一見何の変哲もないボルトとナット。
実はこれ一旦締めるとちょっとやそっとじゃゆるまないんです。
というわけで把瑠都さんボルトにはまったナットを取ってみて下さい。
ん…んあ〜。
今日の「プロフェッショナル」はこの不思議なネジを作った天才発明家です。
その男レモンティーが手放せない。
「天才」と称される39歳の発明家。
アイデアひとつでさまざまな問題を解決する製品を生み出す。
てこの原理で高齢者や子どもでも簡単にペットボトルのふたを開けられる器具。
工事現場などで工具を使わずワンタッチで500キロもの荷重に耐えられる留め金。
男の頭脳を頼り名だたる企業がひっきりなしに駆け込んでくる。
天才のどんな言葉にも思わず耳を傾けずにはいられない。
車とドローンを融合する。
車とドローン。
カードローン。
大発明かなと思って。
ハハハハッ。
カードローンですよ。
カードロ…。
明晰な頭脳で世界を驚かせるベンチャー企業社長。
だがまともに学校に通ったのは小学5年までだという。
その発想が社会の常識を超えていく。
(主題歌)
永遠の課題を解決したとされる道脇の「ゆるまないネジ」。
あらゆる業界が注目する。
人生の意味を問うたのは小学5年の時。
絶体絶命のピンチでつかんだ生きる事の意味。
挑んだのは奇想天外なネジの開発。
完全に固定し簡単に外れるネジとは。
常識を超えた革新がここに生まれる。
密着取材が始まったこの日。
発明家は早速こう切り出した。
東京・品川にあるオフィス。
道脇が7年前に立ち上げたベンチャー企業だ。
会社に着くなり社員の設計士を呼び出し説明を始めた。
かつてないネジの仕組みを思いついたという。
道脇にとって発明は息をする事と同じだという。
その発想で道脇が世界を驚かせたのは2年前。
発明したのは一本のネジ。
二千年以上と言われるネジの歴史の中で永遠の課題とされてきた「ゆるみ」を克服したのだ。
一般的なネジはどんなに固く締めても振動などにより必ずゆるんでしまう。
ネジのゆるみが原因で起きたとされる事故は国内で毎年70件以上。
膨大な労力とコストをかけても定期的な点検が欠かせない。
道脇はこの問題を解決する「ゆるまないネジ」を生み出した。
考えたのはネジのらせん構造だ。
ナットを右回りに回すと締まるネジ山と左回りに回すと締まるネジ山を特殊な技術で一体化させた。
この機構により右回しと左回しそれぞれの方向でナットが締まる。
そしてこの2つのナットを結合する。
振動などの力が加わっても互いのナットは逆の動きをするため絶対にゆるまない。
夢のネジが実現した。
その耐久性は折り紙付き。
世界で最も厳しいとされる耐久試験も難なくクリア。
3時間という通常では考えられない時間に耐え試験機械の方が壊れてしまったという。
有史以来誰もなしえなかったブレイクスルー。
そのきっかけは道脇の一つの流儀による。
この日難しい課題が持ち上がった。
開発中の新しいネジその加工がうまくいかないという。
ネジ山を削るカッターがどうしても刃こぼれし「バリ」と呼ばれる突起が残った。
通常刃こぼれを防ぐためにはカッターの回転数を下げるのが定石だ。
だが道脇はとんでもない事を言いだした。
あえてマシンの限界まで回転数を上げろと指示した。
(笑い声)20分後。
仕上がりの差は歴然だった。
道脇はなぜうまく削れたのかは説明しない。
ひと言こう言った。
開通前の高速道路の建設現場。
ここに道脇さんが開発した騒音を減少させる装置が取り付けられている。
立体型道路の天井部分。
下を走る車の騒音を減らすという。
正体は断面がV字型になったパーツだ。
並べるとどんな角度からの音も内部に反射させ消滅させてしまう。
更に道脇さんのアイデアはこれだけではない。
このパーツ幅2センチで長さは4メートル。
これをおよそ3キロにわたって敷き詰めるとその数は6万本以上になる。
そこで道脇さん連結パーツにある工夫を凝らした。
発想は実に単純。
装置につけた溝でネジを締めるナットを固定。
工具で押さえなくても簡単に連結できるようにした。
まだある。
この羽のような部分は…。
この2つの発明で作業効率を飛躍的に向上させた。
作業する人たちの苦労も考えた発明品。
そこに込める道脇さんの哲学。
頭は心の道具。
新たな発想は暮らしを豊かにする思いやりから生まれる。
今月開通したこの橋にも道脇さんの発明品が使われている。
支承装置と呼ばれる車や地震などの振動から橋を守る装置だ。
大手化学メーカーと共同開発し従来の半分の大きさで性能も耐久性も向上させた。
旅のお供は一人娘…将来の夢は発明家。
お父さんみたいにいつも発明の事を考えている小学3年生だ。
娘は素直に育ったとつぶやく道脇さん。
それに比べて自分はとこれまでの半生を語ってくれた。
母親の綾子さんも道脇さんの言動によく驚かされたという。
小学校の成績もずば抜けていた。
そうですね…道脇さんは小学5年生の時自ら休学すると決めた。
気が付けば18を過ぎていた。
出来上がったリストを見て愕然とした。
転機は19歳の時に訪れた。
この時自分の生きる意味を見つけた。
道脇さんは31歳でベンチャー企業を立ち上げた。
不可能と言われたあの「ゆるまないネジ」を製品化するために。
道脇さんの発明は瞬く間に業界に知れ渡った。
不慮の事故や点検のコストを減らす奇跡のネジ。
そして今自分の生きる意味についてこう語る。
常識を超えた発想で革新をもたらす発明家道脇裕の次なる仕事。
開発するのは確実に固定しながらも簡単に取り外せる巨大なネジ。
今回のクライアントは大手の金属加工メーカーだった。
重さ8トンものハンマーで熱した金属を成型し工業用の大型部品を作っている。
依頼されたのは直径8センチのネジの開発。
従来のものでは激しい衝撃によってすぐにネジがゆるむためその度にスパナで締め直さなければならなかった。
ゆるみを放置しておけば機械の故障や大きな事故にもつながりかねない。
固定するだけなら道脇の「ゆるまないネジ」で事足りる。
だが…。
要は調整できなきゃ意味ないから。
この巨大なネジはハンマーを正確に振り下ろすためのフレームを固定している。
しかしハンマーの上げ下げによってフレームの内側が次第にすり減ってしまう。
その度にナットを移動させフレームの位置の調整やメンテナンスが欠かせない。
使用時はゆるまず調整時には自由にナットが動かせる必要があった。
難しい注文だった。
強い振動でも決してゆるまずそれでいて人の手で簡単にナットを動かすためには…。
道脇が考えたのはあの「ゆるまないネジ」に歯車の仕組みを取り入れたものだった。
まず右回りと左回りのナットそれぞれの内側に歯を刻みかみ合わせる。
これでどんな衝撃を受けても互いがロックし合い動かなくなる。
今回道脇は2つのナットの間にリング状のゴム素材を挟む事を思いついた。
ふだんはゴムの反発力でナット同士はしっかりとかみ合わさっている。
動かす時は専用の歯車を押し込む。
するとゴムが縮みナットが離れてロックが解除される。
そのまま歯車を回せば簡単にナットの位置を調整できるというこれまでにない仕組みだ。
1か月後。
試作機が出来上がった。
まず歯車でナットの位置を動かせるか確認する。
ナットは道脇のねらいどおりに動いた。
肝心のゴムによるロック機能。
ゴムの反発力でナットは固く固定された。
次に歯車を押し込んでナットを動かす。
ロックが解除されない。
反発力が想定より強すぎたのだ。
ゴムをもっと軟らかいシリコンに替えて試してみる。
反発力が弱くなったため歯車でロックが解除されナットが動くようになった。
だが…。
今度は反発力が弱すぎてロックが十分ではなかった。
これでは衝撃でゆるんでしまう。
ロック機能と解除を成立させるちょうどいい反発力の素材は何か。
結局この日最適な素材は見つからなかった。
翌日。
道脇は既に仕組みを見直していた。
ゴムなどの反発力を使うアイデアはやめる。
そのかわり留め金で2つのナットを固定する。
動かす時は留め金を外し歯車を使って移動させる。
早速道脇のアイデアを実現するため作業が進められた。
4日後。
2回目の試作テスト。
ねらいどおりに動かなかった。
原因がつかめた。
パーツが増えた事で加工の僅かな誤差が積み重なり動きを邪魔していると考えられた。
夜を徹して解決策を練り続けた。
作業開始から18時間。
解決の糸口は見いだせなかった。
1週間後道脇は一つの答えを出した。
こだわってきたアイデアを全て捨てた。
これまでは2つのナットを一体化させていた。
道脇はそのアイデアをやめそれぞれを独立。
更にナットの移動に用いていた歯車をロックさせるためのパーツに置き換えた。
歯車を回さないかぎりナットは固定されたまま。
歯車の使い方を変えた逆転の発想だ。
考え抜いた勝負の一手。
1か月後。
三度目の正直。
ナットを独立させた事で移動は格段に滑らかになっていた。
ロック機能も全く問題ない。
更に道脇はある道具を作り上げていた。
ナットの移動に使う専用の歯車。
作業をする人のためを思い片手で簡単に動かせるようにした。
また新たな発明が生まれた。
(主題歌)この日3本目のレモンティー。
道脇は考え続ける。
誰かのために何かのために。
己のプロフェッショナリティーに特化していてかつ達している事ですかね。
まあ僕にとっての「プロフェッショナル」と…。
そういう事ですかね。
2016/11/14(月) 22:25〜23:15
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀「常識を超え、独創を極めよ〜発明家・道脇裕〜」[解][字]
1本のネジが、世界を変える!?永遠の課題とされてきた「緩まないネジ」を開発した発明家。“学歴なし”と豪語する天才、常識外れの発想を生むその流儀とは!
詳細情報
番組内容
名だたる企業からの依頼が引きも切らない、ベンチャー企業社長・道脇裕(39)。生み出すのは、コペルニクス的発想で問題を鮮やかに解決する発明品。どんな衝撃でも緩まず、宇宙開発での使用も期待されるネジ。音の反射を計算し尽くし、高速道路の騒音を吸収する新たな装置。数々の社会的課題にアイデアで立ち向かう「日本のエジソン」…その原点は、小5で学校を自主休学、さまざまな職を渡り歩いた驚きの半生にあった!
出演者
【語り】橋本さとし,貫地谷しほり