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書き起こし オイコノミア「人生というゲームに勝つ!」 2017.01.04


(又吉)「よし!キャッチしたぞ!もうちょっとだ。
ウィーン。
頑張れ!頑張れ!あ〜!また落ちた」。
ああ!負けてしまった。
声がちょっと小さいからかな。
(安田)又吉さん何やってるんですか?あっ安田先生。
これが1つも取れないんですよ。
おお。
じゃあ僕が取った分を差し上げます。
ええ!?でも先生僕別にこれが欲しいわけじゃなくてこのゲームに勝ちたいんですよ。
ゲームに勝ちたい。
実は僕の専門にしているゲーム理論がゲームと関係があるんですね。
僕も実は中学校高校とゲームセンターに通ってたりしたんですけど。
そうなんですか?そのおかげでゲーム理論が勉強しやすかったって部分があります。
今日はちょっとゲーム理論を勉強しながらゲームの勝ち方について勉強していきましょう。
よろしくお願いします。

 

 

 

 


今日のテーマは「ゲーム」。
中でもコンピューターで人と人が闘う対戦型格闘ゲームは毎年世界大会が開かれ2万人を超す観客で盛り上がります。
ゲストは格闘ゲームの世界大会で優勝を重ねてきた梅原大吾さん。
3つのギネス世界記録を持ち強じんな精神力と獣のような俊敏さからゲーム界では「神ビースト」と呼ばれています。
そして格闘ゲームを経済学で斬るのはゲーム理論の旗手安田洋祐先生。
華麗な経歴で実は大のゲーム好き!今回経済学界気鋭のゲーマーが格闘ゲームのプロに挑む!そこに…まさかの結末が…。
なんだ?これは!ゲーム世代の30代男子が語り合います。
今日はですね梅原さんの人生をたどりながらゲームを経済学でひもといていきたいと思います。
経済学にはどういう印象をお持ちですか?
(梅原)経済学って何かいろいろと応用利きそうな学問だなという印象はあったんでそれがゲームでも当てはまるんだなというのでまあなるほどなとは思いましたけど。
では早速。
こちらが梅原さんの年表ですね。
1981年青森生まれ。
はい。
僕80年生まれで先生も80年生まれなんですよ。
同年代ですね。
同年代で。
はい。
5歳の時にファミコンを始めると。
結構早いんですかね?どうですかね。
まあそのぐらいじゃないですかね。
すごい早すぎるという訳ではない。
うん。
これが当時の?当時もうちょっと小さいと思いますけど。
4歳とかそれぐらいですかね。
あっこれは?僕ですね。
安田先生?もう机に向かってるじゃないですか。
アハハハッ。
このころからあの研究者に…。
いや早すぎますよ。
何か絵でも描いてたんでしょうけどね。
そして10歳の時に本格的に対戦型格闘ゲームを始める。
はい。
これはどういうきっかけで?たまたま行ったビデオレンタルショップにスト2があってそれで当時は家庭用ゲームとゲームセンターのゲームにすごい性能というか差があったのでこんな面白いゲームが世の中にあるんだっていう事でビックリして。
そこから…。
それがきっかけでしたね。
僕も割とその当時なんか駄菓子屋の裏にあったりとかしてそういうとこでよくやったりしてましたよね。
懐かしいです。
そして…はい。
そして17歳でストリートファイターゼロ3で世界大会で優勝。
はい。
すごいですよねこれね。
ものすごいやっぱり練習されたんですか?やってましたね。
360日ぐらいはやってました。
へぇ〜!もうほぼ毎日。
ホントに毎日ですね。
ああこれが当時の?寝起きだと思いますけど。
寝起きっぽいですね。
ええ。
僕は中学高校の頃ずっとサッカーをやってて僕も毎日練習してたんですけど。
ああこれが高校の時の。
どこですか?これなんですよ。
(安田梅原)あ〜!ええ。
もう何か今の又吉さん。
確かに。
ああ。
これは選抜やった時ですね。
韓国遠征に。
高校生にして海外遠征まで行かれてたんですね。
そうですね。
まあ必死で中学高校は練習したんでね。
ええ。
安田先生は当時?僕すごいなんかどうでもよさそうな文化祭の写真が出てきますけど。
SHAZNAっていうIZAMUの。
はいはい。
何か文化祭でステージでこういうの見せたりするのもあって。
後ろに写ってるのは?母親ですね。
ああ。
お母様ですか。
オンエア出るんですね?そうです。
すごいなんかお若いですね。
へぇ〜!突然汗が流れ出してきましたが。
なるほど。
そして梅原さん23歳の時ですね。
世界最大級の格闘ゲーム大会EVOでこちら「背水の逆転劇」を果たす。
これは試合の動画なんですけどこれのおかげでプロになれたのかなと思いますね。
今思うと。
ええ。
これは結構有名なんですよね。
「又吉さん知らないんですか!?」ってツッコミたくなるぐらい衝撃的な動画で2004年の僕当時アメリカの大学に留学してたんですね。
ああそうなんですか。
で海外の大会で活躍している日本人ってすごい勇気づけられた。
もうね何度見たか分かんないですね。
へぇ〜!つらい時とかに見て勇気づけられてました。
その映像があるらしいんでちょっと見てみましょう。
はい。
2004年に行われた格闘ゲームの世界大会。
のちに「背水の逆転劇」と呼ばれる闘いです。
対戦相手は…梅原が操るのは白い胴着を着た「ケン」。
ジャスティンが操るのは「春麗」。
対戦が進むと春麗のパワーゲージに比べケンのパワーはほぼ0になってしまいます。
これ以上攻撃を受け防御できないと負けてしまうという背水の陣。
春麗はとどめを刺そうとキックを連発。
しかしこの時梅原が春麗の連続キックを全て防ぎます。
そして反撃に転じ逆転KOするのです。
もう一度見てみましょう。
春麗が連続キックを仕掛けてきます。
全てのキックを正しく防御した事を示す火花が出ています。
ピカン!ピカン!ピカン!更に空中でもガード。
そして反撃に移ります。
下降しながら跳び蹴りをし必殺技の連続ではいKO!「奇跡の37秒」とも呼ばれゲーマーの間では伝説の試合として知られています。
すごい闘いでしたね!そう。
会場も盛り上がってましたし。
あの雰囲気すごいですね。
ねえ。
ある程度イメージ出来てたんですか?どういう事考えてたんですか?ゲージ0になってから。
あの技術って日本でもまだ新しかった技術だったんですね。
ああいうのを連続して全部ブロックするというのは。
まあ普通はこんなの返せないから事実上詰み。
今まで1回も返された事ないっていう感じで打ってきたんですね。
それも何か戦略的な駆け引きを感じますよね。
こっちからすると多分こういう技術があることを知らないだろうという読みがあったんで狙ってはいましたね。
どうせ打ってくるんだって。
へぇ〜!ある意味相手は返されてからの事は全く想像してなかったから。
あれで試合終了だと思ってるわけですもんね。
向こうからすれば。
よし勝ったって思ってる状態。
そうですよね。
ところがその年梅原さんはゲームの世界を去ります。
1回ゲームを辞めたという事ですか?というかさっきの動画の大会に出てもうゲームやるの辞めようと思って出てるんですよね。
最後は記念に出ようってぐらいの気持ちでしたね。
それよく決意できましたよね。
そうですね。
でも当時2223ぐらいだったんですけどたまたま同世代が同じバイト先に3人いてそれまではあんまり自分の人生を見て見ぬふりしてきたところがあったんですけど。
将来どうなっちゃうのかなとか。
でもその3人が同時に大学卒業してそれぞれの道に進んだときにあれ?何で俺だけその節目がないんだろうって思って。
ハハハッ。
ゲームがプロになるなんてことは夢にも考えてなかったのでまあいいかげん好きな事追求したいけどそれで人生を棒に振るわけにもいかないので。
そういう決断に至るまでのこう考えてたのはいつぐらいからあったんですか?一番衝撃的だったのは衝撃的というかガッカリしたのはこの世界大会なんですよ。
17歳の。
はい。
テレビ放映されたんですよ当時。
でそれでなにかプロになるかどうか分かんないけど先が見えない自分の人生に何か変化が訪れるんじゃないかなと期待はしたんですけど何にも…何にも変わんなかったんですね。
それはそうなんですけど。
近所の八百屋のおじさんに「テレビ出てたね」って言われたぐらいの感覚。
だからそのあとはトップのレベルにはいましたけど気持ちの上では惰性でしたね。
駄目なんだ。
この世界じゃなんも変わんないんだなという事で。
梅原さんが次に選んだのは同じ勝負の世界でもプロのいる麻雀でした。
毎日360日ぐらいまた麻雀をやって3年ぐらいですかね。
3年ぐらいでまあ誇っていいだろうと思えるレベルにはなりましたね。
その集中力すごいですね。
360日麻雀やってたんですか?まあそうですね。
毎日やってましたね。
ある程度の知識はもう最初から。
いやあの雀荘でバイトしながらだったんですけど同じ従業員になんて下手なやつが入ってきたんだろうって…。
へぇ〜!思われてましたね。
そういう3年間があってそのあと26歳「介護の仕事を始める」ってありますけど。
という事は麻雀も辞めてしまうんですか?辞めちゃいましたね。
勝てるようになったなぁというとこで辞めちゃいましたね。
へぇ〜!先生いかがですか?これは。
いやなんかもう格闘ゲームをねその世界一になったあとあれだけ話題を呼ぶプレイをしたあとスパッと辞めて全然違う麻雀に行ってそこも3年で辞める。
これなかなか実はできなくてどういう事かと言うとこれ経済学でよく言う「サンクコスト」。
梅原さんの場合ゲームに費やしたお金や時間労力を指します。
自分にとって向いてるか向いてないか分かんなくても今までその分野とかその要は能力を磨くために時間であったりお金であったり投資しちゃってるとそれってもう返ってこない投資なんだけどそこに引きずられると次に行けないというのが割と多くの人で出てくる行動なんですけどそれがないっていうのがね。
なかなかやめれないものですよね。
結果が出てなくてもやめれなかったり。
経済学だとこういったサンクコストを意識せずに意志決定しましょう。
まさに梅原さんみたいな形で新しい世界に飛び込むと。
要は過去のコストとか投資に引きずられない形で意志決定しましょうと僕ら言うんですけどそうは言っても自分のことになるとなかなかやっぱりこのサンクコストね頭の意識から外すのって難しかったりするんで。
切り替えるの大変ですよね。
そして28歳の時ゲームのプロになるチャンスが巡ってきます。
これまたゲームの世界に戻ってこられた…?そうです。
新しいゲームが出るって話になって。
はい。
で友達に「たまにはゲームをやらない?」って誘われて。
はい。
まあ趣味でやってもいいかなと思えるぐらい何て言うのかな。
こう取れてきて。
角が取れてきて。
なるほど。
はい。
ゲームがない自分って特別な事がないなぁって思い始めてた時期だったんで趣味程度だけどやろうかなって何となく自分を許し始めて始めたら復活したという話になって。
で話はここに戻るんですけど「うわっすげえ試合だ!すげえやつがいるな!」ってなったんですけど本人辞めてるじゃないですか?はい。
あいつどうなったんだっていう事だけは結構盛り上がってた…。
なってたんですね。
なってたらしいんですよ。
新しいゲームが出て始めたという事が海外の方に伝わってあいつ始めたらしいぞと。
じゃあ呼べよという事で特別に世界大会に招待してもらって。
はい。
当時はそんな世界大会に出る気も何にもない趣味でやってたんで。
でもせっかくだしという事で行ったらその世界大会で優勝しちゃったんです。
また優勝しちゃった!?しちゃったんですよ。
その時にまあちょっとドラマチックですよね。
なんで企業があいつちょっと違うんじゃないかという事でもし何か生活面の問題があってゲームに集中できないんだったら支援してやるって事で。
へぇ〜!そうなんですよ。
でプロっていう。
でプロゲーマーになってまた優勝する。
はい。
へぇ〜!プロゲーマーになるって事は要はスポンサー契約とかをしてって事ですよね。
これも結構重要だと思うのは経済学でコミットメントという考え方があるんですけど。
経済学ではコミットメントがパフォーマンスを上げやすくすると考えます。
自分のこう選択肢とか手足を縛るという意味があって大々的にプロゲーマー宣言もしてスポンサーも付いてもう自分1人の都合で簡単には辞めれないと。
ある意味追い込んでるんですよね。
でも追い込むことによって恐らく今後のパフォーマンスを上げてくとかより自分の中での自意識というか自覚を強めるというようなプラスの効果を期待すると。
なるほど。
コミットメントするとやっぱりいろんな事がうまくいきやすいんですか?プロゲーマーを名乗らずにやってた時というのは自分はそれこそ麻雀をやりたいとか介護に行こうと思った時にスッと行けると思うんですけどそれができないという意味では状況次第によってはマイナスの事が起こりうると。
はい。
だけど自分がゲーマーとして続けていくんだったら非常にプラスの事も大きいという。
そういう意味で言うと僕の場合で言うと18で高校を卒業してわざわざ上京してその養成所にお笑いの養成所に入ったっていうのがコミットメントやったかもしれないですね。
ただのねお笑い好きだってことを周りに言ってるだけだと本気で芸人になるか分かんないですけども学校まで通うようになると今更辞められないというところが出てきますよね。
なるほど。
コミットメントを自分でうまく活用したらいい結果が生み出せる場合もあると。
うん。
あとは最終的なねキャリアの選択に関して言うと梅原さんいくつか…もともとゲームをやっていて麻雀やって介護をやって最終的にゲームに戻ってきたときに比較できたと思うんですよね。
比較できることによって迷いが減った部分というのもあるんですか?ありますね。
もうその結局11歳ぐらいで始めてるし好きなものだったんで。
他の事がどれぐらい向いてるのかって分かんなかったんですよね。
結局麻雀も努力で上達はしていったんですけどゲームの時ほどなんか自由自在な感じはなかったんですよね。
何でゲームってこんなにしっくりくるんだろうなっていうのが。
他の人と何が違ったのかなと振り返る時があるんですけど。
ああ辞める気なかった事だなと分かる。
気付くんですよ。
自分だけが辞める気が0なんですよ。
諦める気がないっていう状態で。
でプロでゲームやっていいっていう時にあああのあの得意な事やっていいんだみたいな感じでその感謝はすごかったですね。
絶対絶対続くかぎりは頑張ろうっていう。
他の道もね経験したことでやっぱりゲームが一番向いてると。
そうそう。
ようやくこの年になって気付いて。
そうか。
確かにそれやってみないと分かんないですもんね。
どこに就職するかとかどの道を選ぶかというのは基本的にやったことがない世界なわけじゃないですか。
経験せずに道を選ばなきゃいけなくなった時になかなかこう決めきれないというか選びきれないって。
僕自身も研究者目指すという道に当時だからちょうど就職活動の時期にさしかかって決めきれなかった時があるんですよ。
その時に何をやったかと言うと何を失ったら嫌かって逆に考えてみたんですよね。
何かを選ぶって事は他の道を要は削るという事じゃないですか。
何を失ったら一番痛いかなって時に今好きでやってる勉強ができなくなる。
経済学もうちょっとやりたかったのにそれを諦めるってのは自分にとってすごいマイナスだなというのにそこで気がついて。
だから何を得るかじゃなくて何を失うかっていう。
そうか。
僕も親に芸人やるために東京行くっていうときに反対された時のために用意してた言葉はそれに近かったですね。
芸人やりたかったなとか思いながらその先就職したとしたら今後テレビ見てお笑い芸人見るたびに俺の方が出来るというふうに思いながら楽しくない人生を。
あの時に芸人やってたら俺はもっと人生楽しかったのにって永遠に思い続けて生きていかなあかんようになるから1回やって失敗したら気持ちよく他の芸人を目指してる人たちを祝福しながら自分の人生を送れるからという説得の準備をして向かったら「いいよ」みたいな感じだった。
(笑い声)あのう使うとこがなかったんですけど。
いやいや。
全く一緒でした。
一緒ですか?全く一緒。
プロを目指すときにどうしようかなって実は結構迷ったんです。
話が来たときに。
この世界は食えないだろうとかあったんですけど。
同じようにもしこれ…4パターンあって。
ゲームのプロやんないで…でも普通に生きて幸せでも多分心の引っかかりあるなと思ったんですよね。
俺でももっともっと何か充実した人生があったんじゃないかなっていう。
でもプロで不幸せでも多分後悔がないんですよね。
だからそういう心にこう何て言うのかモヤモヤしたものを残さないようにするためにチャレンジして結果は今のところは何とかなってますけど。
プロゲーマーになってEVOで2年連続優勝してそして29歳で「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」。
ギネスブックにも認定された。
はい。
やってよかったですよね。
ホントにやってよかった。
ホントにやってよかったです。
ああなるほど。
更に2つのギネス世界記録にも認定され人気実力を兼ね備えた世界有数のプレイヤーとして活躍しています。
ではこれから日本初のプロゲーマー梅原大吾さんと経済学界一のゲーマー安田洋祐先生による格闘ゲーム対決を行います。
ゲーム界の神ビースト梅原大吾さんの入場です。
(拍手)よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
続きまして挑戦者安田洋祐先生です。
(拍手)よろしくお願いします。
お願いします。
梅原さん今の心境はいかがですか?安田先生若い頃に結構格闘技のプレイされてたそうなのでどういうプレイをするのかすごい楽しみですね。
安田先生いかがですか?出てて良かった「オイコノミア」。
やってて良かった格闘ゲームって感じなんですけど。
なるほど。
達人の胸を借りるつもりで。
はい。
はい。
まずキャラクターを選びます。
梅原がリュウ安田がケンを扱い3セットマッチで戦います。
さて勝つのはビースト梅原かゲーム理論安田か?緊張の一瞬。
それではゲーム開始です!最初に安田が打撃するもかわされます。
梅原も打撃を仕掛け安田ガード!打ち合いを続けお互いを読み合います。
・うまいですね。
しかし終盤安田は梅原の打撃を防ぎきれません。
はいそして…はい!KO!・さすがですね。
続く第2ラウンド。
梅原の打撃が続き必死にガードする安田!ガードしております。
ガードしております。
先生もうまいですよねでもね。
安田反撃するも梅原から足蹴り投げ技。
はい。
ダメージを食らいま〜す!そして最後には必殺技ではいKO!・なんだ?これは。
フフッ。
はい。
先生お疲れさまです。
参りました。
・梅原さんの勝利です。
どうでした?やってみた安田先生の感じは?やっぱり昔結構やってたんだなというのはやってて分かりましたね。
そうですねうまかったですよね。
先生いかがでした?ふだんゲーム理論やってるんですけど実際プレイすると戦略もクソもない。
ハハハハッ。
ここからは安田先生にゲームの分析をお願いしたいと思います。
ゲーム理論を使ってやられるんですよね。
そうですね。
梅原さんはゲーム理論って聞いたことありますか?名前自体は聞いたことあります。
ゲーム理論自体は……学問分野なんですね。
ここでまずゲームには3つの重要な要素があります。
まず1つ目がプレイヤーですね。
注目している現象の当事者とか参加者です。
さっきの格闘ゲームで言うと僕と梅原さん自身はもうプレイヤーなわけですね。
はい。
各プレイヤーがそれぞれ戦略を持ってると。
選択肢の中から何を選ぶかと。
最後利得と。
これはゲームで言うと得点にあたるようなものですね。
(2人)うん。
実際にストリートファイター5僕と梅原さんでプレイしたんですがやっぱり人対人なんでいろいろ読み合いの要素がありますよね。
そこのある一事例について分析を進めていきたいと思います。
はい。
ビジュアルで簡単に理解するために利得表と呼ばれる表を使っていきたいと思います。
先ほど梅原さんリュウをプレイして僕はケンをプレイしました。
ここに今ある打撃と投げ技これは今リュウの選択肢だと思ってください。
で対するケンなんですけれども打撃攻撃に備えてガードをするかあるいは相手が投げを狙ってくる。
投げ返しを狙うという形の対応策をここでは考えます。
実際の先ほどの試合の中で僕が転倒しているところ1回起き上がり投げられたような気がするんですけどまあそういった事が実際にも起きると。
先ほどの闘いの一場面です。
リュウにとって選択肢は打撃か投げ技の2つだとします。
それに対してケンはガードするか投げ返すかの2つと考えます。
実際のリュウは投げ技をかけそれに対してケンはガードした結果投げられました。
4とおりそれぞれの場合においてリュウがどれぐらいダメージを与えられるかっていうのを数値で表したのがここでの利得になります。
例えばリュウが投げ技を狙ってるんだけれどもガードをしてしまうとガードをすると投げられちゃうんですね。
なので投げ技のダメージとしてここで20。
リュウが投げ技を狙っていて投げ返しをすると今度はリュウのダメージになるのでここではそれを反映してマイナス10という形にしておきます。
同じようにリュウが打撃をしてケンがガードするとリュウのポイントは0。
リュウの打撃に対してケンが投げ返そうとすると打撃されてしまいリュウのポイントは30になります。
梅原さんこのポイントの付け方はどうですか?妥当ですか?まあこれはゲームとかキャラクターによって変わりますけどまあ大体こういう感じだと思いますね。
なるほど。
パッとこの表を見て例えばリュウ打撃投げ技ありますけれどもどっちの方がよさそうかとかなんか予想ついたりしますか?パッと見たら打撃でいっちゃいそうですけどね。
なんとなく数字もね打撃大きい感じしますよね。
はい。
例えばリュウが必ず打撃でくるっていうのがケン側に読まれてしまうとこれ確実にガードしてダメージが全然入らない。
はい。
一方で確実に投げでいくとなると今度は投げ返しを狙われるのでダメージを与えられないどころか自分がダメージを負ってしまうかもしれない。
このゲームの面白いところは…う〜ん。
じゃあどうするかって事なんですけれどもここで例えば自分が今ケンの立場でちょっと考えます。
ケンどうやって防ぐか?ガードばっか固めてると投げられちゃうし投げ返しばっかり狙ってると打撃を食らってしまう。
まあよく分かんないので半々で備えようというような状況を考えてみましょう。
はい。
つまり1/2の確率でガードしますと。
で1/2の確率で投げ返しを狙います。
相手に読まれないように半分ずつやりましょうと。
この状況で仮に又吉さんリュウだとすると打撃と投げ技どっちをやりたくなりますかね。
打撃ですね。
打撃。
もうそれ大正解なんですけど。
これ今仮に打撃を選ぶと半分の確率でダメージを与えられない0。
残り半分の確率で30のダメージを与えられるので平均的にはこれ15のダメージをケンに対して与える事ができると。
一方投げ技を狙ってしまうと半分の確率で20半分の確率で今度は10を失うので平均すると5になるんですね。
これ15の方が得ですよね。
うんそうですね。
ケンがガードと投げ返しを1/2の確率つまり半々で行うときリュウは打撃を選ぶ方が得になります。
これさっきの僕と梅原さんの試合を思い出して僕がケンだとすると梅原さんはホントに上級者なので僕はこういう1/21/2みたいな備えをしてる事がバレると恐らくすぐバレるんですけどバレると打撃攻撃を食らうようになってくるんですよ。
僕からするとこの1/21/2という確率はかなりまずい守り方になってくるんですよね。
どういう確率でガードと投げ返し備えれば僕にとって損失を一番最小限に抑えられるのかが今度気になってくるんですけどそこをですね別のまたフリップを使ってご説明したいと思います。
ケンはガードと投げ返しを半々で行っているといずれリュウに戦略を読まれて打撃ばかりを受けます。
ところがある確率でガードするとダメージを最小限に抑えられるといいます。
それは一体…?ケンがガードする確率を横軸その時のケンのダメージを縦軸に取ります。
リュウの打撃に対してケンが完全にガードするとダメージは0。
ガードせず投げ返しを狙うと30になります。
この2点を結ぶとケンがガードすればするほどダメージが少なくなることが分かります。
一方リュウが投げ技を仕掛けケンがガードするとダメージは20。
リュウの投げ技にケンが投げ返しをするとマイナス10になります。
この場合はガードすればするほどダメージを受けるようになります。
このとき打撃と投げ技の線が交わる点があります。
それは2/3。
つまりケンが2/3の確率でガードすると打撃でも投げ技でも同じダメージに抑えることができます。
なので僕からすると梅原さんみたいな上級者に狙われたときに自分の身を一番守るためには…更に面白いのは同じような分析をリュウに対しても行うことができて。
今日はそこの細かい計算は省略するんですけどリュウに関して言うと1/21/2。
今ここの1/2を拝借してリュウはですね1/2で打撃1/2で投げ技を狙うというのがゲーム理論の理論上出てくるこう混ぜ方になってくると。
でケンに関してはガードを2/3と投げ返しを1/3で狙うというのがこの利得のもとで導かれる理論予測になります。
でこれがですねゲーム理論の言葉で「ナッシュ均衡」と呼ばれる概念なんですけれどもこの確率のもとでお互いに戦略を選び合っているとどっちのプレイヤーもですね自分だけ確率をいじって利得を上げる事がもうできないんですね。
ああ。
うん。
…を指します。
ゲーム理論の根幹をなす概念で発案者のジョン・ナッシュはノーベル経済学賞を受賞しました。
このゲームの場合ケンが2/3の確率でガードしリュウが打撃と投げ技を1/2の確率で行うのがナッシュ均衡になります。
ゲーム理論的な分析をしてみたんですけど感覚的にどうですかね?いや。
もうふだんやってる事ですよね。
でもそんな正確に厳密に分かるんだったら計算式を知りたかったんですけど難しいってことですね。
要するに。
フフフッ。
何となく肌で感じてるのと一致してるんですよね?それはこちらは統計なんですよね。
はいはい。
何回も何回もやっていい結果が出る選択のバランスを取ってるつもりなんですけど。
実際にスポーツの世界でこういったゲーム理論の予測とプロの選手たちのとる行動はほとんど一致する例というのはいくつか知られてるんです。
1つがサッカーのPKですね。
ペナルティーキック。
PKでいうと例えば片方のプレイヤーがゴールキーパー。
片方がキッカーになるんですけど右を狙うか左を狙うかという形でその戦略を立ててあげるとほとんど同じような分析になります。
次にですね打撃攻撃によるダメージが今30というふうに仮定してるんですけどこれが大きくなった。
ここでは60に増えたらどうなるかっていう事も考えてみたいと思います。
60に増えたときにここでの理論予測の確率ってどう変わると思います?この1/2から確率が増えると思いますか?減ると思いますか?あ〜。
実際の対戦の現場というかでは打撃が減ってる印象がありますね。
減ってる!おう。
印象ありますね。
いやまさに聞き出したかった答えで理論予測もそうなんですよ。
え〜何か増えそうな気しますけどね。
与えるダメージが大きくなってるんですもんね。
相手にされなくなっちゃいます。
こんだけ数字が大きいと。
バカバカしくて。
実際にこれ計算してみると1/2から1/3に減っちゃうんですね。
打撃が。
ポイントはまさに梅原さんおっしゃったようにこれだけ打撃の…ガードする確率が高くなるので打撃攻撃を狙ってもほとんど決まらなくなるんですね。
もうほとんど打撃してもガードでそれはちょっと膠着状態みたいになっちゃうという事ですか?当然そのそんなの食らったら勝負が決まっちゃうぐらい高いダメージだったりするとみんなその選択肢を取らなくなっちゃうんで。
投げ返しを狙う事自体にリスクがあり過ぎるという事ですか?そうですね。
でも逆にやりやすいんですよ。
というのは読みやすいんですね。
60の攻撃を食らいたい。
さすがに食らいたくないだろうって読みやすいんでふだんなら迷う場面でじゃあ投げとくかってなるんですけど。
さっきみたいにどっちが得か微妙だなっていうときはかえって困るんですよ。
相手が何するか分からないから?そうなんです。
これぐらい差をつけてくれた方が上級者は勝ちやすいんですよね。
相手の思考が読みやすくなるので。
ゲーム理論がその格闘ゲームの中でも生きてるって事ですよね。
そう。
いやもうだから自然とこういった勉強をしないでも肌感覚で分かってる人というのがまあ梅原さんだけじゃなくて実際のねプロスポーツの世界でもトッププレイヤーというのは大体そうだと思うんですよね。
ええ。
ゲームはすごい楽しいんですけど夢中になり過ぎるっていう怖さがあると思うんですね。
梅原さんはプロとしてどうお考えですか?特に格闘ゲームというのは刺激が強いゲームなんですね。
そのキャラクターを攻撃するし音は大きいし光は出るし何より勝った時に勝ったという満足感が得られてちょっと日常にはない刺激なんですよ。
すごく刺激的だっていう事を自覚してこれをやり過ぎると他の事がおろそかになるんだっていう危機感を持ってきちっと区切ってやるべきだなと思いますね。
分からずにそこに没頭するんじゃなくて分かったうえで必要に応じて没頭すると。
はい。
経済学でも今お話し頂いたような問題というのは「アディクション」として分析してます。
これカタカナ語ですけど日本語だと嗜癖ちょっと難しい漢字を書きますけど。
アディクションにも経済学の場合2種類あるって考えるんです。
1個はある意味合理的アディクションといわれる問題で依存してしまうかもしれないけどそのことを事前の自分がきちんと判断をしていてそれを踏まえたうえで例えばゲームをするとかあるいは飲酒をするっていうタイプですね。
そこはある意味問題のないタイプのアディクションになってくる。
はい。
もう一個はそうではないタイプ。
一旦ゲームをやり始めるとかお酒を飲み始めると将来の自分ってのは変わっちゃうんだけどそれを考慮に入れずに最初の1杯を飲んじゃう。
最初のゲームを始めちゃうっていうようなタイプですよね。
その場合には何らかの形ではまり続けるやり続けるという事を自制する仕組みを作っておかないとあとで後悔してしまう。
例えばもう自動的にこう要は電気が止まっちゃうとかゲームはしばらくプレイできないようなプログラムを埋め込んじゃうとかってやるとこう制御できるようになってくる。
今偶然ですけど1時間ぐらいでやめてます。
ああホントですか?1時間やったらまあ集中力が続かないというのが一番大きな理由ですけど。
へぇ〜!気分転換したりとか他の事をやったりしますね。
ホントに集中できるのがもしかしたら?自分の場合はそれぐらいですね。
それぐらいなんですかね。
次々と新しいソフトが生まれるゲームの世界でトッププレイヤーであり続ける梅原さん。
勝ち続ける哲学がありました。
やっぱり勝つというの勝ち続けるのすごい難しいですよね?そうですね。
さっきのえ〜と何でしたっけ?やめる…。
それと多分同じ話になると思うんですけど格闘ゲームってどんどんどんどん新しいものが出てくるので自分が勝てたゲームやめたくないんですよ。
例えばストリートファイター2で勝ててた人が3はやりたくないんですよ。
分かります。
1からになっちゃうんで。
多分そこで勉強したんです。
あっ……というのに気付いた。
時代がそっちに移ったんだから諦めろって自分にすぐ言い聞かせて新しいゲームをどんなに前のゲームで勝ってたとしてもやると。
それが多分一番難しいんですよ。
勝ち続けるって。
今のお話を伺っててビジネスの現場でも今の梅原さんの話っていうのはまさに起きていて破壊的イノベーションって最近キーワードで時々出てくるんですけどそれは何かっていうと一気にビジネスモデルを変えるような新しいイノベーションが出てくると。
その時に古い技術の勝ち組の人たちってのはなかなか新しい技術に行けないんですよね。
それはひとえに自分たちが今まで築いてきたもので飯を食ってる。
もうかると。
そういうものを持ってると次になかなかいけない。
そうですよね。
あと勝てば勝つほどいろいろ研究されて難しくなる事もある?そうですね。
だからとにかく変わり続けるって事ですね。
ああ。
要するに1か月前に見たプレイが1か月後も同じプレイだったらこれはもう負けるのは時間の問題なんですよ。
ああそうか。
はい。
あれ?こないだ見たな。
研究されちゃうから。
はい。
もしかするとお笑いとかもそうなのかもしれないですけどやっぱり何回も何回も同じことをやられても面白くない。
で勝つっていうのも結局どんなにすばらしい戦略だったとしても世に1回それが出ちゃうとどんどん劣化していくんですよね。
対応されちゃう。
100%勝てる勝ち方がない以上はやっぱり価値が下がっていくのでその多少…そうしないとなかなか勝つというのはできないかなというのはゲームを通して知りましたね。
ああ。
それは絶対どんなことでもそうかもしれないですね。
ただ大切な大会の前とかに自分はそういう新しいプレイをやってるんだけどそれを披露するかそれとも本番まで一切見せずにって。
その辺は戦略というか戦術になってくるんですけど梅原さんはその辺はどうなんですか?何の見返りもないのにオープンにすることはないんですね。
ああ。
ただそのオープンにすることによるメリットもあって味方を増やせるんですよ。
じゃあこのグループで強くなろうぜとか。
このグループで得しようぜになって協力が得られるようになるんですよ。
現実にはみんなのレベルってのは近いんで協力者を増やした方がより高いレベルに行けるのは間違いない。
そういうことか。
ビジネスの世界でも例えば自分の会社だけで技術を囲い込むんじゃなくてオープンイノベーションという形でそのみんなでアイデアを出し合って独占しないというような状況の方が全体としてはやっぱりいいものが出せるという。
今日は安田先生のゲーム理論を中心に聞いてきましたけど梅原さん先生の経済学者としての考え方はどうでした?経済学というものはすごい面白いなとまず思いましたしこれだけ分かりやすく説明して頂けるのはすごいありがたいことだなと思いました。
はい。
結構そのゲーム理論の理論的な結果と梅原さんの直感というのが一致してて少し僕自身も自信になりましたね。
そうですか。
なんかゲーム弱いくせにとか口だけ偉そうな事言ってるんじゃなくてやっぱり現実のプレイヤーのある程度行動とかを捉えたああ学問なのかなというの改めて。
だから先生の理論とねえ梅原さんのゲームをやってきた中での理論が合った瞬間があったじゃないですか?はい。
僕たちが分からない次元での。
その瞬間すごい気持ち良かったです。
僕も見てて。
あそこで全然違いますよとかなって。
あそこが交わる点だった。
あれで全然違いますよとかなってもめだしたらちょっと大変です。
そこがやっぱり経済学っていうのはいろんなジャンルでも生かされるんやなというふうに感じましたね。
すごい貴重なお話ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
先生もありがとうございました。
ありがとうございました。
2017/01/04(水) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
オイコノミア「人生というゲームに勝つ!」[解][字]

対戦型格闘ゲームの世界王者ウメハラこと梅原大吾と経済学界きってのゲーマーが直接対決!ウメハラの“勝ち続ける極意”を支えていたのは、経済学的思考だった!!

詳細情報
番組内容
対戦型格闘ゲームの世界王者ウメハラこと梅原大吾。10代で世界大会に優勝、その後いったんゲームを辞めるものの28歳で復帰し、プロゲーマーとして世界トップレベルで活躍を続けている。今回、経済学界きってのゲーマー・安田洋祐大阪大学准教授が直接対決を挑んだ!浮かび上がったウメハラの戦略は経済学の理論そのもの。ウメハラのこれまでの人生や“勝ち”を続ける極意を経済学で読み解く異色のロングインタビュー。
出演者
【ゲスト】プロゲーマー…梅原大吾,【出演】又吉直樹,【解説】大阪大学大学院准教授…安田洋祐,【語り】朴ろ美