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書き起こし 情熱大陸【松田一希/テングザルなぜ鼻が長い?若き研究者の新たな挑戦を追う!】 2016.12.11

東南アジアに浮かぶ島ボルネオ島の夜
男は闇の中の樹木に特殊な赤外線カメラを向けていた
興奮しながらふと我に返る
世界広しといえどそのサルを専門に研究している霊長類学者は松田一希ただ一人しかいない

 

 


ボルネオ島の固有種・テングザル
名前こそ知られているが生態については全くと言っていいほど解明されてこなかった
有名なのはオスが持つこの長い鼻だけだ
これまでの11年間で実に2万4000時間にも及ぶ観察を重ねてきた
1年の半分を森で過ごしてきたことになる
学者仲間は松田をフィールドの鬼と呼ぶ
テングザルの生息環境や食生活にもまなざしを向け彼らが好む食べ物は自分でも味見せずにはいられない
(松田)切るとこんなふうになっててこの種が熟れてくるとだんだん大きくなるんですよそうすると種だけ食べるようになるんですめっちゃくちゃ苦いですこれ言われるぐらい…ず〜っと同じことやるって
2011年松田の研究が世界の動物学者を驚がくさせた
テングザルが食べたものをしばしば反芻することを証明したのだ
知られざるテングザルの生態
今松田は最も素朴にして最も大きな謎に挑もうとしていた
あなたもきっと感じているに違いない
一体全体なぜオスの鼻はこんなにも長いのか
サルに聞いても教えてはくれない
10月下旬マレーシア
通い慣れた道が激しいスコールに霞む中テングザルの森に向かっていた
(スタッフ)前見えます?これ何か本当にこの…
研究予算は限られている
空港から8時間いつも1人で現地入り
お〜タラップも売ってるなこれはいいなぁ
果物の王様・ドリアンは松田の好物
強烈なにおいを敬遠する向きもあるが取れたてはほとんど臭くない
今回の調査は20日間
森はまだ遠かった
調査基地に到着したのは夜7時過ぎ
現地のアシスタントが出迎えてくれた
この基地に住み込み松田がいない間もテングザルの観察を引き受けているのは助手として雇った一組の夫婦だ
朝6時
フィールドワークは夜明けとともに始まる
太古からの自然が姿をとどめるボルネオの熱帯雨林は希少な野生動物たちの楽園だ
だがそこは危険と背中合わせの世界でもある
見えます?下のほうから
(スタッフ)あぁ動いてますはい…捉えましたうお〜でかいなあれ
つい最近も釣り人がイリエワニに襲われたと聞いた
あ〜動いた動いたあれまだちっちゃいですね子供
テングザル
彼らは川沿いの木の上で夜を明かす
天敵のヒョウなどに襲われた時枝から枝に飛び移り川を越えて逃げられるからだという
それも松田が明らかにした
かつては葉っぱだけを食べていると考えられていたテングザル
だが松田の辛抱強い観察で木の実の種を好むことも分かった
ここ食べてるんですよねこれかじってる…そうこれかじってる…テングザルあっ見たことある…
長い調査を通じて初めて間近で観察することができたメス
あ〜食ってるねぇ昨日の果物…
松田は「チチ」と名付けていた
彼女を追いかけてテングザルが木の実を口にすることを発見したそうだ
出会ったのは2年ぶり
チチの尻尾は途中でわずかに曲がっている
尻尾の形や毛並みの特徴などを把握すれば個体を見分けるのは難しくないと松田は言う
うわ〜…まぁねサルは別に…チンパンジーとかゴリラと違いますからね
「チチ」という名は漫画「ドラゴンボール」の登場人物から取った
そんな工夫もひそかな楽しみ
テングザルが川沿いの木の上で眠るのは天敵を避けるためだけなのか
松田は他にも理由がありそうだと考えていた
それは彼らが蚊を嫌うからかもしれない
川べりから森の奥に向かって6か所に蚊の捕獲装置を取り付け分布を調べることにした
一夜が明けて…
設置場所ごとに手分けして蚊を数える
フィールドの鬼はこんな作業もいとわない
鼻息で吹き飛ばさないように気を付けなければ
全て数え終わるまでに3時間余り
テングザルが川のそばを選ぶ理由の1つは蚊が少ないからかも
だから…
(雷鳴)
森に入れない時はとっておきのあれを堪能する
Yeahyeahyeahyeah
スコールごときに落胆しているようではフィールドワークは務まらない
目の前に牧場があったおかげで動物に親しみ昆虫採集にも夢中になった
1浪して工学部に進んだが専ら遊びほうけていたそうだ
転機は4年の時だった
クモザル研究の権威西邨顕達教授と出会いアマゾンでの調査に誘われる
なかなか出会えないクモザルがなぜか松田の前には頻繁に現れ教授を驚かせた
まぁ何かこう…ただいま〜
現在は中部大学の准教授
結婚7年
家に帰れば妻と3人の子供たちが待っていた
丈君?丈君?丈君?丈君?ごはん食べるか?何か寝てるねすごい丈君…いやもらってる大量にもらったのアレルギーのやつも
妻の悠子さんは夫の研究を陰で支える功労者だろう
1年の大半をジャングルで過ごす松田は日本に戻ると必ず午後6時には帰宅して子供たちの面倒を見る
喉を通らない
(悠子さん)喉を通らない
初めて単独でボルネオに入った時は英語が苦手で調査の許可に難渋した
途方に暮れた松田は交際していた悠子さんを呼び寄せる
交渉事を全て引き受けた悠子さんは勤めを辞めざるをえなかった
後先考えずに行動する自分を松田はちょっぴり反省している
えっ?いやいや自分がね躊躇しなかったことを?いや…全部いろいろこういうことがあったとかいうのを逐一話してくれるしわぁ〜
(子供たちのはしゃぐ声)

 

 

 


妻の理解があるからこそ調査や研究にも思う存分のめり込める
何かいろいろこう…まぁやっぱりね…そんな何か大事な…
(スタッフ)ないんですか?ないと思いますよやっぱり…結局…それ何か意味あるの?ですよねだけど…まぁね
調査基地から3時間ほど車を飛ばすとテングザルの観察施設がある
一日4回
餌の時間には餌付けされた群れが姿を見せる
テングザルの長い鼻にはどんな意味があるのか
松田はこの施設で秘密を探る実験に取りかかった
(外国語)
オスの鳴き声は鼻の長さによって変化することが分かっている
そして群れのボスは皆鼻が長かった
だからまぁ…
低い声のほうがより多くのメスを刺激するのではないか
それを確認できれば一つの手がかりになるかもしれない
群れの前にまずは鼻が短いオスの鳴き声を聞かせてみる
その鳴き声は鼻が長いオスよりも高い
録音していた声をスピーカーから流した
(スピーカー:録音した鳴き声)
さしたる反応は見られない
今度は鼻が長いオスの鳴き声
(スピーカー:録音した鳴き声)
先ほどの声よりぐっと低い
(スピーカー:録音した鳴き声)
やっぱり反応らしい反応はなかった
何かね…だから…う〜ん
同じ実験を一日に数度繰り返し続けること5日
施設近くのホテルに泊まり記録した映像を丹念にチェックしていた松田がこれを見てくれという
一度だけ反応が出たらしい
でもねちょっと音が遠いので分かりにくいんですけど
(スピーカー:録音した鳴き声)でキョロキョロして…キョロキョロしてメスが嫌がって去って
(スピーカー:録音した鳴き声)ここでもう一回鳴いて
(メスの鳴き声)メスがギャ〜ギャ〜騒いでオスがディスプレーするという…でまだ興奮してる状態だから何かメスがそのあとザワザワしてもう一回でかいディスプレーに行くと
…と言われても何と答えていいのやら
すごい
そしてまたうれしそうにパソコンと向かい合う
6日間で38回の実験を重ね反応らしい反応があったのは一度きり
そろそろ帰国しなければならない
テングザル最大の謎はたやすくは解けないのだ
20日間の調査を終える頃松田一希はとてつもない光景を目にしてしまった
テングザルが交尾しているさなかのこと
他のメスがオスの鼻に触れたのだ
鼻の長さを考えるヒントになるかもしれない
フィールドの鬼はまたしても新たな課題を見つけたようだ
今度来る時は交尾も狙おう
めったには見られないというけれどサル運がきっと味方してくれる
釣り士は川と一つになる
男はずっと待っていた
いよいよ幻の魚に勝負を懸ける
2016/12/11(日) 23:00〜23:30
MBS毎日放送
情熱大陸【松田一希/テングザルなぜ鼻が長い?若き研究者の新たな挑戦を追う!】[字]

霊長類学者/松田一希▽世界でも数少ない“テングザル”研究者。ボルネオ島にだけ生息する野生の個体を11年かけて研究する「フィールド調査の鬼」ビックリ新たな発見?

詳細情報
番組内容
“天狗”を思わせる巨大な鼻に、大きくせり出した太鼓腹…一度見たら忘れられない個性的な容貌とユニークな習性の“テングザル”は、名前こそ広く知られているがその生態は謎に包まれている。世界でも数少ない研究者として基本的な生態から従来の常識を覆すような発見を世に送り出しているのが霊長類学者の松田一希である。彼の11年にも渡る調査生活やボルネオ島での“ある実験”に密着。世界が注目する若手研究家の挑戦を追う。
プロフィール
【霊長類学者/松田一希】
1978年静岡県生まれ。昆虫採取に明け暮れる少年時代を送るが、同志社大学では無縁の工学部に在籍。偶然クモザル調査に同行した際に動植物の謎めいた生態に魅了された。「あまり研究されていない」という理由でテングザルを選択、北海道大学大学院へ進学。京都大学霊長類研究所などを経て、現在は中部大学創発学術院准教授(京都大学野生動物研究センター特任准教授も兼任)ドリアンが大好きな38歳
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】オルタスジャパン