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書き起こし モーガン・フリーマン 時空を超えて・選「死後の世界はあるのか?」 2016.12.09

人は死んだらどうなるのでしょうか?この世から消えるだけなのか?それとも何らかの形で生き続けるのか?人間の「意識」や「魂」は死後も存在し続けるのでしょうか?科学では解き明かせない究極の問いに思えます。
しかし今生物学者や物理学者哲学者たちが「死後の世界は存在するのか」という疑問の解明に挑んでいます。
時間空間そして生命。
時空を超えて未知の世界を探求します。
死とは終わりなのでしょうか?永遠の静寂暗闇そして無…。
あるいは肉体が滅びたあとも人間の内なる何かが生き続けるのでしょうか?哲学者や科学者は何千年もの間この問いについて思考を巡らせてきました。
いずれ誰もが直面する問題です。
私が6歳の時祖母が亡くなりました。
初めて体験した親しい人の死でした。
少年だった私は疑問を抱きました。
祖母はなぜ突然いなくなってしまったのか?永遠に逝ってしまったのか?それとも祖母の魂はどこかで生き続けているのか?脳神経外科医のエベン・アレグザンダーはハーバード大学の医学部で多くの手術を手がけてきました。
2008年彼は自身に起きたある出来事をきっかけに死後の世界について深く考えるようになりました。
珍しい細菌性髄膜炎にかかり昏睡状態に陥ったのです。
髄膜炎にかかると脳の表面全体が侵されます。
人間が死の状態に最も近づく事ができる病気。
そう言っても過言ではないでしょう。
これはその時の私の頭の内部を写した画像です。
脳の表面が全て膿で覆われているのが分かります。
脳細胞のエネルギー源であるブドウ糖は細菌に消費されていました。
そのため思考をつかさどる大脳皮質が完全に麻痺してしまったんです。
脳死に近い状態になってから7日後アレグザンダーは奇跡的に昏睡から目覚め1か月後には回復しました。
しかし昏睡状態の彼にある事が起きていました。
昏睡していた時の事で真っ先に思い出すのは今私が「ミミズから見た世界」と呼んでいる光景です。
見えるもの全てがくすんでいて薄暗く色は茶色や赤。
頭の上に木の根があったのも覚えています。
とても長い間そこにいたような気がします。
記憶は失われ言葉もすっかり消え去っていました。
もちろん集中治療室で起きている事など何も分かりませんでした。
すると突然何かクルクル回るものが現れ次第に大きくなっていきました。
そして私がそれまでいた土の中のような汚らしい世界醜く不吉な光景を全て消し去ってくれたんです。
私は突然美しい野原に出ました。
自分の体が存在する感覚はありませんでしたが美しいチョウの羽の一部になっている事が分かりました。
周りには他にも色鮮やかなチョウが何百万匹もいて群れを成して飛んでいました。
それから私を含むチョウの群れはこの世を離れ今私が「コア」と呼んでいる場所に行きました。
「コア」は最初とてつもなく広く暗い所に思えました。
でもやがて温かく神聖なものがコアに存在しているのを感じるようになりました。
それはこの世とは違う場所に存在するもの間違いなく私たちが「神」と呼んでいるものでした。
目の前にいくつもの宇宙が広がりました。
その宇宙の大きな部分を占めているものは「愛」であると確信しました。
臨死体験をした多くの人々がアレグザンダーとよく似た証言をしています。
ほとんどの体験者が何か超越的なものが存在すると語っています。
しかし科学はまだそれを証明できていません。
(アレグザンダー)私の体験を神経科学の立場から説明するのは困難です。
科学者としての私は自分自身の体験に懐疑的ですが昏睡中の記憶はとても鮮明です。
神経生理学や神経解剖学のさまざまな知識を駆使して自分の体験について考えてみました。
しかし私の体験を十分に説明できる仮説を見いだす事はできませんでした。
それで結局「私の身に起きた事を神経科学によって説明する事は不可能である」という結論に至ったんです。
エベン・アレグザンダーと同じような体験をした人は他にも数多くいます。
ブルース・グレイソンはバージニア大学医学部の精神科医です。
これまでに1,000件以上の臨死体験を調査してきました。
臨死体験で必ず語られるのは深い安らぎ安堵感肉体からの離脱そしてまぶしい光です。
その光は温かさと無条件の愛にあふれているそうです。
中には人間とは違う神聖な存在に出会ったと語る人もいます。
それを神と呼ぶかどうかは人それぞれですが全能の力を持つ存在という点では一致しています。
多くの科学者はこういった体験をニューロンに酸素が行き届かず脳に強いストレスがかかったために引き起こされた幻覚だと見なしています。
1970年代アメリカ空軍である実験が行われました。
遠心機を使ってパイロットに大きな重力をかけます。
血液が足の先に集まり脳の酸素が欠乏したため参加したパイロット全員が気絶しました。
意識が戻ると「まぶしい光を見た」と言う人や「意識が肉体を抜け出し自分自身を上から見下ろしていた」と言う人がいました。
臨死体験者の証言とよく似ていますが重要な事が欠けていました。
パイロットたちは臨死体験者と同じような体験をしました。
しかし今は亡き愛する人たちとの再会や神聖な存在との出会いなどはありませんでした。
臨死体験を科学的に説明しようとするとすぐに突き当たる壁があります。
考える事などできないはずの脳がなぜ複雑な思考をしそれを記憶しているのかという点です。
臨死体験とは命のともし火が消えようとする時に見る最後の夢なのでしょうか?それとも死の先に何かがある事を示すしるしなのでしょうか?真実を知るためには「魂」とは何なのかを科学的に解明する必要があります。
「魂」とは空想の産物なのか?それとも実在するものなのか?死後の世界を科学的に考える場合欠かせない問題があります。
「意識とは何か」という問題です。
意識とはどこから来て死後どこへ行くのでしょうか?スチュワート・ハメロフはアメリカ・アリゾナ大学にある意識研究センターの所長です。
麻酔科医としても活躍しています。
(ハメロフ)何も心配いりませんよ。
目が覚めたらとてもいい気分になっているはずです。
麻酔をかけられた患者は夢を見ません。
意識を失い目覚めた時には自分がどれくらい眠っていたのかも分かりません。
意識はありませんが脳自体は活動しています。
なぜこの状態が生じるのかは解明されていません。
多くの患者と接するうちにハメロフは脳の活動と意識との関係性を知りたいと思うようになりました。
ハメロフはイギリスの著名な物理学者ロジャー・ペンローズと共同研究を始めました。
2人は脳の働きに関する新しい説を打ち出し「永遠の魂」をめぐる科学的論争を巻き起こしました。
この説の根幹を成すものは脳細胞の中にある「マイクロチューブル」と呼ばれる構造です。
(ハメロフ)マイクロチューブルは脳細胞の中にある管のような構造です。
細胞骨格の一種で細胞の構造を決定づけています。
マイクロチューブルは細胞を一種のコンピューターとして機能させる役割を果たし分子レベルで情報を処理しているのだと考えられます。
マイクロチューブルは脳を従来のコンピューターとは違う量子コンピューターとして機能させる役割を担っているとハメロフたちは考えています。
このドミノを脳の右脳と左脳だと思って下さい。
一般に脳はニューロンの集合体だと見なされています。

 

 

 

 


一つのニューロンが活動するとシナプスを経て次々と他のニューロンに信号が送られていきます。
一つのニューロンが活動すると周りのニューロンも活動し脳全体に信号が送られる。
これが従来の考え方です。
従来型コンピューターではあとをたどる事が可能な回路を経て信号が伝達されます。
しかし量子コンピューターでは「量子もつれ」と呼ばれる未知のプロセスを経て情報が伝達されます。
量子もつれは意識と深い関係があると私たちは考えています。
ある場所でニューロンの活動が起きたとします。
すると空間的に離れた全く別の場所でそれに対応した反応が起きる。
直接接触していないのに瞬時に情報が伝わるんです。
ハメロフたちはあるマイクロチューブルで起きた変化が離れた場所にある別のマイクロチューブルに影響を及ぼす可能性があると考えました。
また量子論によれば何も無い空間でも情報が伝わります。
量子情報は全ての空間宇宙にも存在しています。
このドミノと違いあらゆる方向に情報が伝わるためこちらで何かが起きるとすぐに離れた場所にも影響が及ぶわけです。
この説が正しければマイクロチューブル内の情報が脳の外にある広大な空間とつながる可能性があります。
(ハメロフ)脳内の意識が量子もつれによって広く宇宙全体に存在する可能性もあるわけです。
人間の意識は脳を構成するニューロンよりももっと基本的な宇宙の構成成分のようなもので出来ているとハメロフは考えています。
(ハメロフ)私が「原意識」と定義したものはビッグバンの時から宇宙に存在しています。
ハメロフたちの言う量子もつれの理論を応用すれば臨死体験の謎も解けるかもしれません。
(ハメロフ)心臓が止まり血液が流れなくなると脳は量子コンピューターとして機能しなくなります。
しかしマイクロチューブル内に存在する量子情報は破壊されず宇宙全体に散らばります。
患者が息を吹き返すと散らばった量子情報は再び脳内に戻ってきます。
そして「白い光を見た」「亡くなった家族に会った」「体を抜け出した」と言うわけです。
息を吹き返さなければ量子情報は肉体から離れたまま「魂」として存在する可能性もあります。
量子情報が脳内と宇宙空間を行き来する事が臨死体験の本質だとハメロフは考えています。
それは手術室での体験とも一致すると言います。
脳死宣告を受けた患者の臓器提供手術で何度も麻酔を担当してきました。
つい最近大動脈が止められ脳に血液が流れていない患者のモニターをチェックしたところ脳のニューロンが爆発的に活動している現象を確認しました。
驚くべき事ですがまさにこの目で見たんです。
「魂とは宇宙とつながる量子コンピューターである」という説に多くの科学者は懐疑的です。
しかしハメロフは自分たちの主張が少しずつ実証されていると感じています。
生物学上のさまざまな現象が量子論を応用する事で説明可能だと分かってきたからです。
20年ほど前に出した我々の説を根本的に否定できた人はいません。
今後も新たな証拠が我々の説を後押ししてくれるはずです。
意識はどこから来てどこへ行くのか…。
もし意識というものを計測できる方法があればその疑問に対する答えが見つかるかもしれません。
その方法が見いだされる可能性が出てきました。
ある科学者が脳の活動パターンによって意識の謎に迫ろうとしているのです。
人間の脳はおよそ1,300グラムとそれほど大きくありません。
しかし世界を一変させてしまうようなアイデアを生みキング牧師やチンギス・ハンなどさまざまな個性をつくり出します。
脳は自分が人間である事を自己認識し多くの人は脳に意識が宿っていると考えています。
意識とは脳から生まれるのでしょうか?意識が脳そのものよりも長らえる事はあるのでしょうか?人が死んだ時脳に何が起きるのかを研究するのは容易ではありません。
しかし死によく似た現象は毎日起きています。
人は眠りに落ちると意識が遠のきます。
神経科学者のジュリオ・トノーニは意識を失った状態で脳がどのように変化するのかを研究しています。
意識の謎を解明するのが目的です。
意識の最も単純な定義は「夢を見ない眠りにつくと消えるもの」です。
しかし意識が無くなっても脳の中のニューロンは目が覚めている時と同じように活発な状態にあります。
脳が活発な状態にありながら意識を無くすとは一体どういう事なのでしょう?トノーニによれば私たちがある体験をすると脳に独特の活動パターンが生まれます。
複雑な体験をすればパターンもより複雑なものになります。
トノーニはそれを測定する事で意識の謎に迫りました。
どんな体験もすばらしいパターンを生み出します。
燃える炎が絶えず変化しながら美しい形を見せてくれるようなものです。
そのパターンを特徴づけるのは私が「関係性の情報」と呼んでいるものです。
意識は脳内に生み出される特別な炎です。
それが燃えて輝くには特別な材料が必要です。
しかしその炎がいつ燃え上がりいつ消えるのかを突き止めるのは簡単ではありません。
ジュリオ・トノーニは人が夢を見ない眠りに落ちて意識を無くした時脳がどう変化するのかを調べる実験方法を考案しました。
意識を失った頭の中を神経学的に調べようというのです。
(トノーニ)経頭蓋磁気刺激法を用います。
頭部を切開する事なく脳にごく弱い電流を流す方法で安全です。
大脳皮質が電流にどう反応するのかを調べます。
最初は目を覚ましている被験者に対する実験です。
電極を網状に配置して脳全体の活動を記録します。
スイッチを入れると大脳皮質に10分の1秒間刺激が与えられます。
その刺激が脳の一部のニューロンを活動させ次々と別のニューロンに信号が送られます。
この神経活動は大脳皮質のおよそ30%に広がり3分の1秒ほど続きます。
一つの刺激が脳の中で呼び鈴のように反響しています。
明らかに意識がある状態です。
では意識が無い時はどうでしょうか?被験者は今眠りに落ちています。
この状態で先ほどと同じ刺激を脳に与えて反応を見てみましょう。
刺激を与えたニューロンは活動しました。
しかし今度は周りへの反響は起きず刺激が無くなると活動もすぐ止まりました。
眠っている状態では脳の一部が他の部分と情報を共有する力が失われているようです。
つまり情報を共有する力こそ意識の重要な要素なのだとトノーニは考えています。
目が覚めている時は脳の中で政府の閣議のようなものが開かれています。
大臣や専門家の意見をまとめて行動計画を決めるのです。
しかし眠りに落ちると専門家がいなくなるため何も決められなくなります。
深い眠りに落ちるとなぜ人は意識を失うのか?脳内の専門家たちが話し合いをやめるからです。
眠ると専門家たちが会話をしにくくなるいくつかのメカニズムが働きます。
そして最終的に会話が完全にできなくなると人は意識を失うわけです。
トノーニの研究は昏睡状態にある患者の意識の有無を見極めるため医療機関で応用されるかもしれません。
あなたの家族が昏睡状態に陥ったとします。
息はしているのに苦しんでいるのかどうかも分からない。
そんな状況でまず知りたいのはその人の中にまだ意識が存在しているかどうかでしょう。
ジュリオ・トノーニは意識の有無を判定する方法を見つけたようです。
しかし入り組んだニューロンのネットワークの中でいかにして意識が生まれるのかはいまだに謎に包まれたままです。
意識を生み出すために複雑なシステムが必要だというのは事実です。
しかし単に複雑という事ならインターネットも非常に複雑です。
あるいはチェスのプログラムも極めて複雑です。
他にも複雑なものはたくさんありますが意識は生み出せません。
意識を生み出すために必要なのは「正しい複雑さ」です。
そんな離れ業を成し遂げられるものはごく僅かしか存在しません。
どうやら大脳皮質はそれをほぼ理想的に達成できるようです。
意識の根源を見つけ出す方法はあるのでしょうか?そして自己を認識する事と魂は同じものなのでしょうか?人間の魂を見つけたと主張する人々もいます。
魂とは何でしょうか?エネルギーでしょうか?触れるのでしょうか?そして重さはあるのでしょうか?1907年アメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルは魂の重さは21グラムだという説を発表しました。
人が死亡する際の重量の変化から割り出された数字です。
しかしその後100年以上この実験を再現できた者はいません。
なぜなら…量るべきものが見当たらないからです。
「魂」とは何らかの物質なのでしょうか?物質だとすれば魂も原子から出来ているはずです。
地球は何十億年もの間原子をリサイクルしてきました。
森の木々海水そして人間の細胞に至るまでリサイクルされた原子から成り立っています。
あなたの体の一部にかつてクレオパトラの肉体を形づくっていた原子が混ざっているかもしれません。
人間の細胞は絶えず死滅しています。
その一方で1時間に10億個の細胞が新たに生み出されています。
つまり年齢に関係なく肉体の大部分は10歳に満たないのです。
クリストフ・コッホは生物学と工学の教授です。
人間の本質は一つ一つの原子や細胞とは無関係でニューロンのネットワークの状態がその人物を作り上げているとコッホは考えています。
脳ほど複雑なものはありません。
人間の脳にはおよそ1,000億個のニューロンがあります。
一つ一つのニューロンが小型コンピューターのようなものでそれぞれが1万個から10万個の別のニューロンとつながっています。
ニューロン一つ一つに意識は宿りません。
ニューロンが大規模に連係し合いネットワークを形づくる事で意識が生まれます。
意識とは膨大な数のニューロンが活動する事で生じるものです。
そこから魂が生まれ喜怒哀楽のさまざまな感情も生まれるんです。
しかしコッホが考えるように脳内のネットワークが人間の本質だとすれば「永遠の魂」は存在しない事になります。
人はさまざまな経験によって絶えず変化していきます。
永遠に変わらないものなどありません。
年を取れば肉体も性格も心も変わります。
不変の魂などというものは無いんです。
魂とは脳が生み出すものであり常に変化していくものです。
こうした考え方は「唯物論」と呼ばれます。
「魂を生み出すものが脳内の物質的なネットワークである以上魂が肉体よりも長らえる事はありえない。
永遠の魂は幻想にすぎない」という考え方です。
脳が機能しなくなりニューロンの活動がストップすれば人々が「魂」と呼んでいるものも存在しなくなります。
しかし認知科学者のダグラス・ホフスタッターは魂は死んだ瞬間に消えるものではないと考えています。
大学時代大好きな教授がいました。
物理学者でしたが同時にとても信心深い人でした。
ある日その人が「脳の中にはまだ発見されていない未知の微粒子が存在する。
その微粒子が魂や意識を生んでいるんだ」と言ったんです。
その発言を聞いて私は衝撃と戸惑いを覚えました。
ホフスタッターはより科学的な手法で魂に迫ろうとしました。
そして認知機能のモデル化に成功し「人はどのようにものを考えるのか」という謎の一端を明らかにしました。
人間は周りの世界をモデル化しそのイメージで世界を捉えています。
例えばコショウ入れ。
ちらっと見ただけでそれがコショウ入れである事を認識します。
心の中に既にコショウ入れのモデルが存在しているからです。
いわば周りの世界の地図を心の中に作る行為でどんな動物も行っています。
例えばハチは太陽と巣の位置を知っています。
オニイトマキエイは入り組んだ海流の中を進みます。
ヒヒは群れの序列を覚えます。
人間の心の地図は出会う人や物などさまざまな要素から出来ています。
私たち人間は周りの世界に存在するものだけでなく自分が何者かという概念まで心の地図に組み込んでいます。
例えば自分の肉体的な特徴。
ユーモアのセンス。
バスケットボールのうまさ。
そういったさまざまな要素を反映させて自分が何者であるかという概念を作り上げるんです。
ホフスタッターはこのような心の地図を「精神のフィードバックループ」だと考えています。
テレビ画面にカメラを向けると延々とテレビ画面が映し出されます。
これがフィードバックループの一例です。
それと同じように人間の魂とは長年にわたって自分自身を認識しその結果を繰り返しフィードバックしていく過程で生み出されるもので実在するものなんです。
魂が自己認識の産物だとすれば人間以外の生物にも多かれ少なかれ魂がある事になります。
知能が高いほど魂は大きくなるとも考えられます。
果たして魂は人間に特有のものなのでしょうか?それとも自己認識ができる生物全てに存在するのでしょうか?魂は人間に特有のものではないという立場から魂を人工的に作り出そうとしている科学者がいます。
その研究は死後の世界の謎を明らかにするのでしょうか?「人間の魂は肉体に勝るものであり肉体は魂の入れ物にすぎない」。
多くの宗教がそう説いています。
しかし多くの科学者は「魂とは進化の歴史の中で生み出された脳の自己認識ネットワークである」と考えています。
それが正しいとすれば人間の脳のコピーを作ったらどうなるのでしょうか?脳のコピーにも魂が生まれるのでしょうか?魂や精神というものをコンピューターで再現できるとしたら人間は死から逃れる道を見いだせるかもしれません。
世界中の研究者が人間の脳を解析し人工的に模倣しようとしていますが非常に難しい課題です。
脳は極めて複雑なものだからです。
脳を完全に解析するにはまだ長い年月がかかりそうです。
それを待ちきれない科学者たちは生きたニューロンとコンピューターをつなぐアイデアを生み出しました。
生物学と工学を融合する事で魂の謎に迫ろうとしています。
コンピューターでシミュレーションできるのは極度に単純化されたニューロンに限られます。
この培養皿の中にあるような本物のニューロンは現代のコンピューターでシミュレーション可能などんなものよりもはるかに複雑です。
神経工学者のスティーヴ・ポッターは半分が生きた細胞半分が機械で出来た脳を作ろうとしています。
ラットの胎児からニューロンを採取して培養し小型の電極板の上で育てているのです。
(ポッター)「多電極アレイ培養皿」と呼ばれるもので緑に光っているのがニューロンです。
培養皿の電極はニューロンの活動を記録したり刺激を与えたりする装置とつながっています。
ニューロン同士は軸索と樹状突起で結合しています。
映像の再生スピードを上げるとニューロン同士が結合し信号をやり取りする様子がよく分かります。
いわば「ニューロン同士の会話」と呼べるものです。
ニューロンが他のニューロンに信号を送る度にカルシウムが放出されるためカルシウムに反応する色素を使うと会話の様子が撮影できます。
電極を通じてニューロンに情報を与えるとニューロンが反応します。
その電極はコンピューターを介して小型のロボットにもつながれているためロボットは半分生きたニューロンで出来た人工頭脳を持つ事になります。
「ハイブロット」と名付けられたロボットは新しい生命体と言えるかもしれません。
実験台の上で進む道を発見する度にニューロンが反応しているのが分かります。
動物と同じようにハイブロットも経験と学習を重ねます。
ではこのハイブロットのようなロボットが意識を持つ可能性はあるのでしょうか?このような培養システムがいずれ意識を持つかどうか。
私たちの答えは「イエス」です。
培養皿の中のニューロンは環境から情報を受け取り複雑な方法でそれにこたえています。
ごく初歩的なレベルですが環境を意識しているんです。
別の生物のニューロンを使い更に複雑なシステムを作り上げれば人間に近い意識を生み出す事も可能だと思います。
しかしハイブロットが自己を認識し「魂」と呼ばれるものを持ったとしてもどうすればそれを知る事ができるのでしょうか?方法は「会話」しかありません。
人工の脳に「あなたに意識はありますか?」と尋ね相手が「そうだ」と主張してくるならそれを信じるしかないのです。
これは人間の場合も同様で相手に本当に意識があるかどうかは相手の言葉を信用する以外確認するすべはありません。
たとえ相手がゾンビでも。
今でも人工の脳にごく単純な意識を持たせる事は可能だと思います。
しかし私が目指しているのは人間の意識の完全なコピーです。
例えば私の意識のコピーを別の肉体に移植したら会った人が私自身だと思い込んでしまうようなレベルのもの。
そんな意識を作り出す方法はまだ見当もつかない状況です。
魂を人工的に作り出し私たちの意識をコピーするまでにはまだ長い時間がかかりそうです。
しかし肉体が滅びたあとも魂をこの世に残す事は可能だと考える人もいます。
科学技術が意識や魂の謎を解明するまでにはまだ長い道のりがあるようです。
では他に方法は?認知科学者のダグラス・ホフスタッターがヒントを与えてくれました。
ホフスタッターによれば「意識」とは脳がさまざまな情報を組み合わせて思考パターンを作り出すところから生じるものです。
ある人物の思考パターンはその人一人のものではなく生きている人も死んでいる人も含め影響を受けた人たち全員の思考が混ざり合っているという事です。
そして人は複雑な思考パターンを他の人に伝える事もできます。
(ホフスタッター)ショパンの楽譜です。
白い紙の上に並ぶ黒い音符はショパンの精神活動の核心を伝えてくれます。
高揚感絶望喜び諦め苦悩さまざまな感情が曲の中に余すところなく表現されているため私たちは他人であるショパンの心の中を深くのぞき込む事ができます。
亡くなってから160年以上がたつのにショパンの魂の一部はこの世に残り多くの人々の心の中で生き続けているんです。
これはある意味で「永遠の魂」と呼べるものでしょう。
死とは皆既日食に似た現象だと思います。
(ホフスタッター)日食になると月が太陽の前に来るため太陽の光は遮られ地上は暗くなります。
でも全ての光が消え去るわけではありません。
月が太陽と完全に重なってもコロナの淡い輝きが月の周りを縁取ります。
その淡い輝きこそ人間が死んだあとに残るものなんです。
ホフスタッターがこのような見方をするようになったのは妻キャロルの死がきっかけでした。
イタリアに滞在中突然妻に脳腫瘍が見つかりました。
診断を下されたのが12月11日で翌日の夜には昏睡状態に陥っていました。
本当にあっという間の出来事でした。
長年人生を共にしてきたパートナーが突然いなくなってしまったんです。
私はこう考えずにはいられませんでした。
「何か妻の一部だけでも生き続けさせる事はできないものだろうか。
もし可能なら魂をどこかに移す事はできないものだろうか」。
ごく限られた範囲ですがそれは可能だと気付きました。
今私の中に存在するキャロルは非常に大ざっぱなものです。
本当の彼女に比べれば粗いコピーにすぎません。
例えるなら生きている人は数百万個の美しい石で出来たモザイク画のようなものです。
死によってモザイク画は破壊されますがその前にコピーを作っておく事は可能です。
ただしコピーはせいぜい1,000個の石しか使えません。
色も構図も同じですが全体にもっとおおまかなものになります。
それでもオリジナルが失われたあと絵の概要を伝える役には立ちます。
私たちの魂の一部は出会った人々の中で生き続けます。
人間性の最も印象深い部分が肉体よりも長くこの世にとどまるのです。
では人々の心の中以外に魂が存在し続ける場所はあるのでしょうか?人間の意識は肉体の死と共に失われるのでしょうか?魂はいずれ科学技術で再現可能になるのでしょうか?あるいは魂は死と共に宇宙に広がるのでしょうか?死後の世界の魂の行方について科学者の意見は大きく分かれています。
意識を失えば魂も何もかも失われます。
あなたの存在は完全に消え去るんです。
臨死体験者の言う事をそのまま信じるなら人間の意識や精神は肉体が無くても存在しうる事になります。
量子論に基づいて意識を捉えれば私たちがこの世に存在する意味や目的は大筋として説明できると思います。
死後の世界や生まれ変わりについてもです。
(アレグザンダー)私は自分の臨死体験を通じてこの世の外でも魂がすばらしい形で存在できる事を知りました。
それは紛れもない真実です。
この世を去る時誰もがそれを知る事になるでしょう。
誰もが人生の終わりに死の真実を知るでしょう。
しかし生きている間に知る事は難しいようです。
死が人間の理解が及ばぬ世界だとしたら…必要なのは何を信じるかなのかもしれません。
2016/12/09(金) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
モーガン・フリーマン 時空を超えて・選「死後の世界はあるのか?」[二][字]

人間は死んだらどうなるのか?この世から消え去るのか?あるいは、何らかの形で生き永らえるのだろうか?「死後の世界はあるのか?」という究極の謎に科学者たちが挑む。

詳細情報
番組内容
「死後の世界」は存在するのか?生物学・物理学・哲学などにより、なぞの解明にせまる。7日間生死をさまよった科学者はその時にみた夢を分析。「ミミズの目線で世界を見ているようだった」という。この臨死体験は、何を意味するのか?また、意識は脳から生まれるのか、あるいは脳よりも永らえるのか?ほかに、魂は宇宙とつながる量子コンピュータだという説も。魂は死とともに宇宙に広がっていくのか?(2015年3月初回放送)
出演者
【語り】菅生隆之
制作
〜ディスカバリー制作〜