ええまずは開口一番前座でございます。
「いいいいいい。
遊びか?ちょっとこっち来い。
こっち来な。
そこ座りなよ」。
忙しい師匠に噺を聞いてもらえる貴重な時間です。
(緑助)「いいねえ。
じゃあおっかさん頼んであげるから」。
前座の持ち時間15分はあっという間でした。
お先に勉強させて頂きました。
(花緑)お疲れさんでした。
ご苦労さまです。
はい。
ではお願いします。
(出囃子)
(拍手)師匠のステージを見る余裕などはなくすぐに裏方の仕事へ。
おはようございます。
はじめまして又吉です。
(市馬)あらおはようございます。
今日は取材させて頂いてます。
そうですか。
いつも見てますよ。
ありがとうございます。
この日はもう一人の主役柳亭市馬師匠のお手伝いも緑助さんが務めます。
はい。
まずはお茶からですね。
少し何か風がきついな。
少し弱めて。
はい。
エアコンの調整ももちろん仕事のうち。
一応切れたことになってると思うんですけど。
おお。
はい。
なんだい?切れた事になってるって。
(緑助)音が…。
すみません。
師匠もそういう時代がやっぱり。
いやもちろんみんな。
もうどんな偉い人も。
うん。
そこをやらない人はいないですから。
そこをくぐり抜けてね。
一番下っ端は下っ端の仕事があるしね。
寄席ってのはもうそういう…上下の関係で出来てますからね。
緑助さんの大切な仕事がネタ帳の記入。
ネタ帳とは楽屋にある演目の記録。
ネタがかぶったりしないように誰が何を演じたか記録しておくのです。
おっと!そろそろ花緑師匠の出番が終わりますよ!ササササッ間に合うのか?お疲れさまでした。
はい。
よかった。
間に合いました。
お疲れさまでした。
お疲れさまでした。
どうですか?こんな感じでやってるんですよ。
いや〜。
落語家への道ってこうした日々の積み重ねなんですねぇ!恐れ入りました。
大変っすよね。
でもね。
でもああいう事をやるんですよ。
しっかり。
まあ弟子を取ってで育てていくみたいなね。
まあそういうのを一般的にはですね「徒弟制度」というふうに言いますよね。
はい。
その徒弟制度っていうのはどうしてそういう制度を落語はまあとっているのかと。
はい。
ほかの分野では別に徒弟制度ではなくて普通に学校で習ったりとか本を読んで勉強したりとかいろいろ勉強のしかたはあるんですけどなぜ落語の場合はこういう徒弟制度でやってるんでしょうかね。
僕が思うにもちろん落語そのものを教えるっていう事も秘伝の書とか無いので口伝ってやつで全部教わっていくんですけどやっぱりそばにいてというのはそのお客様とその仕事のクライアントさんともそうですけどどんなふうに師匠がその立ち居振る舞いをしているのかっていう一挙手一投足も全部見せてそういうものも学んでいく。
だから「芸は盗め」っていうことをうちの師匠は言ってましたけども盗ませるわけです。
そばに居て。
ええ。
でもそれは個人差があるじゃないですか。
うまく盗める人と全くぼんやりして隙だらけに師匠が見せてるのに気が付かないというね。
だからその個人差は出ますけれどもやっぱりその大事なことは言葉よりもその空気感だったり空気を読むなんて事言いますけど楽屋の空気を読むっていうような言葉に出来ないから居させて見させて覚えさせる。
これお笑いどうなんですか?徒弟制じゃない?今もあるとは思うんですけどほとんどはその養成所とかオーディションを受けてっていうのが多いですよね。
又吉さん自身は?僕はあの養成所でした。
じゃあ師匠がいない?師匠いないんですよ。
お金払って入学金を払ってで1年間学校みたいなところに通ってデビューさせて頂きました。
はい。
そもそもどうしてこういう制度をね導入してるかっていうちゃんと経済学的な合理性がやっぱあるんですよね。
まあ「人的資本」っていう言葉がね経済学でありまして。
はい。
経済学の考え方です。
人的資本は普通2種類に分類されます。
これに対して…その特殊性ゆえに…だからまあ落語のようなその芸というものが非常に重んじられる。
そういう世界では徒弟制度が適しているというふうに考えられますよね。
なるほど。
先生と生徒だけじゃなくってやっぱり家族みたいな親子みたいなのにもなるんですよね。
ここが実はややこしいところで。
その子に自宅に入らせる。
財布を持たせるかもしれないわけですよ。
「千両みかん」みたいに持って帰られちゃ困るわけですよこれ。
そうですね。
ええ。
それほどの大金も入ってないんですけど。
信用できないと。
でも。
そういうことなんですよ。
すごくだから弟子師匠って一般社会にはなかなか無い今この現代においては。
すごく難しいと思います。
だから辞めていく子も多いです。
といって来たからって弟子には無償で実は御飯食べさせたり着物作ってあげたりしてるのでそれを得じゃないと思う人もいるわけですよ。
金がかかるじゃないかと。
つまり子供を持った時に喜びと感じるかお金がかかると見るか。
でも未来への投資自分をつないでいくものだと。
業界も発展するし。
だからうちの祖父は弟子を取らなきゃ駄目だって事はずっと言ってましたよね。
それはやっぱり教えたことを…切れてしまってはしょうがないんだと。
といって師匠には返せないんですよ。
その行為いわゆるかけてくれたお金もエネルギーも思いも。
下に託す。
で初めて親孝行なんですよ。
師匠孝行なんですよ。
なるほど。
さて落語界は基本的に年功制です。
入って数か月の見習い期間を経て前座となり3年から5年ほどで二ツ目になります。
実力次第ではあるものの入門からおよそ15年で真打ちに昇進するといわれています。
そうかぁ。
二十歳で始めたら35ぐらいなんすかね。
ということですよね。
だからそれが一応もうひとつあって「年功序列制度」と「抜てき制度」というのがあって。
実力のある二ツ目とかはそれがね早くちょっとなれたりするんですよ。
へぇ〜!落語協会に理事と言われる人がいて理事の噺家さんたちとあと席亭さんっていう小屋主とみんなで協議して「うんあいついいじゃないか」っていうと上がってくるんですよ早くに。
だけどまあ15年っていう事で上に上がると。
真打ちにどんどん上がっていってしまうと真打ちがすごく大勢になってしまうような感じが…。
大勢になってますね。
ヘヘヘヘッ。
ああそうですか。
大変真打ちがたまってますね。
あ〜。
大体どのくらいの割合で。
こんな図が出てますけど。
もうまさにこのとおりです。
真打ちの割合はなんと半分以上!一番偉い人が一番多いって何だか不思議な気がしますねぇ。
普通の会社などであれば偉い人のほうが少ないのに。
一体なぜかしら〜?はてな。
まさにこういう感じになってます。
だから辞める人ってのもあんまり聞いたことがないので。
(2人)う〜ん。
定年も無いので。
はいはい。
ああそっか。
でも亡くなった橘家圓蔵師匠がおっしゃってたのが…とても怖いことをおっしゃってましたけど。
まあ年功制の場合はよくこうなりがちだというふうに言われてますね。
で実はですね私が所属してる大学も大体教授と准教授と講師と3つ代表的なこの職位があるわけですけど。
教授ってどのくらいの割合いると思いますか?教授になるのは大変そうですよね。
だからすごく一握りしかいないっていう。
そういう感じしますよね。
実は教授がですね5割いるんです。
あっ半分は教授なんですね。
あ〜。
へぇ〜!で3割が准教授で2割が講師と。
じゃこれだ。
これなんです。
大学の教員も教授が一番多いのですね。
ほうへぇ〜!何でなんですか?それは。
先ほどの流れでいくと非常にこの特殊な人的資本ですよね。
特殊的な人的資本で徒弟制の部分がやっぱり結構残ってる。
で落語もそうだと思いますけどやっぱり芸を磨いてある程度の芸域に達すれば上に上げましょうですよね。
大学もそうなってまして。
えっ?落ちない?落ちない。
あっ同じだ。
いや〜。
同じですね。
そうかぁ。
なんか本来一番下が多くてだんだん選ばれた人だけがなれるっていうイメージがありましたけど。
お笑いはそうじゃないですか?お笑いはそうですね。
僕らはもう若手が何千人といて。
あっそうですね。
これですよね。
ほんの一部の人だけが。
上いいですね。
この札束と車。
いやそんないかにもお金持ちはいないですけど。
でもあれなんですよ先生。
確かに逆ピラミッドである事は数からしてそうなんですけれども中身はこっちなんですよ。
お笑いと一緒で。
ああ。
結局は。
なるほど。
つまり保証が無いので。
そうか。
みんな稼げる訳でもない。
そうなんですよ。
年功制によって真打ちになっても人気が出るかどうかは別物。
才能と努力と運次第…。
芸の世界は大変です。
わはっ!さあ話のほうはこんな岐阜県から遠く離れた場所から始まりまして高い塔の上で鐘が鳴ります。
「ゴーン」。
実は花緑さん新しいスタイルの落語に挑戦しています。
ここはイタリアはフィレンツェ。
(笑い声)フィレンツェから始まる落語って聞いたことないでしょ?
(笑い声)私も聞いたことない。
初めてやります。
はい。
イタリアだと思うと今聞いた鐘の音もちょっと違って聞こえるかもしれませんよね。
だって思い浮かぶ…。
着物ではなく洋服を着て椅子に座り現代を舞台にした新作落語。
これが花緑さんの考える「落語の未来の姿」です。
いや〜!もう洋服を着て椅子に座ってお話をされるという。
はい。
へぇ〜!まあそんな言葉は無いんですけど「同時代落語」という勝手な名前を付けて僕やってるんですけど。
これの思いはどこにあるかって言うと落語は江戸時代に生まれたって言われている。
その時代のことを考えたときに落語家も着物を着てるけどお客さんも着物を着ていた。
ともに正座をしてお互いに住んでいる長屋の話。
すべてが同時代だった。
はいはい。
江戸時代にね「安土桃山時代は…」とか言ってないんですよね。
そんな古いことをしゃべる専門の人ではなかったんですよ。
今のことをしゃべる人だった。
だからもし落語が現代にもし生まれていればねえやっぱりこの洋服で今椅子に座ってるこの形でお客さんと同時代じゃないですか。
同じ住んでる今の現代の話ですから。
すべてが同時代になる。
もうひとつはグローバルになるんじゃないかと思っていて。
つまり着物に座布団だと海外の人がなかなか手が出せない。
でも別に洋服でTシャツ1枚でもいいし何でもいいんですよ。
で腰かけるっていうことであればアメリカはスタンダップコメディーがシットダウンコメディーになるかもしれないし中国は「三国志」を落語という形態で一人演劇として語るかもしれない。
まあヨーロッパはシェークスピアを一人演劇としてこの手法でやるかもしれない。
と世界規模になるんじゃないかって僕は期待があって。
今の師匠のお話って非常にこう重要なポイントがいくつかあるんですよね。
やっぱり伝統文化の部分をこう堅実に守っていこうっていうふうにするとどうしてもその日本の中でしか理解者がいない。
日本特にもうこれから子供も少なくなるわけですし人口も減っていくのでマーケット自体がこう縮小していくと。
その中でやはりどっかを変えてどれだけ大きいマーケットで勝負していくかっていう。
その辺りの要素をですねちょっとボードで2人にお示ししたいなと思うんですね。
中島先生は日本の伝統文化の特徴を「伝統文化性」「競争性」そして「商業性」という3つの要素に分析できると考えています。
伝統文化はこの3要素をそれぞれ戦略的に取り入れて現代まで生き残ることができたといいます。
例えば茶道や華道の場合お茶をたてる花を生けることで精神を磨くことを追求します。
高い芸術性と格式という伝統文化性に重点を置いています。
柔道の場合はスポーツ競技として国際化することに成功しました。
競争性を重視したのです。
どの位置が最も生き残りにふさわしいかは時代背景や伝統文化の特性によって異なるといいます。
でそれは非常に私は理解しやすいなと思ってるのが実はまあ大相撲でして。
大相撲はどこに来るのかと。
実はこのど真ん中に来るというのが。
おお。
私の解釈ですね。
すべての要素をバランスよく持っていると。
へぇ〜!例えば横綱土俵入りとかご覧になるとどんな感じしますか?伝統的な感じしますね。
ですよね。
(2人)はい。
で一方で本場所があってこう優勝決定戦とかになったら。
そうですね。
競争性もありますね。
まさに。
勝ったものがちゃんとこうたくさん賞金も取れるっていう。
確かにそうだ。
あと最近もうず〜っと連日のように「満員御礼」の垂れ幕が下りている。
そんな伝統文化的なことやってるのにお客さんも入ってる。
バランスがいいってことですか?そうなんですよ。
この大相撲っていうのは日本の数ある活動の中でもこの3つのバランスが一番うまくとれてる。
まあスポーツに。
ジャンルとしてはねスポーツに分類されますけど。
ということでお二人にもですねご自分に関係するその分野というか業界をこのボードの中に貼り付けて頂くとありがたい。
そうか。
どこだ?伝統文化であることは間違いないんだけど分かんないですね。
どこにいるんだろう?僕。
だって…。
これ変な聞き方しますけど先生はどこだと思いますか?僕落語。
今までのお話伺ってどうですか?又吉さん。
商業性もまあある程度はありますよね?人気もありますし伝統文化性ももちろんありますし競争性がそんなにあれなんで歌舞伎…。
やっぱり近いとこですかね。
う〜ん。
近いかな。
よりちょっと競争が。
コンクールあったりしますもんね。
あと何かそういうふうにこう。
落語のコンクールとか。
この辺りですかね。
そうですね。
歌舞伎のちょっと左辺りぐらいがいいかもしれませんね。
うん。
僕のお笑いは…僕もちょっと自分じゃよく分からないんですけどこの辺かなと思うんですけど。
ああ商業性はありますよね。
確かに。
商業性はあるんで。
今すごいですよねお笑い。
確かに。
競争性もあるじゃないですか。
ありますね。
大会も結構多かったり。
うんうん。
勝ち上がっていった人がこう世に出るチャンスをつかめるみたいなイメージがあるんで。
そうですね。
伝統文化性っていうのがあんまり無い。
そうですね。
そういうんじゃない…。
ただまあここ50年で言ったらあるんで。
落語とか歌舞伎と比べたらあれですけどこの辺かまあこの辺をこうタイプによって。
う〜ん。
動いてんのかなっていうイメージですかね。
だから落語も僕はここの伝統芸能の匂いっていうのがすごくあることによって支えられてる部分もありますけどでもあることによって敷居が高いと言われて落語は実はそんなに高くないんですけれども。
もっとなんて言うんでしょう。
こっちのほうにいたい。
うん。
その又吉さんと同じ所にいたい。
はいはい。
その最初のスピリットとしてはねえそのみんなが新作をやってたわけでだんだんこれが古典に上がってきて。
さあここで古典芸能としては今成功してるけどこの先古典芸能でいいのか?バランスよくやっぱりいったらいいのか?だから僕はやっぱりやってるその同時代落語ってやらして頂いてるのはどっかでもうちょっとそのこっちにう〜ん来たい。
今日は落語と経済学でお話ししてきましたけどねえ。
まさか落語を経済学で読み解けるとはねえ。
ちょっと不思議な気もしましたけど。
僕は落語っていうものはホントにやってるというか動機は好きだからやってるんだっていうこの気持ちだけで落語家っていうものがね存在してると思ってましたけどもっともっと深くね広く見ていくとこんな見方があるんだってものすごい勉強になりました。
経済学では……って考えるんですよね。
だからまあ落語も江戸時代からずっと長い歴史を持って今でも続いてる。
それには必ず理由がある。
そういうことがですね今回のこの番組で説明できたのはよかったなというふうに思います。
はい。
今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
「時代という軸を考える」。

(子どもたち)一休さ〜ん。
(一休)あん?2016/12/14(水) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「笑って納得!落語の経済学」[解][字]

空前の落語ブーム到来!実は落語のお話にはお金の価値や財産の生かし方など、経済学の知恵がざっくざく!さらに見習いから真打ちへ、落語家への道も経済学で徹底分析。

詳細情報
番組内容
あの柳家花緑師匠もびっくり!「花見酒」や「千両みかん」など落語の演目には、今の暮らしに通じる経済学の知恵が盛りだくさん。笑いと共に学べるなんてまさに一石二鳥!さらに又吉直樹が、未来の真打ちを夢見て修業の真っ最中という“前座”の一日にも密着取材。なぜ若者は落語家を目指すのか?今なお続く落語界の徒弟制度を経済学で考えると、そこには「伝統文化」の生き残り戦略が見えてくる。
出演者
【ゲスト】柳家花緑,柳亭市馬,【出演】又吉直樹,【解説】慶応義塾大学教授…中島隆信,【語り】朴ろ美