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セリフ書き起こし 終着駅の牛尾刑事VS事件記者冴子 2017.02.05

(鳥のさえずり)
(パトカーのサイレン)
(山路刑事)高坂真也39歳。
住所は杉並区天沼5の3の8。
勤務先は校倉商事。
(牛尾正直)校倉商事営業本部本部長。
39歳で巨大商社の部長さんだ。
エリート街道まっしぐらのはずがなんで自殺なんかするかねぇ…。
自殺?
(山路)通報者の新聞配達員が落下してきたのを目撃したそうなんだがまったく声を発さずスーッと落ちてきたって言うんだ。
事故や事件だったら「あーっ!」とか「やめろ」とか当然なんらかの声を発するはずだろ?けどそんな声はまったく聞かず屋上にも争ったような形跡はまったくなし。

 

 

 


(山路)あのバカッ…修羅場になるから奥さん署の方に連れて来いって言ったのに…。
奥さん落ち着いて!
(高坂昌子)あなた!
(山路)奥さん!奥さん!
(昌子)あなた!あなた!あなた…あなた!どうしてよ…なんで一人で…。
死ぬ時は一緒って約束したじゃない!ずっと一緒って約束したじゃない!
(昌子)なんでよぉ…。
許さない…。
絶対に許さない…。
(昌子)あなた…。
あなた!あなた…。
遺書は残されてたんですか?いえ…そういうものは何も…。
でも主人が部長に昇進した頃から部長のいすは俺には重過ぎるって思いつめてて…。
(昌子)私も…主人の姉たちも心配してたんです。
おかしな事をするんじゃないかって…。
昨日も夕方ちょっと出て来るって言って出かけたまま…。
私…心配であちこち…。
そしたら…。
そしたら…。
奥さんの証言身内の証言遺体自体にも不審な点などはなく私たちは高坂真也の死を自殺と断定し事件を処理しました
その時は1年後にまさかあんな形で再び高坂の妻高坂昌子に会う事になるとは夢にも思っていませんでした
(昌子の声)どうしてよ!なんで一人で…死ぬ時は一緒って約束したじゃない…。
大上…このホトケさん確か…。
(大上刑事)そうなんです。
去年ご主人に自殺されたあの女性です。
高坂昌子。

(大上)死因はご覧の通りで死亡推定時刻は昨日11月6日の午後7時頃から9時頃の間。
でもなんか信じられませんよ。
亭主に死なれた時は半狂乱で後追い自殺でもしかねないほどの悲しみようだったのに1年ちょっとでお連れ様ですからね。
お連れ様…?
(西谷刑事)男と一緒だったそうです。
凶器に使われてた方の浴衣はどこにあるんだ?
(西谷)バスルームです。
(海野鑑識課員)あっ浴衣だったらここです。
ここで脱いでヒモだけを向こうに持って行ったって事か。
なんでなんだろう…。
牛尾さん何か?首を絞められて殺されたにしてはほとんど抵抗した形跡もないしそれにそれほど苦しそうな顔をしてないから。
(大上)うとうとしてる時にいきなりやられたんじゃないでしょうか。
男と楽しんでまだ夢の中にいるうちに…。
(山路)ガイ者は去年の12月頃から月1回から2回のペースでこの部屋で男と会ってたそうだ。
もしかしたら1年前の亭主の自殺の原因はこのかみさんにあったんじゃないのかなぁ。
不倫だよ不倫。
ガイ者とお連れ様の不倫に悩んで屋上からポーンと。
何が「死ぬ時は一緒」だよ〜ほんと怖いよ女は。

(坂本課長)人が変わった?
(大上)ご主人が亡くなった直後から派手になって金遣いも荒くなって遊び回っていたそうです。
亭主の自殺でかなりの金額の保険金が入ったそうですからその金で遊び回っていたんじゃないかと。
(坂本)子供はいなかったんだよな?確か。
(大上)ええいません。
夫婦仲はよくどこへ行くのも2人一緒で評判の仲のいい夫婦だったそうなんですが。
それが亭主が自殺した途端に豹変か…。
よほどショックだったんだろうな亭主の自殺が。
凶器のヒモからかすかですが指紋が検出されました。
水道の栓シャワーノズルそれにルームサービスのナイフやフォーク等々に残されてた指紋と一致しましたから連れの男の指紋とみて間違いないと思います。
ありがとうございました。
失礼します。
お連れ様の特定出来ました。
防犯カメラにバッチシ!
(西谷)拡大してきました。
年齢は30半ばから40くらい。
身長は180以上のがっちりした男でいつもバリッとした高級な背広姿だったそうです。
(山路)ホテルから帰る時は必ず正面玄関のタクシーを利用していたそうですからそのあたりからたどっていけば割と簡単にたどり着けるんじゃないかと。
トントン拍子だな。
全員でこの男の身元確認ならびに確保にあたってくれ。
(大上)新宿西署の者です。
最近この男性乗せてないですか?お仕事中すいません。
この男見た事ないですか?もう一社回るか。
昼飯はそれからに…。
はい。
(携帯電話)牛尾だ。
連れの男の身元判明しました。
笹村慎介35歳。
職業は車のディーラーだそうです。
(笹村)殺したりなんかしてませんよ私は。
やってない!?だったらなぜこの凶器の浴衣のヒモにあんたの指紋がついてたんだ!?
(笹村)あのねぇ刑事さん。
俺は彼女と午後のひと時を楽しんだんです。
浴衣に着替えてくつろいだんだ。
指紋がついてて当然じゃないですか。
第一俺が彼女を殺さなきゃならない理由なんかないよ。
あんたは2度結婚して2度とも別れてるよな。
離婚の原因は2度とも暴力だ。
すぐカッとなって暴力を振るう。
あの時もそうだったんだろ!ついカッとなって首を!そうなんだろう!!刑事さん…。
このスーツいくらすると思います?イタリア製で36万。
靴もイタリア製で18万。
時計が86万でブレスレットが32万。
みんな彼女からのプレゼントです。
わかるでしょ?彼女は俺の金づるだったんです。
そんな彼女をなんで俺が殺さなきゃならないんですか。
だからカッとなったんだよ!カッとなってつい!!刑事さん…。
俺があの部屋を出た時彼女はピンピンしてたんです。
これからパーティーに出なきゃならないからシャワーを浴びて化粧をしなけりゃって。
パーティー?
(笹原)同じあのホテルの上の階で知り合いのパーティーがあるからそれに出るつもりだって…。
誰のパーティーかわかりますか?そのパーティー。
(笹原)有名人だって言ってましたよ。
ヘアメークアーティストの長井真美子。
(長井真美子)出席するという連絡は頂いてたんですけど結局お見えにならなかったんです。
(真美子)高坂さんあの時何か用事でも入っていらっしゃれなくなったんだろうって…。
それが…。
失礼ですがどういった趣旨のパーティーだったんですか?ああ…私が自分のお店をもつようになって今年でちょうど10年になるんです。
先日オープンした広尾のお店が7軒目でラッキーセブンでお祝いしましょうよってお客様たちが開いてくださったんです。
パーティーは何時から何時までだったんですか?午後7時から9時まででした。
7時から9時ですか…。
何か…。
(大上)高坂さんが殺されたのがちょうど7時から9時の間なんです。
まあ…。
長井さんは高坂昌子さんとは親しくしてらっしゃったんですか?高坂さんがうちのお店にいらっしゃるようになって4年ほどになります。
ですから親しくないといえば嘘になります。
でも私どもの親しさは鏡の中だけみたいなところがあって。
鏡の中だけ…?ええ。
鏡に向かってる時は私どももお客様もほんとに色々お話をします。
それこそ世界情勢からご近所の噂話まで。
でも終わってしまえばそれまでって言いますか…。
お店の中では親しくしてても外へ出てまた会う事はない…個人的な付き合いはなかった…そういう事ですか?ええ。
疑いは濃いものの笹村の供述には信憑性が感じられる部分もありまた直接的な証拠もないためいったん釈放という処置がとられました
(呼び出し音)
(緒方浩平)チッ…違うよ牛尾さん違うんだよ。
このヤマはあんな男と女の下世話な単純な結末なんかじゃねぇんだよ。
もっと深くて深くて深くて…。
もしもし。
緒方です。
ご無沙汰してますね。
背任横領?
(緒方)ええついひと月ほど前なんですけどね本庁の二課が校倉商事に内偵に入ったっていう情報を入手したんですよ。
会社ぐるみの大がかりな背任横領をやってるんじゃないかっちゅう…それもだいぶ前から。
牛尾さんもご存じだとは思うんですけどその校倉商事っていうのは創業者の山原一族が経営権を牛耳っていて会社を私物化してるっていうもっぱらの噂なんですよ。
そしてその背任横領の中心人物と目されていて二課が最も注目をしているのが専務取締役の山原良信。
この男です。
実はこの山原は死んだ高坂真也の直属の上司であり大学の先輩でもあるんですよ。
つまり高坂は山原の側近中の側近だったって事です。
じゃあ浩平君は高坂真也の自殺はその背任横領に絡んでるとそう…。
牛尾さん。
高坂ってほんとに自殺なんでしょうかね…。
え?色々調べてみたらねこの高坂はめちゃめちゃ生真面目な性格なんですよ。
そんな生真面目なやつが遺書も残さずに自殺なんかすると思いますか?もしかしたらこれ…偽装自殺なんじゃないでしょうかね。
偽装自殺?だって高坂は校倉商事の中じゃ山原の最も近い場所にいたんですよ。
もし彼が横領のからくりを知っていたとしたら山原一族にとっちゃ最も危険な存在って事になります。
出来れば消えてもらいたい…そう思ったとしてもなんの不思議はないし高坂の奥さんが夫の死の真相を知ったとしてもこれまた別になんの不思議もないでしょ?けど浩平君。
ご主人は自殺だって言ったのはあの奥さんですよ。
奥さんは私たちにはっきり主人は自殺だと…。
どうしたんですか?許さない…。
絶対に許さない…。
もしかしたら…あの言葉…。
気になりますねぇなんですか?あの言葉って。
あら…ちょっと水くさいんじゃないですか?こっちはこんな親切に情報提供してんのに。
(川村冴子)なーにもめてるんですかぁ?男2人が顔くっつけ合っちゃって。
牛尾さんお久しぶりです。
どうも。
牛尾さんは確か今エクセレントホテルの殺人事件の捜査に入ってるはずですよねぇ。
浩平さんは今何を追ってるのかは知らないけど浩平さんが興味を示すネタといえば政治ネタか経済ネタ。
その2人がこんなところで話し合ってるという事はそのホテルで殺害された女性の死には何か政治とか経済ネタが絡んでいる…。
勝手に想像ふくらましてろ。
それよりお前さん最近いい仕事してんじゃねぇかよ。
今度の連載あれなっかなかだぜ。
褒めてやるよ。
浩平さんが褒めてくれるなんて天地がひっくり返るわ。
牛尾さん読んでくれました?私の連載企画。
いやぁ…まだ…。
あ〜もう読んでくださいよ。
事件記者川村冴子渾身の一作なんですから。
1回目はね富山県の…。
冴子さんすいません…。
私はこれで。
じゃあ。
(緒方)えっ?あっ…。
何話してたの?教えてよ!もしかしたらあの言葉か…。
なんか引っかかったな牛尾さん。
何が偽装自殺だよ。
何が校倉商事の背任横領の闇を知ってただよ!モーさんは自分の言ってる事がわかってんのかよ!偽装自殺ってのは殺しって事なんだぜ。
俺たちは殺しを自殺と間違えてたって言ってた事になるんだぜ。
それがどんな事なのかわかって言ってんのかよ!?モーさんだってあの時ちゃんと聞いてたじゃないか!奥さんは我々に「主人は自殺です」ってはっきり!確かにそれは聞いた。
でも違う事も聞いたんだ。
(山路)違う事?なんだよそれ。
現場に駆けつけた時奥さんは…。
絶対に許さない…。
あの時自分一人を残して勝手に死んでいった夫を許さない絶対に許さない…。
そう言ったんだと思ったんです。
でも高坂昌子があの時すでに夫の死の真相について何か気づいてたとしたら夫を死に追いやった人間を許さない絶対許さない…。
そう言ったんだとも…。
その奥さんが1年後に何者かに殺害された。
モーさんは高坂昌子の殺害は夫である高坂真也の死と関連がありそれは校倉商事の背任横領に結びつく…そう考えているわけだ。
そこまではっきりとは…。
ですが高坂昌子殺しはそう簡単に男と女の痴情のもつれと決めつけず1年前の高坂真也の死も視野に入れて捜査すべきじゃないかとそう思ってます。
モーさん。
正直どう思う?高坂真也は自殺だったのかそれとも…。
私はやはり自殺だったと思ってます。
はあ!?根拠は?声…それに解剖結果です。
事故や事件だったらあの時山さんが言ってたように高坂さんは当然なんらかの声なり言葉なりを発したはずです。
ですが目撃者は声などまったく発さずただスーッと落ちてきた…そう証言しています。
それに解剖の結果も酒も検出されなければ睡眠薬のようなものもまったく検出されなかったんです。
どう考えても自分の意思で飛び下りたとしか考えられません。
(山路)だろ?やっぱり自殺だよな。
(坂本)いずれにせよ高坂夫婦の事は詳しく知る必要がありそうだ。
明日からは自宅の徹底的な捜索近所への聞き込みおよび夫婦の友人知人のリストアップに全力をあげてくれ。
(一同)はい。
校倉商事の件は本庁の那須警部に連絡をとってみる。
二課の動きを何か知っているかもしれないし。
お願いします。
どうして遺書を残さなかったんだろう…。
澄枝…澄枝だったらどっちがいい?
(牛尾澄枝)ん?何が?遺書を残さないで自殺されるのと遺書を残して自殺されるのとでは…。
やだ。
おかしな事言わないでよ。
そんなのどっちも嫌よ。
だったらどっちが優しいと思う?遺書を残して死んでいくのと何も残さないで死んでいくのとでは…。
だからどっちも嫌だってば。
なぜ…遺書を書かなかったんだろう。
もう1本つけた方がよさそうね。
(那須警部)状況はよくわかりました。
二課長によろしくお伝えください。
どうも。
「はい牛尾です」那須です。
明日ご一緒願えませんか?
(山原良信)高坂君は大学の後輩で入社当時から私の下にいてくれたものですからかわいがってました。
仕事もよく出来たしいいやつでした。
高坂さんは39歳の若さで部長になられたのは異例の抜擢で山原さんの強いヒキがあったからだと聞きましたが。
(山原)そんな事はないですよ。
高坂君は優秀な人材でした。
彼がその地位に上ったのは当然の事です。
高坂君の死は会社にとって大きな損失です。
ほんとに残念です。
(那須)山原さんはうちの二課が校倉商事に対して強い関心をもってる事はご存じですね?
(山原)ああ…会社ぐるみの大がかりな背任横領?バカバカしい。
言いがかりですよ。
調べたいんなら正々堂々と調べに来ればいいんだ。
1年前の高坂さんの自殺の原因は校倉商事の背任横領に絡んでいてもしかしたら高坂さんは自殺じゃなく偽装自殺だったんじゃないかという見方も…。
はあ?偽装自殺?自殺に見せかけて誰かが殺したんだという事だと思いますが。
ほう…そうなんですか。
だがありもしない事が原因で自殺なんかするわけはないしましてや…その事が原因で殺されるなんていうのは論外だ。
でしたら山原さんは高坂さんの自殺の原因について何か心当たりは…おありですか?いえ。
(山原)ああ…だが今になってみるともしかしたら…と思う事ありますね。
お聞かせ願えませんか?先日…高坂君の奥さんが亡くなりましたね…。
ホテルで男と密会していたとかで…。
もしかしたら高坂君はその事を悩んでいたんじゃないかと…。
(那須)つまり高坂さんは奥さんの不倫で悩んでてその事が原因で自殺したと。
いや…それはわかりませんよ。
しかし高坂君は奥さんをとても大事にしてましたから…。
山原さんは高坂さんの奥さんとは親しくしてらっしゃったんですか?別に親しくはしていませんよ。
2〜3度お会いした程度ですかねえ。
2〜3度しか会ってなくても不倫しそうな女性だとおわかりになったわけですか。
牛尾さん。
男とホテルで密会していてその男に殺されたんでしょう?当然そういう女性だと考えるんじゃありませんか。
その男が犯人だと決まったわけじゃありません。
え?その時間高坂昌子さんが殺された11月6日の午後7時頃から9時頃までの間ですが山原さんはどちらにいらっしゃいましたか?あなたたち…まさか私があの奥さんを殺したってそう?関係者の方は全てにお聞きしてる事です。
どちらにいらっしゃいましたか?その時。
…調べてみましょう。
どうですか?牛尾さんの感触としては。
きれいな言葉で飾ってはいましたが高坂真也の死でほっと胸をなで下ろし今回の奥さんの死でさらにほっと胸をなで下ろしている。
そんな感じを受けました。
私も同感です。
ですが料亭へ行っていたというアリバイははっきりしてるわけですから。
いや…山原のアリバイはそれほど気にする必要はないと思います。
あの手のタイプの男は…。
絶対に自分の手は汚さない。
他の人物にやらせた可能性が考えられる…そういう事ですね。
そうです。
私はもうしばらく山原をマークしてみます。
どこかでほころびが出るかもしれませんから。
お願いします。
では!
(携帯電話)牛尾です。
牛尾さん今高坂の家を捜索中なんですが…。
大至急来て頂けませんか?妙なものが見つかりまして。
(大上)これなんですけど。
この5000万の方は支払先がさくら生命になってますから夫の高坂真也の生命保険だと思いますし100万の方は支払先が校倉商事ですから会社としての弔慰金みたいなものだと思うんです。
保険金にも弔慰金にもまったく手をつけてないわけだなガイ者は…。
それだけじゃないんです…!こっちの通帳は高坂夫婦が普段から使っていた通帳だと思うんですがこちらも去年の10月以降高坂真也が死んだ直後からですが公共料金の支払いや税金なんかが自動引き落としにされてるだけでガイ者はこの1年間一切金を引き出していないんです。
えぇ…!?他に通帳はなかったのか?ありませんでした。
この3冊しか。
亭主が死んだ直後からガイ者の生活が派手になり金遣いが荒くなった事はみんなが認めてます。
笹村にも高額なものばかりプレゼントしてる。
だとすると彼女自身の生活費を含めたそういう金は一体どこから…。
誰かを脅してた…。
やっぱり亭主の死の真相でしょうか。
その事を知ってそれを金に換えて…。
だとしたら彼女はなんらかの確証を握ってたはずだ。
もしかしたらまだこの家のどこかに…。
座敷の方を捜してみます。
『神の力』…。
大上。
はい!これガイ者だよな?ああそうですねえ。
だいぶ昔みたいですけど面影あります。
誰だろう…あとの2人。
(大上)右側の女の子は被害者の高坂さんなんですが他の2人に心当たりありませんか?
(笹村)いや…ないですね。
(大上)じゃあこっちはどうですか?高坂さんが切り取ってその写真と一緒にしまってた記事なんですが。
なぜその記事を切り取っていたのかお心当たりがあれば。
わかんないですね俺は。
そうですか…。
何か思い出しましたら署の方へご連絡ください。
どんな事でも構いませんので。
じゃあ。
何してんのよ!?
(笹村)ライター借りようと思ってバッグ開けたらそんなものが入ってたからつい…。
大事なものなのか?何隠してんだよ…。
ちゃんと話せよ。
そんなに大事なものなのか?大事なものよ…。
犯人が写ってるんだから。
(笹村)犯人?いつか…私を殺す犯人。
山原って…校倉商事のあの山原ですか?山原良信の奥さん。
真ん中の男は知りませんけど左側の女の子は山原専務の奥さんでしょう。
山原の奥さん…。
(山原知子)懐かしい…。
こんな写真あったんだ。
奥さんは高坂昌子さんとはどういう…?昌子とはクラブで知り合ったんです。
あの頃…私は父が再婚して家にいるのが嫌で遊び歩いてて…。
昌子も同じような事情で…それで仲良くなって。
よく一緒に遊び回りました。
ご主人の方は同じ会社に勤務し奥さんたちの方は幼い時からの友達。
でしたら仲良くなさってたんですか?ご夫婦同士で。
それが…そうでもないんです。
高坂さんってほんとに真面目な方でうちの山原と一緒だとプライベートな時でも上司と部下の関係を崩さないらしいんです。
だから…夫婦4人で会う事なかったし私自身も高坂さんとはほとんど…。
でもショックでした。
高坂さんが自殺したって聞いた時は。
その高坂さんの自殺なんですが奥さんが高坂さんが自殺するような原因に何か心当たりはおありですか?いえ…今も申し上げたように高坂さんとはほとんど会った事なかったし昌子も高坂さんの自殺の事については結局何も言わないまま…。
(ため息)なんか不思議な気がします。
昌子がもういないなんて。
奥さんはその写真の真ん中の男性ご存じですか?
(知子)ええ。
確か…粕谷さん。
昌子が当時付き合ってた予備校生です。
その人が今どちらにいらっしゃるかご存じでしたら…。
亡くなりましたけど。
車に轢き逃げされて…亡くなったんです。
轢き逃げ?事故が起きた時昌子粕谷さんと一緒にいて事故を目撃したらしいんです。
でも夜だったし強い雨が降ってたから犯人の事はもちろん車の事もほとんどわからなかったって。
じゃあ…犯人は今も捕まってないんですか?そうだと思います。
その事故の事について最近高坂昌子さんは何か言ってらっしゃいませんでしたか?何かを思い出したとか気になる事があるとか…。
いえ…何も言ってなかったと思うけど。
そうですか…。
奥さんはこの記事の事について何か心当たりおありになりませんか?昌子さんが切り取ってあの写真と一緒にしまっていた記事なんですが。
わかりません。
じゃあ最後にもう1つだけ。
昌子さんが亡くなられた時11月6日の土曜日午後7時頃から9時頃までの間ですが奥さんその時どちらにいらっしゃいましたか?あの時でしたら私もあのホテルにいたんです。
えぇ…?ヘアメークアーティストの長井真美子さんのパーティーがあったんでそれに出てたんです私。
(知子の声)真美子さんのお店に行くようになったのも昌子の紹介だったんです。
奥さんはパーティーの間ずっとパーティー会場にいらっしゃいましたか?ええ。
私幹事命じられてたんであの日忙しくて…。
洗面所に走る以外はずっと会場に詰めてました。
山原の奥さんが事件時刻にあのホテルにいたって事はちょっと引っ掛かりますね…。
しかし山原知子にガイ者を殺さなければならない動機があるとは…。
高坂真也の自殺との関連はどうでしょう?金の流れから言ってガイ者が誰かを脅していた事は間違いありません。
その脅しのネタが夫の死の真相であり脅されていたのが山原良信だったとしたら…。
夫の窮地を見かねた妻がやった。
あるいは…山原の方が完璧なアリバイを作っておいて女房にやらせた…とも考えられます。
どう思いますか?牛尾さん。
その可能性もなくはないと思います。
山原良信が校倉商事専務取締役という地位を失ってしまえば妻である山原知子もまた専務夫人という座を失ってしまうわけですから。
…となるとあとは証拠ですよね。
失礼します!例の写真の男ですが確かにその事故は起きてますね。
事故が起きたのは平成6年ですから今から16年前の12月18日。
現場は渋谷区神宮前。
時間は深夜の午前1時20分頃です。
(大上)被害者は粕谷勇二十歳。
現場付近のアパートに住む予備校生で実家は富山県の八尾だそうです。
八尾?「風の盆」って言いましたかね…祭りで有名な。
ああ…あの。
高坂昌子がその事故を目撃してたっていうのは間違いないのか?間違いありません。
ですが山原知子の言っていたとおり強い雨とショックとでほとんど何も覚えておらず犯人の車は白っぽい普通の車だったという証言しか得られなかったそうです。
で犯人はいまだに捕まっていない…。
はい。
(坂本)モーさん。
モーさんはその轢き逃げ事件が今回の事件と何か絡んでると…そう?わかりません。
ですが轢き逃げという事実は例え時効になっていたとしても十分に脅しのネタにはなると思います。
ですがこの記事の方がどうにも…。
わざわざ切り取ってあの写真と一緒にしまってたわけですからガイ者にとってなんらかの意味があったからだと思うんです。
それがなんなのかがさっぱりと…。
(山路)一体どっちなんだよモーさん。
脅しのネタは最初は校倉商事の背任横領に絡む亭主の死の真相だと言っていたのに今度はそれとは似ても似つかない16年前の轢き逃げ事件に今週の一冊。
どっちかに絞ってくんねえかな…。
じゃなきゃ俺たちだって動きようが…。
申し訳ない…!それほどこだわってるわけじゃないんだ。
なんかちょっと気になったもんだから…。
よし。
じゃあ山原良信・知子夫婦マークで。
いいですね?結構です。
おかえりなさいませ。
(山原)うむ。
誰か来てたのか?今男が出て行った。
車の売り込み。
ディーラー。
ふ〜んこんな時間にか…。
まあいい。
君がどんな時間に誰と会おうとそんな事は君の自由だ。
あなた…。
今の男昌子が付き合ってた男…。
彼女の愛人。
車買ってくれって言われたけどどうする?買う?
(知子)それとも…。
(パトカーのサイレン)
(パトカーのサイレン)
(吉田刑事)あっ鑑識さんもうええけん。
はいレスキューさんはいあの…やってうん。
笹村慎介の死は捜査本部に衝撃をもたらしました
笹村はなぜそんな場所へ行きそしてなぜそこで殺されなければならなかったのか…
高坂昌子の死と無関係とは思えませんでした
ああああ…。
(吉田)あの!新宿西署の牛尾さんですけ?そうです。
八尾署の吉田です。
お待ちしておりました。
どうぞこちらへ。
(無線)「連絡終了…」
(車の走行音)
(車のドアの開閉音)
(吉田)えーあそこで発見されました。
えー直接の死因は水死なんですがその直前にナイフで背中を刺されておりましてその直後に川に突き落とされたがと思われます。
でですねええーっと死亡推定時刻は一昨日11月16日の夕方。
そんで午後3時頃から5時頃までの間ですねっ。
えーでまあ…。
吉田さん。
はい?ここから八尾は近いですよね?ええ近いがですがあのもん…。
え?八尾に何か…。
越中八尾町は富山平野の南飛騨の山々を源にする井田川の川岸の丘に細長くのびる美しい坂の町です
16年前に轢き逃げされて死亡した粕谷勇
彼の実家が殺人現場に近い事が気になっていました
名前は笹村慎介。
亡くなられた息子さんの事を聞きにこちらへ来たんじゃないかと思いまして。
(粕谷節子)いえ…こういう人はお見えにはなりませんでしたけど。
そうですか。
あの子が死んでもう16年になります。
もう誰もあの子の事なんか…。
東京で1人暮らしをさせる事は心配でした。
私の目が行き届かなくなるとはめを外すんじゃないかって…。
案の定でした。
勉強もしないで遊び歩いてたようです。
事故の連絡を頂いて慌てて東京に行った時にはもう…。
親より先に逝ってしもうなんて…ほんとにほんとに親不孝な子です。
でもあの子は最後の最後になってようやく1つだけ親孝行してくれました。
東京へ行って2年。
その間1回も八尾へは帰ってこんかったのに事故のあった年の風の盆の日にひょっこり帰ってきてくれて。
ほんとに久しぶりに親子2人で風の盆を楽しんだんです。
いい思い出を作ってくれました。
最後の最後になってようやく…。

私の推測は外れでした
だとしたら笹村は一体なんのためにこの地へ来たのか
そして誰になんのために殺されたのか…
牛尾さん!牛尾さーん。
どうなさったんですか?こんなところで。
冴子さんこそどうしてここへ?私は最終回の取材。
最終回?う〜ん…やっぱり読んでくれてないんだ牛尾さん。
え?ほらこの前珍しく浩平さんが褒めてくれた川村冴子渾身の一作『殺されていく子供たち』。
あのシリーズの第一回目が井田川で産み捨てにされていた赤ちゃんの事だったんです。
それで最終回もその赤ちゃんで締めようと思って。
『殺されていく子供たち』…。
そう!「ていく」…?冴子さん…この記事冴子さんが書いた記事ですか?ああそうですけど…。
でもどうして半分しか?冴子さん今すぐこの記事の全文読みたいんですけど持ってませんか?持ってますけど…。
ただし…。
わかってます。
話せる事は全てお話しします。
ですからとにかく読ませてください。
今すぐ。
記事は16年前のおわら風の盆の日に井田川に産み捨てにされていた赤ちゃんの事が書かれていました
母親のものと思われるピンクのTシャツを着せられ細長い赤いリボンを手首に巻かれた女の赤ちゃんは死産で生まれており血液型がO型であるという以外の事は結局何もわからず小さな無縁仏になって葬られたのです
死産で生まれたわけだから正確に言うと殺されたわけじゃないんですけどなんだかすごく心惹かれたんです。
手首に結ばれていたっていう赤いリボンに…。
赤いリボンは女の子だったからせめてもの手向けにって母親が自分がしていたリボンをほどいて結んでやったんじゃないかって…。
そのリボンのもう一方の端を母親は今でもどこかでしっかりと握りしめている…そんな気がして。
だから一回目はこの赤ちゃんでいこうって。
でもその記事と牛尾さんが追ってるホテル殺人事件それに16年前の轢き逃げ事件は一体どう結びつくんですか?わかりません…。
被害者の高坂昌子が誰かを脅してた事だけは間違いありません。
ですが冴子さんのこの記事が脅しのネタだとしたら彼女はなぜ半分しか取っておかなかったのか…。
わかった…!割り符なのよ!割り符!割り符?ほらあの…時代劇なんかでよくやってるじゃないですか。
仲間同士の無言の合い言葉っていうかそれさえ見せ合えば仲間だって事がスパーッとわかるってやつ!もう1人いるんですよ脅迫者が。
後半部分はそっちの脅迫者が持ってるんですよ!
(携帯電話)牛尾です。
ああ牛尾さん。
事件当日のガイ者の足取りがわかったがです。
笹村はですね春日温泉の「雅楽倶」っちゅうホテルに行っとります。
春日温泉の雅楽倶…。
牛尾さん笹村はですねタクシーでここに来とるがですがそのタクシーの中で妙な事を言っとったそうなんです。
(運転手)お客さんなんだかさっきから嬉しそうですけどなんかいい事でもあったんですか?…まあね。
今度遺産を相続する事になったんだ。
相続税のいらない裏の遺産。
裏の遺産…。
そう言っとったそうなんです。
裏の遺産もしかしたら…。
牛尾さん!牛尾さんじゃないですか!知り合いなんです。
ちょっとすいません。
ショップをのぞいたらなんと写真のあの女性がいるじゃないですか。
連れの女性は前に一度インタビューした事がある長井真美子だから「お茶でも」って引っ張ってきたんです。
こんなところでお会いするなんて…。
失礼ですがお二人はなぜこちらに?この前のパーティーの慰労会ってとこかしら。
静かなところで2〜3日のんびりしましょうよって真美子さんと誘い合って。
お二人だけでいらしたんですか?ええそうです。
お二人は笹村慎介という男をご存じありませんか?高坂昌子さんと交際してた男性なんですが…。
付き合ってる人がいるってのは聞いた事ありましたけど会った事はありません。
私も同じです。
お目にかかった事はありません。
その方がどうかされたんですか?殺されたんです。
おとといの夕方この近くの神通峡で。
こちらはその捜査にあたってらっしゃる八尾署の吉田さんです。
どうも吉田です。
こちらは東京で美容室を何店も経営してらっしゃる長井真美子さんと校倉商事の専務夫人山原知子さんです。
ああそうながですか。
ほんでほんであんたさんらはいつからここに来とらるがけ?私は15日からこっちに来てますけど。
(吉田)ああ…。
あんたさんも一緒け?いえ私は仕事がありましたからこっちへ来たのはおとといの昼です。
(吉田)おとといの昼?だとすると笹村慎介が殺された時殺害現場のごくごく近いとこにおったがでなお二人とも。
刑事さんあなたまさか私たちの事…。
いや〜もうあの…。
であんたさんは?おとといの夕方午後3時頃から5時頃までの間どこにおったがけ?その時間でしたら部屋で本読んでました。
誰かその事を証明してくれる人はおるがけ?いないわね残念だけど。
あんたさんは?私はこの近所を散歩してました。
でも誰にも会わなかったからその事を証明してくれる人は…。
(吉田)アリバイないっちゃ…。
川村さんでしたよね?あなたこの刑事さんたちに会わせるために私たちここへ引っ張ってきたんですか?とんでもない!私はぜひともお二人に私が書いた記事を読んで頂きたくて。
(知子)あなたの書いた記事?これなんですけど。
私その赤ちゃんのお母さんを捜しているんです。
心当たりおありじゃないですか?わからないわ私は。
私がこの赤ちゃんの母親だったらうんと自慢してやるのに…。
主人の母や山原の一族からしょっちゅう言われてるんです。
跡取りも産めない役立たずの嫁って…。
もうよろしいですか?お引きとめしました。

(知子)最初は昌子今度はなんとかって男の人。
私たちの周りに殺人がつきまとってるみたいだけどまさかあなたじゃないわよね?その言葉そのままお返しします。
まさか…奥さんじゃないでしょうね?どっちかなのよ牛尾さん。
あの2人のどっちかがあの赤ちゃんを産み捨てにしたんだわ。
冴子さん早とちりは…。
どっちにとっても産み捨てなんて事はとんでもないスキャンダルだもの。
あの奥さんにしてみればそんな事が知られたら名門山原一族からの追放を意味するわ。
即離婚になって叩き出される。
冴子さん…。
長井真美子にしたってそう。
イメージダウンは免れないし客が激減する事は間違いないわ。
そんな事にでもなったら店の経営自体だってどうなる事か。
どっちにしても2人とも天国から地獄へ真っ逆さま。
これは十分に脅しのネタに…。
冴子さん…。
どっちかなのよどっちか…。
ああ大変!忙しくなる〜!あっ牛尾さん何かあったら連絡お願いしますね。
あっ読んどる…。
あっ編集長大スクープです!あのシリーズの最終回…。
冴子さんの言うとおりなのかもしれない…。
ちょちょちょ…牛尾さん。
詳しく説明してくれっちゃ。
割り符です。
割り符?あの記事の後半部分の行方なんです。
ああ〜…ん?
高坂昌子が殺害された時も笹村慎介が殺害された時も現場にごく近い場所にいた2人の女…
山原知子と長井真美子
これは偶然とは考えられず捜査対象は山原知子の夫山原良信を加えた3人に絞られ動機の解明事件当日のアリバイが徹底的に調べられました
11月16日?3時頃から5時頃までの間ですがその間どちらにいらっしゃいましたか?この前は高坂君の奥さんが殺されて疑われ今度は誰が殺されて疑われてるっていうんですか?一体私は。
(那須)笹村慎介…。
(那須)この男です。
ご存じじゃありませんか?知りませんねこんな人。
どういう男なんですか?その男は。
もう一度お聞きします。
11月16日火曜日ですがその日の午後3時から5時までの間山原さんはどちらに?その日は九州へ行ってますね。
(那須)九州?秘書の杉本君常務の吉沢君も一緒でした。
彼らに聞いてみてください。
呼びましょうここへ。
(山原)あっ吉沢君と杉本君呼んでくれるか。
(田辺葉子)これがパーティーの参加者全員のリスト。
(大上)ありがとうございます。
パーティーの時ですが山原さんも長井さんもずっとパーティー会場にいらっしゃいましたか?
(葉子)いらしたわよもちろん。
そうですか…。
でもちょっと意外だった。
(横山百合子)そうそう雲隠れでしょ?
(大上)雲隠れ?真美子先生がねパーティーの最中に雲隠れしちゃったの。
会場からいなくなった時間があったという事ですか?そうなのよ!あんまり色んなお客様がお祝いに来てくださったんで緊張して気分が悪くなっちゃったわって。
それはどれくらいの時間で何時頃の事でしたか?そうね20分ぐらいだったかな。
えっと時間は…。
7時半ちょっと過ぎてたわね。
私が山原さんを捜し回ってた時だったから。
山原さんも?山原さんも会場にいらっしゃらない時間があったんですか?彼女も雲隠れ意外組。
タバコ吸いに行ってたんだって。
山原さんはどれくらいの時間会場にいらっしゃらなかったんですか?やっぱり20分かそこらじゃなかったかしら。
真美子さんと同じ頃に戻ってきたから。
長井さんも山原さんも午後7時半頃から約20分ほど会場にいらっしゃらなかった時間があった。
間違いありませんね?そうなんです。
あんまりたくさんの方たちがお祝いに来てくださったんで私緊張して気分が悪くなってしまって洗面所で休んでたんです。
(大上)どちらの洗面所に行かれましたか?
(真美子)パーティー会場の洗面所だとお客様と鉢合わせしてしまうかもしれないと思ったものですから上の16階のレストランの洗面所にいました。
そこでどなたかとお会いになりましたか?
(真美子)いいえ誰とも。
個室に閉じこもって吐き気と戦ってましたから。
長井さん。
はい。
長井さんはこちらの男性ご存じありませんか?両端の女の子は高坂さんと山原さんなんですが。
お目にかかった事はないと思いますけど。
そうですか。
皆さんが意外だったってそうおっしゃってました。
え?何事が起きてもめったに動じない長井さんがそれぐらいの事で緊張して気分を悪くなってしまわれた事もそれから山原さんがタバコをお吸いになるって事も。
やだ…バレちゃったんだ。
そうなんです。
時々こっそり隠れてタバコ吸うんです私。
普段人様の前では我慢するんですけどあの時なんだか無性に吸いたくなっちゃって…。
どちらで吸われましたか?外です。
ホテルの前の公園。
喫煙ルームじゃなくてホテルの外に出られたわけですね。
そうです。
どの出口から外へ出られましたか?えっと確か…。
あっごめんなさい。
忘れちゃった…どこから出たのか。
外へいらっしゃる時あるいはタバコを吸ってらっしゃる時にどなたかとお会いになりましたか?会うわけないじゃないですか。
こっそり隠れて吸ってんだから。
奥さん。
長井さんのパーティーを主催されたのは奥さんで会場のホテルも日時も全て奥さん1人でお決めになったと聞きましたが間違いありませんか?1人でなんて決めてないです。
全部真美子さんと相談したうえで決めたんです。
そうですか。
お二人でですか。
わかりました。
それじゃあ私たちはこれで。
あっそうだ。
パーティーの参加者リスト借りたっておっしゃってましたよね?だったらこれお貸しします。
パーティーの時の写真なんですけど。
何かのお役に立つかもしれないし…。
よかったらどうぞ。
一体どうなってるんですかね。
山原知子と長井真美子は。
神通峡に続いてまたもやアリバイなしの空白の20分。
殺人現場はホテルの13階。
パーティー会場はその2階上の15階。
20分もあれば犯行は十分に…。
牛尾さん山原知子と長井真美子は共犯なんじゃ…。
《なんでなんだろう》《抵抗もほとんどせずなんであんな顔で…》週刊誌の切れ端だ切れ端。
はい。
ええ暮らししとるがほんとに!あった!あったあった…!おお割り符だっちゃ割り符…。
裏の遺産か…。
(坂本)脅しのネタはこっち。
最初笹村は高坂昌子にそう言われてたって事だな?そうだと思います。
私が前半部分を笹村に見せた事で気がついたんだと思います。
高坂昌子が握っていた脅しのネタはこっちだって。
えーとですね…16年前の赤ん坊産み捨てが高坂昌子の脅しのネタっちゃそう考えてええがと思います。
笹村はそれを受け継ごうとして神通峡へ行きそれが原因で殺された。
脅されとったがはですねつまり赤ん坊を産み捨てにしたがは山原知子あるいは長井真美子に間違いないっちゃ思うがですけ今んところどっちなんかは…。
坂本さん。
とんでもない事がわかりました。
山原良信と長井真美子は愛人関係にあります。
(一同)え…!?2人の関係は3年前かららしいんですが長井真美子は一気に…しかも都内の一等地に次々と店をオープンした時期とちょうど重なるんです。
じゃあ…。
山原が横領した金はかなり長井真美子に流れてる。
そう見ていいんじゃないでしょうか。
だとすると長井真美子は山原の背任横領を知ってた可能性が考えられますね。
という事は山原良信が自分は完璧なアリバイを作っておいて愛人である長井真美子に自分たちの秘密を握っている高坂昌子を殺させたって事も…。
課長山原良信と長井真美子に任意同行を。
無理ですねそれは。
高坂昌子が山原良信の背任横領を知って脅してたという確証は今のところ我々は何もつかんでませんし夫である高坂真也の死の真相を知って脅してたんじゃないかってのもまた我々の推測であって証拠は何もありません。
推測で任意に持っていくのは無理です。
ただし我々が確証を握っているものが1つだけある。
これだ。
(坂本)高坂昌子の自宅にこの記事の半分があり笹村の自宅に残りの半分があったという事実。
そしてこれを所持していた2人が2人とも殺害されその2つの殺人現場付近に必ず2人の女…山原知子と長井真美子の姿があったという事実。
16年前に一体何があったのかという事です。
高坂昌子山原知子粕谷勇そして長井真美子の間に。
ねえもうちょっとでいいから手伝ってよ〜。
どうせ暇なんでしょ?浩平さん。
暇じゃねえよ。
忙しいんだ俺は今。
16年前に長井真美子が勤めていた美容院を探してるんだけど行き詰まっちゃったのよ。
(ため息)13年前まではなんとかたどれたのよ。
でもそれから先がまったく…。
肝心なのは16年前。
それがわかんない事にはどうしようも…。
だから手伝って〜。
あっ手伝ってくれたら赤レンガ亭のビーフシチューおごる!来々軒のワンタンメンとクリームあんみつもつけてくれたら考えてやってもいいぞ。
なんでもつけてあげる。
だから…。
ほんとだろうな?よし!長井真美子が16年前に働いていたのは渋谷区大山町にあるあさがお美容室って店だ。
えっ!?今時はなわざわざ探し回らなくてもいいの。
つぶやきゃいいんだよこいつに。
16年前長井真美子が働いてた店を教えてくださいって。
そうすりゃほら…一発で。
渋谷区大山町のあさがお美容室ね。
ちょっと間違ってたらおごってもらうわよ。
ビーフシチューにワンタンメンにえっと…。
クリームあんみつ。
違うんだよな…高坂昌子殺しは。
轢き逃げだの赤ん坊の産み捨てなんちゅう下世話な三面記事のヤマじゃなくてあくまで巨大商社校倉商事の金と闇をめぐる…。
ビンゴ。
これが今回のヤマの原点の店か。
懐かしいねぇ「ROUTE70」!確かに俺の店だよ。
こんな店をやってた時代もあったんだよなぁ俺も。
ご主人はこの3人の事覚えてらっしゃいますか?さあ…。
あの頃はこんな連中ばっかりだったから覚えてないねぇ。
でしたら当時の事をよく知っている人を誰かご存じありませんか?そうだねぇ…。
いるよ。
(早瀬弓子)懐かしい!こんな写真あったんだ。
この頃私色々やったもんよ。
ありがとうございます。
その3人とは親しくしてらっしゃったんですか早瀬さんは。
親しいってほどでもなかったんだけどもこの3人さ結構いいとこのお嬢ちゃんとお坊っちゃんでさ私バリバリの武闘派だったから。
はいすいません。
真ん中の粕谷さんなんですが16年前の12月に交通事故で亡くなってるんですがその事はご存じですか?ああそうだったねぇ。
確かえっと…。
あっいらっしゃいませ。
昌子が一緒にいて…。
そうそうその時さなんかおかしいなと思ったんだよね。
おかしい?そう。
だってなんで粕谷君と昌子が2人っきりでいたんだろうなと思ってさ…。
(大上)でも当時粕谷さんは昌子さんと交際していたそうですが。
何言ってんのよ!粕谷君と付き合ってたのは知子の方。
こっちこれ知子。
ありがとうございました。
すいません。
よく3人で一緒につるんでたんだけどでも粕谷君と付き合ってたのは知子の方。
で事故があった夜も一緒に3人で店に来てさそれで3人で一緒に帰っていったんだけどなのに事故が起きた時には昌子と粕谷君2人っきりだったって聞いたからあ〜あまたやっちゃったんだなと思って…。
また?ケンカよケンカ。
知子さ当時粕谷君と別れたがってたんだけどでも粕谷君全然別れる気なくてさ…。
すいません。
知子がその話しようもんなら殴る蹴るの暴力でさ…。
ほんとに嫌がってたな知子。
よいしょ…はい。
私思ったのよ。
粕谷君死んで内心ホッとしたんじゃないかな知子って。
すいませんどうも。
ありがとうございます。

(知子)確か…粕谷さん。
昌子が当時付き合ってた予備校生です。
(弓子)やだ…何言ってんのよ。
粕谷君と付き合ってたのは知子の方。
こっちこっちの知子。
事故が起きたあの日の夜も3人で一緒に店に来て3人で一緒に帰っていったんだよね。
なのに…。
牛尾さん?冴子さん。
「骨折り損のくたびれ儲け」ってこの事だわ。
長井真美子は今回の事件とは無関係みたい。
え…?16年前彼女は妊娠なんかしていなかったっていうし轢き逃げの方もそう。
どういう事ですか?当時彼女は通勤に車を使っていてこの道はまさに毎日の通勤路だったそうなんです。
でこれはもうてっきり!と思ったら大外れ。
車の色が違うんです。
彼女が当時乗り回していた車は赤い色の車だったっていうんです。
でも高坂昌子が目撃したのは白っぽい車。
いくら夜で激しい雨が降っていたとはいえ赤を白に見間違えるなんて事は…。
いや…それでいいんです。
え…?冴子さんじゃないけどどっちかなんです。
山原知子長井真美子…。
2人のうちどっちかが殺人犯である事は間違いないんです。
でもそのどっちかが…。
決め手がないんです。
はっきりした確証が。
どっちかなんだよな。
どっちか…。
あら何見てるの?ん?あっこの人女優の黒木明日香じゃない?こっちは歌手のアンナ。
あら〜真ん中の人ほら…ヘアメークアーティストの長井真美子さん。
えっ!この人のパーティーなの?へえ〜すごいわね。
さすが一流。
ねえちょっと見せてちょっと見せて。
へえ〜…。
うわあ高そうなドレスねぇ。
主役はやっぱり正装で…。
これ長い手袋なのね。
ふ〜ん…。
あらさすが一流って言うべきなのかしら。
パーティーが始まった頃と終わる頃お化粧が変わってる。
え…?ん?ほら口紅が変わってるのよ。
ほらパーティーが始まった頃はナチュラル系のピンクの口紅。
でも終わる頃は濃い赤。
パーティーの時って女の人ってみんなこんなふうにするのか?ううん普通はそんな事しないと思うわ。
口紅は洋服の色と合わせるから。
洋服を変えたんなら別だけどこの人変えてないものね。
雲隠れ…。
7時半頃から約20分…。
7時半頃から…。
約20分…。
空白の20分…。

(海野)この口紅でしたらもう調べましたけど。
これにはガイ者本人の指紋しか。
調べてほしいのは中身の方なんだ。
中身の方?
事件当初から生じていた疑問はいまだに私の中でくすぶっていました
あの殺人は間違いなく脅す者と脅される者の憎しみの中で起きたはずです
なのになぜ被害者はそれほど抵抗しようとはせずあんな安らかな顔で殺されていったのか…
殺されていく事が苦しくないはずはなく楽しいはずもありません
なのに被害者はなぜ…
まさか…。
まさかそんな事…。
(携帯電話)牛尾です。
鑑識結果が出た。
モーさんの読みが当たったわけだ。
私が?高坂さんやそのなんとかっていう男の人を殺したっておっしゃるんですか?我々はそう考えています。
冗談じゃないわ。
だったら証拠を見せてください。
私がその人たちを殺したっていう100パーセントの証拠。
これです。
これは事件当日のあなたのパーティーを写した写真です。
こっちは7時23分に撮られた写真ですがあなたはナチュラルピンクの口紅をつけてらっしゃいます。
それが一体なんの証拠に?ですがこっち8時4分に撮られた写真ではあなたの口紅は濃い赤色に変わっています。
おわかりですよね?あなたは雲隠れした前と後では口紅が…。
ですからそれが一体なんの証拠になるんです?私はあの時洗面所にいたんですよ。
口紅の色が変わってたっておかしくないと思いますけど。
これは事件当日殺人現場に置いてあった高坂昌子さんの口紅です。
この口紅にほんのわずかですが高坂さんのものではない皮膚片が付着しておりその皮膚片からDNAが検出されました。
我々はこのDNAはあなたのDNAであると確信しています。
DNAの提出に協力して頂けませんか?あなたにとって全ては16年前の12月18日雨の夜から始まった。
違いますか?
(雨音)あの日店の先輩とトラブルがあってイライラしてたんです。
(真美子の声)素人目でももう助からないって事は…。
それと同時に私の未来もここで終わるんだってそう思ったんです。
(真美子の声)嫌だった。
そんな事は絶対に嫌だった。
あの時女の子が一緒にいたなんて事はまったく…。
新聞で知ってああもうダメだって…。
警察がいつ来るんだろうって毎日毎日が怖くて…怖くて…。
(真美子)でも警察は来ませんでした。
1年が経って5年が経って15年が経って去年の11月…。
(昌子)やっぱり覚えてたみたいね。
そうあなたが16年前に車でひき殺した粕谷勇。
でその時一緒にいた女の子が私。
えっ?つくづく思った。
人ひとり殺して捕まらないと平気で2人目も殺すんだなって。
2人目って私は…。
主人ね遺書残してたのよ。
色んな事が書いてあった。
あなたと山原専務の事も。
あなたたちがどんな事をしてどんなふうに主人を追い詰めていったのかも。
主人ねあなたのところに何度も何度も横領したお金を運んだって書いてた。
ご苦労さま。
ねえわかってるわよね?高坂さんあなたも共犯なのよ。
(高坂)専務私はもうこれ以上こういう事は…。
(山原)わかってないな君は。
真美子の言うとおり君はもう共犯なんだ。
立派な共犯者だ。
捕まりたくはないだろう?君も奥さんを犯罪者の女房なんかにはしたくはないだろう?大事な大事な奥さんなんだから。
ん?
(昌子)主人書いてた。
何度も何度も告発文を書き何度も何度も警察の前まで行ったって。
でも結局何も出来なかったって。
(昌子)そんな自分が情けない。
お前にふさわしい男じゃなかった許してほしいって…。
(昌子の声)あの人と結婚して7年私幸せじゃない日なんて一日だってなかった!
(昌子の声)私たちの幸せは永遠に続くんだってそう思ってた。
(昌子の声)それが…。
(昌子)死ぬ時は一緒って約束したじゃない!
(昌子の声)あの時決めたの。
私たちの幸せを壊したやつらを…。
私は絶対に許さないって。
許さない…。
絶対に許さない…。
(真美子)お金を要求されました。
主人を殺したのだからこれからの生活はあなたたちに見てもらう事にするわって。
あなたたち…つまり山原専務も脅されてたわけですね?
(真美子)あの女は会社を食いつぶす気だってそう言ってましたから。
でも私は自分も脅されてる事を山原には言えませんでした。
轢き逃げした事を知られたくなかった。
50万100万200万…金額はどんどん膨れ上がって必死にお金を工面しました。
でもあの女はこれからは毎月500万でいいわってニコニコ笑って…。
高坂昌子という人がわかりませんでした。
ご主人の事があったにせよ人はこんなにも変わってしまうものなのかって…。
だからそれとなく山原の奥さんに聞いたんです。
2人が小さい時からの友達なのは知ってましたから。
どういう人って…昌子と何かあったの?ああいえそういうわけじゃないんですけどねご主人が亡くなられてから随分変わられたような気がしてそれでどうしてなんだろうと思って。
(知子)そうねぇ…。
ほんとに随分変わっちゃったわよね。
でも私に言わせると元に戻ったっていうか今の彼女が本当の彼女だと思うわよ。
えっ?昔からちょっと怖いところがあったのよ昌子って。
人の幸せをねたむっていうか自分より幸せだったり裕福だったりする人が許せないみたいなの。
そうなるとどんな手段を使ってでも必ずその人の幸せをぶち壊す。
それも徹底的に。
(知子)今まではご主人が歯止めの役割してたみたいだけどそのご主人があんな亡くなり方したでしょ?だから余計にエスカレートするんじゃないかって心配してんだけど…。
もう逃げられない…そう思った。
そんな時山原の奥さんがパーティーを開きましょうよって。
(真美子の声)嫌な事ばっかりだったからパーティーは楽しかった。
(真美子の声)なのに…。
長井様お電話が入っております。
(真美子)あすみません。
ありがとうございます。
もしもし。
マッサージ?やってくれるわよねぇ?でも私すぐに戻らなきゃならないわ。
お客様だってお待たせしてるし…。
じゃあ一緒に戻って私も皆さんにご挨拶しましょうか?ねえ皆さんこの人は16年前に…って。
やってくれるわよね?あっでもその前にちゃんと手を洗ってきてくれる?あなたの手は2人も人を殺した人殺しの手だもの。
人殺しの手で体を触られるのはちょっと…。
何突っ立ってんのよ。
早くしてよ!
(真美子の声)屈辱でした。
私は長井真美子です。
有名な女優やタレントにだって先生と呼ばれて一目置かれる存在です。
それが…。
(真美子の声)こんな事が一生続くんだと思った。
あの女が生きている限り一生…。
高坂さんはほとんど抵抗しなかった。
そうですね?
(真美子の声)あとは刑事さんがおっしゃったとおりです。
パーティーに戻らなきゃならないので鏡を見たんです。
(真美子の声)メーク道具はパーティー会場に置いたままでした。
でもメーキャップのプロの私がこんな顔で戻るわけにはいかないって…。

(真美子の声)これでもう大丈夫長井真美子のままでいられる。
そう思ってました。
なのに…。
(電話)もしもし長井でございます。
もしもし?もしもーし?
(笹村)「あんた粕谷勇って男を知ってるよな?」
(笹村)「16年前あんたがひき殺した男だ」
(笹村)「また改めて連絡させてもらうよ」「あんたとは長い付き合いをさせてもらおうと思ってるからこれからの事は静かな場所で2人だけでじっくり話し合いますかね」「じゃあ」
(不通音)そんな時温泉へ行こうと思ったのはなぜですか?奥さんが静かでいいところよ人も少ないしって…。
笹村をおびき寄せて殺すんちゃもってこいの場所そう思ったんやろうが。
東京はどこ行っても人目があるけぇ山の中のそこならって…。
どうしたらいいの?私は。
(笹村)俺はあんたに金も体も心も貢いでくれた大事な大事な恋人を奪われたんだ。
だからあんたに彼女の代わりになってもらう。
金も体も心も…。
仕方ないわね。
素直にそう言ってくれるとここまで来たかいがあったよ。
あなたどこでやってるの?えっ?
(真美子)頭よ髪。
ああうちの近くの店だけど。
カットが少し変だわ。
これからは私がやってあげる。
男前にしてくれよ。
世界中の女が振り向くような。
(刺す音)
(笹村)ううっ!!くっ…うっ…。
うっ!うわーっ!!
(真美子)あの時…16年前のあの時どうして警察を呼ばなかったんだろうって今頃になって私…。
今さらこんな事言っても仕方ないけどあの粕谷って男の人は本当にいきなり目の前に飛び出してきたんです。
誰にだって避けられなかったと思う…。
あの時逃げたりせずにちゃんとその事を警察に話していたら…そしたらこんな事に…。
なんだったんだろう私の16年…。
夢だったの?悪い夢?
同じその日に校倉商事に捜査の手が入り山原良信に逮捕状が出されました
年を越さずに一件落着でやれやれですね。
そうだなぁ。
モーさんが今回の殺しは校倉商事の背任横領と絡んでるんじゃないかって言い出した時はどんな大きな事件になるかと思っていたけど終わってみれば脅す者と脅される者のよくある…。
事件はまだ終わっていません。
真犯人は別にいます。
別にいるってモーさんそれ一体…?あっ刑事さん。
ご自宅の方へ伺ったらこちらだと聞いたものですから。
これをお返ししなければと思いまして。
おかげで事件は解決しました。
奥さんが犯人を教えてくださいました。
私が教えたわけじゃないけど。
でも今でもまだ信じられない。
真美子さんだったなんて…。
確かに2人を殺したのは長井真美子です。
ですが本当の犯人…真犯人は別にいる。
私はそう思っています。
別にいるってどういう事ですか?それ。
長井真美子は真犯人にそうするよう操られた。
つまり長井真美子の背後に今回の犯罪を計画し練り上げ実行させた本当の犯人がいるという事です。
犯人にとって今回の犯罪は完全犯罪です。
証拠は何一つありませんから私は捕らえる事は出来ません。
たとえその犯人が目の前にいるとしても。
刑事さんのおっしゃりようを聞いてるとそれは私?私が真犯人だっておっしゃってるみたいだけど。
今回の事件は16年前の9月1日八尾の町の風の盆の日に始まりました。
その日3人の若い男女が風の盆を見に東京からやってきました。
1人はこの町出身の二十歳の予備校生。
あとの2人は17歳の高校生の女の子たちで少女の1人は妊娠していました。
家庭的にあまり恵まれなかった少女です。
そんな事は誰にも相談出来ずに1人で悩んでいるうちにその日を迎えてしまったんだと思います。
(昌子)ねえどうしよう知子…。
この子息してない!息してないよ!この子病院連れてって。
今ならまだ間に合うから…。
お願い連れてって!
(粕谷勇)なんなんだよお前!ガキは始末したって言ったじゃねえかよ!だから祭り連れてきてやったんだろ。
それを…。
俺は知らねえからな。
関係ねえからな!ちょっと待ってよ!待ってよ勇!勇!昌子…抱かせて…。
ごめんね…。
息して…生き返って…。
この子と一緒に死んじゃいたい…。
知子…。
ごめんね…。
ごめんね…。
粕谷さんの轢き逃げ事件が起きたのはそれから3か月後です。
事件が起きた時一緒にいて事故を目撃したのは少女の1人高坂昌子さんだけだった。
でも私はあの時もう1人の少女あなたもあの現場にいた。
そう思ってます。
違うわね。
私はそんなところには…。
そしてあれは事故なんかじゃなく殺人だった。
あなたが犯した殺人だったと思っています。
(粕谷)雑魚寝だ雑魚寝。
今夜は3人で雑魚寝するぞ!みんなで楽しい時を過ごしましょう!
(粕谷)うわっ!ちょっ…ちょっと何?何どうしたの?2人でいたはずなのに目撃者はなぜ昌子さん1人だけになってしまったのか…。
昌子さんがあなたをかばったんじゃないか…。
私はそう思っています。
あなたのそばにいてあなたの悲しみや憎しみを見ていた昌子さんはあなたの気持ちがよくわかっていた。
だからあなたの犯罪の積極的な共犯者になった。
いずれにしても一つの殺人が隠蔽され封印されたわけです。
粕谷さんの死であなたたちは元の生活へ戻っていった。
高校へ行き大学へ行き就職をしてあなたは山原さんと昌子さんは高坂さんと結婚し何年かは何事もなく過ぎていきました。
長井真美子との再会はあったもののあなたたちは何も言わずに彼女を受け入れた。
長井真美子はある意味あなたにとっては恩人でもあったわけですから。
でもその長井真美子はあなたに怒りと憎しみをもたらす事になった。
ご主人との不倫。
あなたは2人の関係を知ってたはずです。
知ってて知らないふりをしていたんです。
無視する事が2人に対する最大の侮蔑でありあなた自身にとってはプライドだったから。
そんな時に起きたんです。
高坂さんの自殺が。
高坂さんはあなたに助けを求めたんじゃありませんか?山原さんにあんな事はもうやめるように言ってくれって。
(高坂)今だったらまだ間に合います。
引き返せます。
ですからどうか奥様から専務に…。
(知子)無駄よ。
私の言う事なんて聞くわけないじゃないあの人。
でもやってみなければ…。
それにその方が面白いわ。
(知子)名門山原一族が背任横領の罪にまみれて校倉から追い出される日。
(高坂)奥様…。
跡取りも産めない役立たずの嫁としてはそっちの方が楽しいわ。
結局高坂さんは…。
昌子さんはあの時はもう高坂さんの遺書を読んでたはずです。
その遺書で昌子さんは全てを知ったんです。
山原さんが何をしたのか長井真美子が何をしたのか。
そしてあなたの事も知ったんだと思います。
あなたが高坂さんのために何もしてくれなかったという事。
必死の思いでつかんでほしいと差し出した高坂さんの手をあなたは無視した。
昌子さんはそう思ったんだと思います。
だからあの時…。
(昌子)死ぬ時は一緒って約束したじゃない!許さない…。
絶対に許さない…。
山原良信を許さない。
長井真美子を許さない。
そしてあなたも許さない。
そういう意味の言葉だったんです。
あの言葉は。
昌子さんは横領の事で山原さんを脅し轢き逃げの事で長井真美子を脅しあなたに対しては封印してた2つの死を解き放った。
すごい騒ぎになるでしょうね。
赤ちゃん産み捨てだって相当なスキャンダルなのに事は殺人だもの。
人殺し。
でもあなたは脅されてるのはご主人と自分だけじゃなくもう1人いる事を知った。
長井真美子。
恐らくその時からあなたは今回の犯罪の計画を練り出し始めたんです。
自分の手は汚さず長井真美子に脅迫者を殺させる完全犯罪の計画。
そうする事はある意味ではあなたにとっても復讐になるわけですから。
夫を奪われた復讐。
あなたは長井真美子に昌子さんの事をあれこれ吹き込んだ。
それは長井真美子の昌子さんに対する憎悪をかき立てるためであり絶望感と殺意を植え付けるためだったんです。
そしてあの日が来たわけです。
あなたが会場をあのホテルにし日時を決めたのは同じその日に昌子さんがあの部屋で笹村と会うという約束を知ってたからです。
その事は恐らく昌子さん本人から聞いたはずです。
違いますか?面白くなってきた。
続けて。
パーティーは予定どおり始まりました。
その日は長井真美子にとって特別な日です。
昌子さんがすんなりとそんな日を祝ってやるはずがない。
何かが起きるはずだ。
あなたは期待していた。
すいません。
…お願いします。
あなたは長井真美子のあとをつけていった。
それがあなたの空白の20分だったんです。
パーティー会場に戻った時あなたは長井真美子と同じ思いを抱いたはずです。
これでもう大丈夫。
自分の過去を知っている人間はもうこの世にはいない。
でも違った。
笹村が現れたんです。
冴子さんの記事の半分を持って。
最初はなんの事だかさっぱりわかんなかったし冗談だと思ってたんですよね。
だってあいつはこっち自分が握っている奥さんの弱みがこれだって言ったんだから。
本当は俺には話したくなかったんですよねあいつ。
でも俺がしつこく聞くもんだから仕方なくこれをくれて。
これが奥さんの弱みだなんてデタラメ…。
刑事に半分見せられてようやくわかったんです。
奥さんの秘密あいつの脅しのネタが。
本当は裏のこっちだった。
それで奥さんと相談なんですが…。
あなた誤解してるみたいね。
昌子殺したのは私じゃないわ。
奥さん…。
昌子殺したのは長井真美子よ。
私の亭主を寝取った女。
あんな女苦しめてやればいいのよ。
粕谷勇って男を知ってるかって聞いてごらんなさい。
そうしたらわかるから。
粕谷勇?16年前長井真美子がひき殺した男。
ひき殺した?
(呼び出し音)
(真美子)「もしもし長井でございます」「もしもし?もしもーし?」あんた粕谷勇って男を知ってるよな?16年前あんたがひき殺した男だ。
どこか静かな場所で2人だけでじっくり話し合いますかね。
そう言った笹村の言葉を聞いてたからあなたは翌日長井真美子をここへ誘ったんです。
靜かないい場所よ人は少ないしって。
あなたの狙いどおり長井真美子はその言葉に反応したんです。
そこだったら笹村を殺せるかもしれない。
そう思って。
そして実行したんです。
(笹村)ううっ!!はぁ…はぁ…。
あなたに操られてるなんて事にはまったく気づかないまま。
長井真美子の背後にいつもあなたの陰を感じていました。
パーティーの時も昌子さんが殺された時も笹村が殺された時も闇に紛れてあなたが密かに動いている気配を…。
その気配で私はあなたが犯人だと錯覚したんです。
だからあなたは私に…。
犯人は私じゃない。
この女なのよって刑事さんに気づかせるためにあのアルバムを貸したってそういう事?そうです。
ねえ刑事さん刑事さんさっきおっしゃいましたよね。
証拠がないから犯人捕まえる事が出来ないって。
そのとおりです。
捕らえる事は出来ません。
という事は刑事さんがおっしゃった事が全て本当だったとしても私が捕まる事はない。
そういう事よね。
おっしゃるとおりです。
さっきも言ったようにこれはある意味完全犯罪ですから。
じゃあ私は完全犯罪成し遂げたってわけだ。
いえ完全犯罪成し遂げたのはあなたじゃありません。
あなたは単なる使者だったんです。
完全犯罪の使者にすぎなかったんです。
完全犯罪の使者?どういう事かしら?それ。
完全犯罪を成し遂げた人物は別にいるという事です。
別にいる?あなたが長井真美子さんを操っていたようにあなたもまたその人物に操られていたんです。
ハハ…私が操られてた…。
おかしな事言わないでよ。
一体誰が私を操ってたっていうの?私は誰にも操られてなんかない。
高坂さんです。
高坂昌子さんです。
フフッ…。
よりにもよって昌子とは…。
どうかしてるわねあなた。
昌子がそんな事出来るわけないじゃない。
事件当初からずっと気になっていました。
殺されていくっていうのになぜ昌子さんは抵抗しようともせずあんな顔で死んでいったんだろうって…。
あんな顔?昌子さんは幸せそうに見えたんです。
いやたぶん本当に幸せだったんだと思います。
あの時なぜなら殺されてご主人と一緒に眠る事こそが昌子さんの最終目的だったから。
ご主人を死に追い詰めたあなたたち3人を今度は逆に追い詰めていきその3人の誰かに殺されて自分の人生を終わらせようと決めたんです。
それからの昌子さんはまるで人が変わったようにあなたたち3人を脅し徹底的に追い詰めていった。
3人が3人とも強い殺意を抱くほど。
でも昌子さんはわかっていた。
山原良信という男は絶対に自分の手は汚さない男だという事。
そして幼い時から仲のいい友達だったあなたの事もよくわかっていた。
ご主人を奪われ知らんふりはしていてもあなたの中で長井真美子に対する怒りは膨れ上がってる事を。
あなたを脅して追い詰めれば怒りは自分の方にも向けられるが長井真美子の方にも向けられるはずだ。
あなたが長井真美子を利用するだろう事は昌子さんにとっては計算済みだったんじゃないでしょうか。
そしてまさにそのとおりになったんです。
だから昌子さんはあんなに幸せそうな表情で殺されていったんじゃないでしょうか。
完全犯罪をもくろみ計画し練り上げ実行したのは高坂昌子さんだった。
私はそう思っています。
奥さん…高坂昌子さんがあなたの事を憎んだ事は確かだと思います。
でもそれ以上に悲しかったんじゃないでしょうか。
昌子さんにとってあなたは心を許せるたった一人の親友だった。
いつだってあなたに手を差し伸べてきたはずです。
赤ちゃんを取り上げた時もそれからあなたの殺人の共犯者になった時も。
でもあなたの方は…。
あなたにとって自分は親友でなかったのか…。
昌子さんはその事がとても悲しかったんじゃないでしょうか。
なんだかそんな気がします。
それでは…。

(牛尾の声)昌子さんにとってあなたは心を許せるたった一人の親友だった。
いつだってあなたに手を差し伸べてきたはずです。
赤ちゃんを取り上げた時もそれからあなたの殺人の共犯者になった時も。
いい知子私の言う事よく聞いて。
あんたはここにいなかった。
いなかった事にするからね。
あんたの気持ちよくわかる私。
あんたがあの子をどんな気持ちで産んでどんな気持ちで別れたか。
それからはどんな気持ちであいつの事…。
あんたは悪くない。
あんたは何もしてない。
勇は轢き逃げされて死んだの。
いいわね?昌子…。
その代わりこんな生活もうやめよう。
ちゃんと高校へ行って大学へ行ってきちんと働いて結婚してそれから…それから子供をたくさん産んで…。
あの子の分まで幸せに幸せにしてやるの。
私たち友達だからね。
どんな事があっても一生友達だからね。
早く行って。
誰か来ちゃう。
早く!早く行って!
(知子)昌子…。
昌子どうして…。
どうして私たちこんな事に…。
友達だったのに…。
一生友達だったのに…。
心中?なんだかそんな気がするんです。
今回の事件は高坂昌子さんの復讐でもあったけどご主人への後追い心中でもあったんじゃないかって。
そうですね…そうかもしれませんね。
でも一つだけわからない事があるんです。
それほどご主人を愛してたんならなぜ笹村と関係を持ったのかという事です。
笹村と関係など持たなくても今回の事は1人でも出来たはずです。
なのになぜ…。
私はわかるような気がする。
え?悪女にならなきゃならない。
それも徹底的な悪女に。
そう思ったんじゃないのかしら昌子さん。
悪女にならなきゃ人を脅したり殺意を抱かせるまでに追い詰める事なんか出来ない。
だから笹村と関係を持ったんじゃないのかしら。
必死の思いで悪女を演じていた。
なんだかそんな気がするんです私は。
山原知子もまたそうなのかもしれない
そんな事を考えていました
彼女もまた必死の思いで悪女を演じてたんじゃないのかと
(携帯電話)はい牛尾です。
わかりました。
冴子さん今からもう一度山原知子と会ってきます。
本当の事を何もかも全て話したいから来てほしいって。
彼女が話してくれれば長井真美子の罪も少しは軽くなると思います。
それじゃあ。
悪女か…。

高坂昌子長井真美子2人はそれぞれの形で16年に終止符を打ちました
山原知子もようやく風の盆の日から始まった自分の16年を終わらせようとしている
そんな事を感じていました
そして今彼女は握りしめていた赤いリボンをたぐり寄せたぐり寄せて自分の娘に再び会おうとしているんだと。
2017/02/05(日) 13:55〜16:25
ABCテレビ1
終着駅の牛尾刑事VS事件記者冴子[再][字]

森村誠一の完全犯罪の使者!!富山八尾〜風の盆に始まる殺意の連鎖!!赤いルージュの伝言

詳細情報
◇番組内容
“牛尾VS冴子”企画の第10弾!商社マンの転落死からはじまった、連続殺人!複雑な事件にからむのは、3人の美しい女たち…。牛尾と冴子が、彼女たちの秘密を追う!
◇出演者
片岡鶴太郎、水野真紀、岡江久美子、船越英一郎、辰巳琢郎、秋野太作、原沙知絵、遊井亮子、いしのようこ、国広富之、佐藤二朗