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書き起こし NNNドキュメント「迷走する轍(わだち)〜貸切バス業界の闇〜」 2016.12.05

NNNドキュメント「迷走する轍(わだち)〜貸切バス業界の闇〜」 2016.12.05


(サイレン)
今年1月長野県軽井沢
若い命を乗せて1台のバスが暴走した
運転手2人を含む15人が死亡
亡くなった乗客13人は全員大学生だった
峠を越えた下り坂
事故現場から250m手前にある監視カメラが異常な走りを捉えていた
制限速度50kmの道を猛スピードで走るバス
車体は大きく右に傾きセンターラインをはみ出している
その先下りの左カーブを曲がりきれず転落
ガードレールに衝突した時のスピードは…
…と判明
大阪に住む田原義則さんと由起子さん
大学2年生だった次男寛さんを亡くした
母由起子さんは東京の大学に進学した寛さんとよくLINEのやりとりをしていた
(田原由起子さん)カバンに入ったまんま持って来てくださったので。
息子の携帯電話
あの日の朝事故をニュースで知った母親は何度も問い掛けた
その後繰り返し電話をかけても息子は出ない
(田原義則さん)うんあの…。
うん…。
まぁ何でこんな所でこんな悲惨な事故が起きるのかな…。
うん…。
時間戻してやりたいなと思いましたけど。
なぜバス事故は繰り返されるのか?
そこには深い闇が存在していた
4年前にも重大事故は起きていた
関越道で高速ツアーバスが防音壁に激突
7人の命が奪われた
ハンドルを握っていたのは法律で禁止されている日雇い運転手
この運転手の居眠りが事故の原因だった
整備不良や名義貸しなど多くの法令違反も見つかった
国は関越道の事故を受け数々の安全対策を行った
その一つが…
バスツアーの多くは旅行会社が客を集め貸切バス業者に依頼する
この時運賃にはバス業者が適正な収入を得られるよう下限額が定められている
新運賃制度ではその下限額を引き上げ車両整備や乗務員の教育など安全対策の費用を確保できるようにした
しかし安全へのその取り組みは踏みにじられた
軽井沢で事故を起こしたイーエスピーは一昨年の4月貸切バス事業に参入したばかり
それまでは中古車販売をなりわいにしていた
おわび申し上げます。
出発前に点呼を行っていなかったなど33件もの法令違反が発覚
死亡した運転手は「大型バスは苦手」と告げていたが1回の研修だけであの日多くの命を運んでいたのだ
さらにこのバス業者は下限額を7万円も下回る19万円でバスの運行を請け負っていた
バス業界は一体どうなっているのか?
私達は全国におよそ4500社ある貸切バス業者のうち1500社にアンケートを実施
回答があった535社のうち下限割れ運賃での受注があると答えた業者は3分の1を超えた
「下限割れ料金でないと旅行会社から仕事が受注出来ない」
「安全コストをカットしないと会社が成り立たない」
「下限割れで受注しないと仕事がなくなっている」

 

 

 

 


中国地方のあるバス業者は…
じゃあ実際に…。
下限割れの原因の一つが手数料という慣習
多くのバス業者は仕事を請け負うたびに手数料を旅行会社に支払う
アンケートにはこんな一文があった
「運賃は手数料の設定でどうにでもなる」
一体どういうことなのか?
四国地方のバス業者が取材に応じた
この業者がある旅行会社と交わした契約書
大手の旅行会社は15%中小でも10%が手数料として運賃に含まれているという
ところが…
さらに…
新運賃制度では下限額を引き上げバス業者が安全対策の費用を確保できるようにしたはずだった
しかし一部の旅行会社は手数料を増やした他広告宣伝費などを差し引きバス業者に支払う金額を抑えたのだ
私達が取材した中で最も高かった手数料は35%
関東地方のバス業者だ
ある日帰りツアーを下限額を上回る14万4000円で契約したがその後旅行会社から35%もの手数料を引かれ実際に受け取ったのは10万1088円だった
バス8台を所有する別のこの業者は運賃の下限割れが経営を圧迫しているという
当然…。
そういう…。
…と思いますね。
事故の教訓はどこへ行ってしまったのか?
一方ツアーを組む旅行会社側は新運賃制度についてこう語る
この旅行会社が企画した新運賃になる前の日帰りバスツアーは1人当たり5980円
10日間で6500人もが参加する人気のツアーだった
しかし新運賃が適用されバス代が上がると3000円近く値上げをしなければならなくなった
すると客は4割減少したという
だからやっぱり…。
新運賃制度の導入で浮上した手数料の問題について国土交通省は…
…かなというところは思っております。
…というところでございます。
国が民間の取引に介入し具体的な手数料率を指導することは法律の観点からできないという
6月国は旅行会社とバス業者が契約をする際に手数料を書面に残すことや運賃に関する通報窓口を設置することなどを決めた
しかし業界の闇はさらに深かった
国の目を欺く偽装行為が
料金なんかのやつはこういう…。
バス業者を取材する中で私達はある事実を知った
国の監査を逃れる偽装行為だ
例えばこれがそうなんですよ。
これ…。
この金額18万3600円。
これ税込みでのバス代。
これが正規料金で実際には請求して上げてる金額って8万5000円税込みネットで上げてるんですよ。
あるスキーツアーの契約書
運賃は18万3600円
下限額ギリギリだった
しかし実際に旅行会社から振り込まれたのは下限額をおよそ10万円下回る8万5000円
実は両者合意の下だった
相手は大手旅行会社
下限割れでの運行は道路運送法違反で一定期間バスが使用停止となるがシーズンごとに必ず需要があるスキーツアーをつなぎ留めるため断らなかったという
料金なんかのやつはこういう…。
うん…こういうものを見るんですよ。
だからこの金額を書いてはんこを押してあれば「この金額で受注してるんですねおたくは」と。
「はいそうです」って言ったらそれで終わりです。
それが実態なんですよ。
さらに中国地方のバス業者は
うんただ…。
法令を無視するこのようなバス業者の存在についてバス業界の改善に取り組む交通労連の担当者は
しかし急増したバス業者に対し国による監査の体制は追い付いていない
だと思いますだから…。
監査の対象は12万社
しかし昨年度の監査件数はわずか1万5000件だった
軽井沢の事故から4か月
大学生の息子を失った田原さんは再発防止に向け国に対策を要望した
…と思ってます。
遺族が強く要望したのは…
21項目に上る
息子は今海が見える高台に眠っている
遺留品から見つかった1冊の本
生前寛さんは「人の役に立ちたい」そう話していたという
このガラスの破片あるのはホントに今朝気付いたんです。
ビックリしたんですけど。
本の間に挟まっていたのはバスの窓ガラスの破片
事故は19歳の真っすぐな志を打ち砕いた
軽井沢の事故から間もなく1年
スキーシーズンを前に遺族の思いを反映した改正法が一昨日成立した
無期限だった貸切バスの…
安全確保の命令に従わない業者については最大1億円の罰金を科す他悪質な業者は即排除する
監査の人員不足を補うため…
…する仕組みも盛り込まれた
帰省のたびに大好きな肉じゃがを頬張るその横顔を母は忘れることはない
あの事故以来息子の写真を持ち歩いている
(鈴の音)
ここにもやりきれない思いを抱えた人が
長女の真理絵さんを亡くした
(阿部さんの声)いつも「まりちゃん元気か」っていうようなね声掛けをいつもしてたんですけどね。
希望の会社に就職が決まり日本の技術を世界に広めたいという夢を持っていた
父親は通夜の席でこう投げ掛けた
またスキーシーズンがやって来る
あの夜ガードレールの向こうに消えた命
彼らが私達に遺したものは何なのか
一体何なのか
大きく道を外れた轍が問い掛けている
太平洋戦争開戦から75年
真珠湾出撃のゼロ戦乗りは語る
「戦争とは人をあやめること」
99歳が残した平和への願い
2016/12/05(月) 01:05〜01:35
読売テレビ1
NNNドキュメント「迷走する轍(わだち)〜貸切バス業界の闇〜」[字]

15人が死亡した軽井沢のバス事故。その後、極端に運賃を抑える旅行業者や仕事を得るためそれを受け入れるバス業者。運賃の偽装を見抜けない国の監査体制が浮かび上がる。

詳細情報
番組内容
今年1月、長野県軽井沢町でスキーツアーバスが道路下に転落、15人が死亡した。娘を失った遺族は「事故は社会問題によって生じた歪み」と訴えた。その後行った全国の貸切バス業者へのアンケートと取材により、仕事を得るために下限額を下回る受注を受け入れるバス業者や手数料の名目で極端に運賃を抑える旅行業者の実態。さらに運賃の偽装や、それを見抜けない国の監査体制の脆弱さが浮かび上がる。バス業界の危険な闇を追った。
出演者
【ナレーター】
二又一成
制作
【共同制作】
テレビ信州
テレビ金沢